French Tech事情〜Covid-19への対応〜
フランスに住んで1ヶ月強が経過した。まだ1ヶ月強しか経っていないのだが、COVID-19の対策に向けたデジタル施策を簡単にメモしておこうと思う。
正直、フランスという国は「遅れているのか進んでいるのか分からない」といった某サッカー選手の発言が先日お茶の間の物議を醸していたが、その言葉をそっくりそのまま返したくもなるような国で、様々なサービスが手続きが面倒で不便だなと思う一方、デジタル化については「あ、ここはこんなに進んでるんだ、、!」と思う部分も少なくない。特に、COVID-19のワクチン接種において、Doctolibでワクチン接種を簡単に予約管理ができるのは大変便利だと感じた。
ワクチン接種予約と接種管理ができるDoctolib
Doctolibは、2013年にパリで創立されたスタートアップで、オンラインでの医師検索と予約ができるアプリとしてパンデミック以前は使用されていた。そのサービスが、今ではフランス全土で老若男女問わずワクチン接種のために使用されていた。電話でも接種予約ができるが、オンライン上での予約管理は、Doctolibの予約画面に遷移する。
フランス政府自身が出しているワクチン予約画面(https://www.sante.fr/)があるが、オンライン予約を選択するとDoctolibの予約画面が埋め込まれた画面に遷移するようになっている。
sante.frの予約画面
Doctolibでの予約方法
まずは予約画面を開く
希望のワクチンの種類(ファイザーorモデルナorアストラゼネカ)を選択
希望するワクチンの接種会場を選択
何回目の接種かを選択
希望の日時を選択
これで予約完了。あとは、予約画面を接種会場で見せれば会場に入場できる。ワクチン接種後は、接種が完了した旨の記載が書かれている用紙のQRコードを出口でTousAntiCovidに読み取らせると、接種記録も完了となる。
(TousAntiCovidは、フランス政府が主導しているアプリ)
2回目接種後は、TousAntiCovid上でアプリ紙吹雪が飛ぶというサプライズ(?)仕様。
見え隠れするマクロンの施策
この創立10年にも満たない会社に、国家の大事なワクチン接種のプロジェクトを任せるのはなかなか思い切った決断であり、フランスのマクロン大統領は、スタートアップ支援を肝煎りの施策として宣言している。
マクロン大統領は、2017年にStation FというBusiness incubator組織を設立し、スタートアップへの投資を惜しみなく実行してきた。マクロンは、フランス発のユニコーンを2025年までに25社生み出すという目標を掲げている。
政府は2019年に有望スタートアップ40社を採択しており、Doctolibもその1社に選出されている。有望なスタートアップの成長を加速するため(そして政府の目標実現を近づけるため)、政府も全力で後押ししたのではないだろうか。
某国では、オリパラで使用する顔認証アプリ某巨大ITベンダーを締め上げてスタートアップの採択を、という恫喝発言が話題になっていたが、フランス政府がどのようにDoctolibを採択したのかは分からない。
マクロン声明後の予約の殺到にも耐えたDoctolib
7月13日、マクロン大統領は、医療従事者へのワクチン接種義務化とカフェやレストランなどの公共施設入場の際に陰性証明、あるいは接種完了証明の提示を必要とすると宣言をした。その宣言後、フランス国民はワクチン接種予約を急ぎ、一晩で90万件もの予約が殺到したが、Doctolibのサーバーはダウンすることなく持ち堪えた。
サービスとしての安定性も今のところ特段文句のつけるところはなさそうだ。