キラキラ共和国 小川糸
昨日、文体診断というものを見つけて、試しにやってみました。
自分が書いた文章を入力すると、読みやすさや、個性、文章の硬さなど。
項目ごとの評価採点と、似ている文体の作家などを教えてくれるサイトです。
どうやって診断しているのか。
信憑性は怪しいけど。
なんだか面白そうじゃないか〜。
ということで、早速。
最近書いた記事で、そこそこスキがついているのを選んで入力してみました。
一瞬で採点完了。
結果は以下の通り。
ほぼほぼA!ちょっと安心。
唯一のE。「文章の硬さ」
柔らかすぎるらしい。
Eってよっぽどじゃないか…。やわやわ。
文章が硬いことが悩みな時期もあったけど。
やわやわなら気にしなくてもいいのかな、これは。
あと、気になっていた
似ている文豪、似てない文豪。
2位に乱歩先生がランクインしているのが、地味に…いや、結構嬉しい〜!
でも、一位に輝いた川端康成さん以外、あいにく存じ上げないです。
寡聞にして、全くピンとこない。
そして実は、川端康成も読んだことがありません。
伊豆に2年以上住んでいたのに、伊豆踊り子すら読んだことがない。
なので、似ていると言われても実感ないのですが。
本当に似ているのか〜???
川端康成といえば。
作品は読んだことはないのですが、川端康成さんが出てくる本を思い出します。
小川糸さんのキラキラ共和国という本です。
以前、他の記事でも軽く触れたことのあるツバキ文具店という小説の続編になります。
今日はこちらを紹介してみましょう〜。
◆ツバキ文具店とキラキラ共和国 あらすじ
この2冊は去年のちょうど今頃読みました。大好きな作品です。
舞台は鎌倉にあるツバキ文具店というお店。
主人公は鳩子という女の人。
育ての親でもある祖母が亡き後、店を引き継いで1人で営んでいます。
このツバキ文具店の変わったところは、文具の販売だけでなく、お手紙の代書の仕事もしていること。
いろんな人が抱えている、
直接言いたくても、照れ臭くて、気まずくて、何かの事情で、
なかなか言葉にして言えないこと。
あの時、欲しかったけど、もらえなかったことば。
そういう気持ちを成り代わって筆にこめ、手紙にして相手に届ける。
そんな古風なお仕事の風景が描かれたお話です。
絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙などなど。
なかなか難しい内容の手紙の依頼が舞い込んできて、凄くおもしろいです。
鳩子さんは季節のお茶菓子をお供に、依頼者からお話を聞いて、その人の気持ちや、取り巻く人間関係を丁寧に紐解き、当事者になりきって手紙を書きます。
個性豊かな変わった人ばかりやってくるので、どう対応するのかワクワクします。
◆この本の好きなところ
まず、手紙作りのこだわりがすごい。
すごいところその1
書く字体が成り切る人によって変わります。
もともとお習字を厳しく仕込まれた過去があるのですが、人によって達筆にしたり、丸文字にしたり。
1人の人物なのに、たくさんの字体を持っています。
字は人を表すというけれど。
ただ文字を真似するのではなく、その人の立場や気持ちになって、心情にあった文字を使うところが面白いです。
すごいところその2
使う文具や便箋にもとことんこだわります。
筆だったり、万年筆だったり。それも細かくメーカーやその歴史も加味して選定。便箋の紙質、切手まで選び抜く。
もはや、デザインという言葉が浮かんできそうな所業です。
こうして、その人の心情や要望にあったオーダーメイドのお手紙が出来上がります。
ネット社会、メールやラインでスピーディかつ、無機質にメッセージのやりとりを済ませる世の中にいると、手紙の温かみにどこかほっこりした気分になります。
あと、想像して相手の言葉を創作するという点では、ちょっと作家ぽくもあるな、と感じて好きなところです。
ところで。
小説なのに、どうして達筆とか丸文字に変わる、とわかるのか。
疑問じゃないですか。
主人公が「このお手紙は達筆にしよ!」とか言葉で言ってたらそれまでなんですけど。
読んでる側は、面白くないというか、見た目の表現が変わっていることがいまいちわからなくて、感動も薄れてしまうような気がします。
文章で全てを表現しなければならない小説において、視覚の変化を表現するのはなかなか難しいことです。
とくに文字みたいな緻密なものの全体の雰囲気を伝えるのって限界があるような気がしてしまいます。このお話の場合、依頼数もたくさんなのでかなりバリエーションも求められます。
どうするのか。
ここがこの本の、他とは違うおもしろいところなのですが、実はこの本、
文章中に実際の手書きのお手紙が載せてあるんです。
鳩子さんが書いたお手紙は全部、いろんな便箋の体裁で区切られて、手書きの状態でお話の中に組み込まれています。
文庫本で、パソコンタイプの活字以外の文字が載っている珍しい本なのです。
これがもし、普通にパソコンの文字で掲載されていたら、この話のおもしろみは半減すると思うんですよね…。
小説の題材として難しい、となればあきらめるところを、今までにない工夫を凝らして可能にしているところが、すごく新しくて素敵だなぁと感心してしまいました。
着想が先なのか、書いている中でこうなったのか、とても気になる。
あと、もう一つ変わったところは、ページの端っこにパラパラ漫画が仕込まれていること。
かわいくて持ってるとなんとなく幸せな気分になります。
なごみポイントの一つなので、気になる人は書店で覗いてみてください。
こんなふうに本としても、ちょっと工夫がこらされているところがとても気に入っています。
◆川端康成の登場回
川端康成が出てくるのは、キラキラ共和国の終盤のページです。
一回しか読んでないのに、インパクトが強くてこの章だけしっかり覚えている。
本人は登場しないんですけど、ある上品な年配の女性客がお手紙の依頼にやってきて、川端康成からのラブレターが欲しいとお願いするんです。
このお話の時代設定は現代なので、川端康成本人は自殺後の話になります。
わたくし、いまだに男性というものを存じ上げませんの。
やすなりさんがね、私の恋人ですから。
結局、やすなりさんより好きになれる男性には巡り会えませんでしたの。
と話す女性に鳩子さんもびっくり。
やすなりさんって、えええ、あの川端康成ですか。
文豪に勝手に恋しちゃって、そのまま抜け出せなくなって。
本当に今もでも愛してるけど、ひとりはやっぱり寂しくて。
走り抜いてしまった人生の最後に、これでよかったんだ…って思える夢が見たい。
だから、ラブレターが欲しい。
はじめ頭がおかしい人かも、と思っていた鳩子さんも話すうちにすっかり共感してしまい、仕事を引き受け、川端康成になりきってお手紙を書きます。
全体からみると、ごく小さな一章で、第一印象はぶっ飛んでるなぁ…と思ったけれど。
正直、自分自身ポップの王様にうつつを抜かした数年を考えれば。
うーん、あながち人事じゃないのかも笑
康成さんにのめり込んじゃった気持ちわかるかも…とか思ったり。
でも、今の時代。
わかる人は多いんじゃないでしょうか。
最近話題になった芥川賞受賞の、「推し、燃ゆ」も、まだ読んでないけれど、聞く限りではこの視点を掘り下げて、強く抉った作品なんじゃないかと思っています。
今の時代だからこその現象なのか、ネットがなくて本がまだまだ元気だった頃でも、こういう気持ちは変わらないのか…
小川糸さんは何を思ってこの章を書いたんだろう〜。考えるほどに興味深い章です。
鳩子さんが書いた川端康成のお手紙が気になる人は、書店へれっつご〜。
お読みいただき、ありがとうございました。
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