雪上がりの朝の澄んだ空気を、
雪上がりの朝。冬の冷たさを抱えた澄んだ朝の空気を思いっきり吸い込む。肺胞の隅々にまで爽やかな空気が巡ってくる。僕にとっての冬の醍醐味はこの“深呼吸”だ。深呼吸から冬の一日がはじまる。
しかし何やら春の気配がする。ここ数日は雪が降らず、外気はそれほど寒くない。最近では愛犬と朝の散歩をするたび、数十羽ほどの白鳥の群れが、大きな声で鳴きあいながら飛んでいく姿をよく目にする。
なんでも彼らは一日に4,000~5,000kmほど飛べるそうだ。日本の最北端の択捉島(えとろふとう)から最南端の沖ノ鳥島(おきのとりしま)までの直線距離は約3,000km。白鳥ってとてつもない距離を飛んでいるんだなあ。
平地の雪はすっかりと溶けきり、黒々としたアスファルトが露出している。今年はもう、“雪上がりの朝の澄んだ空気”は味わえそうもないな…。いくばくかの寂しさが心中に去来する。
地球温暖化が甚だしく進行した未来では、“冬の澄んだ空気”は絶滅しちゃってるのかもしれないな。そんな未来はちょっぴり悲しい。