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フランソワ・デュボワ『作曲の科学』【基礎教養部】

本記事は基礎教養部の活動の一環として書かれたものです。私の書評記事及びチームメンバーのあんまんさんとimadonさんの記事もお読みいただけると大変嬉しいです。
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あなたには好きな曲があるだろうか。クラシック、ロック、ジャズ、Jpopなど音楽には沢山のジャンルがあり、人類の持つコンテンツの中ではかなりメジャーなものと言える。また、各々が好きな音楽は「どう生きてきたか」といった背景に左右されるだろう。ここで、音楽を聴くという部分に注目をしてみよう。音楽を聴く際に「この曲のこの部分が好き」と感じている人口はそれなりに存在していると思われるが、「何故その音楽が魅力的に聞こえるか」といった部分を言語化できる人は少ないのではないか。これは音楽を聴く人口に比べて、作曲するまたは作曲に関する知識を持つ人の人口が著しく少ないということに起因している。作曲を行うためには音楽のさまざまなルール・規則や定石を知っておく必要があるので、音楽を「聴く」よりも「作る」方がはるかにハードルが高いというわけだ。本書では、楽譜及び作曲を横軸の「足し算」と縦軸の「掛け算」であるとして作曲に必要な要素を説明している。これらの要素がバッチリとハマった時に心地よい音楽が作られる。その意味で作曲に科学の要素は間違いなく存在している。

今回は作曲に類する自分自身の活動として「アカペラのアレンジ」について語ってみる。
まず、アカペラについて前程のことを話しておくとアカペラは基本的にリードボーカルとコーラス、ベース、パーカッションの役割を楽器を使わずに演奏するものである。その演奏では、既存の曲(邦楽Jpopをはじめとして洋楽、ジャズなど)を演奏するバンドが大半を占めている。その過程でアカペラバージョンへとアレンジをする必要が出てくる。そこで、「アカペラアレンジ」という活動を行うという感じである。
私がアカペラのアレンジを考える時は、当然といえば当然だが原曲をまず聴き込むところから始める。原曲の雰囲気を理解したと感じたら、全体の構成をざっくりと考えていく。よくある構成としては、初めはリードボーカルとベース、パーカッションの3人で演奏し、徐々にコーラス隊を使って音の厚みを出してサビへと突入していくといった構成になる。全体の尺や1番盛り上げたい部分、またその構成をその時点でざっくりと決めることによって曲の骨格が出来上がってくる。
ここまでの作業が終わったら、いよいよ実際に楽譜に音を起こし始める。リードボーカルの旋律は多くの場合原曲の耳コピをして楽譜に起こす(リード譜打ちは非常に作業感が強いので、好む人が少ない)。その次はベースを打ち込む作業に取り掛かる。ベースはパーカッションと並んでリズムを作る役割があり、最初に決まっていると曲の姿が見えやすくなる。これは簡単にいえば、曲の「骨」の部分から決めていっている感覚に近い。こうして本書で言う横軸の要素が少しづつ完成していくのだ。
こうして曲の骨格が出来上がってきたら、コーラスのハーモニーやリズムを考えていく。基本的には原曲のコード進行を守ってアレンジを進めていくので、コーラス隊にそれぞれの音を割り振って響きを作っていく。この際、高いコーラスや低いコーラスにどの音を割り当てるかによって全体の響き方が異なってくるため、アレンジの際にはそれぞれの音域を考慮した上で1番良い響きになるように配置を考える。この際に、音楽の知識(主に和声学)を知っているとベストな響き方が分かるので非常に有利になってくる。アレンジャーがクラシカルな音楽理論を学んでいる必要は必ずしもない(例えば、合唱のバスとアカペラのベースは若干役割が異なる)が、知っていると心地よい音楽を科学することが可能になるので有利なのだ。これが縦軸の「ハーモニー」の要素である。
もう一つ、アカペラ特有の作業としてコーラス隊のスキャット決めがある。例えば、uhとahと歌うのでは印象は全く異なる。uhは優しい印象なので曲の前半、ahは力強い印象なのでサビ前に使われることが多い。曲全体として違和感のないようにスキャットを配置してアカペラのアレンジはおおかた終わりになる。

ここまでアカペラのアレンジについて話してきたが、作曲とアカペラのどちらにも大きな魅力がある。是非、読者の皆様には作曲・アカペラどちらにも触れ、何かしらを感じて頂けると大変嬉しい。

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