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『AVA/エヴァ』愛に飢えた美しき暗殺者・ネタバレ感想―シネマクラッシュ/2024年6月17日
渡邉美穂さんがシネマナビゲーターに就任して4回目の『シネマクラッシュ』です。
前半では美穂さんのオープニングアクトについて、後半では映画『AVA/エヴァ』について語りたいと思います。
映画ラストまでネタバレがあるので未見の方はご注意ください。
オープニングアクト
今回も美穂に怒られる
今回も冒頭から美穂ちゃんに遅いと怒られてしまいました。
今回はストレートに『AVA』を一緒に観ようと誘われます。
怒り口調で横に座ってって言われるのはツンデレっぽくて嬉しいです。
今回の映画は錚々たるメンバーのようで美穂ちゃん早送りで名前を読み上げてくれます。
「百聞は一見に如かず!一緒に観よっ!」
最後にはご機嫌も治って一安心。
毎回推しのどアップに癒されます。
というわけで今回のオープニングアクトも楽しませていただきました!
次回はどんな設定か楽しみですね!
AVA/エヴァ
あらすじ・解説
クールでエレガント、圧倒的な戦闘能力を持つ暗殺者エヴァ。しかし、心の中にトラウマをもつ彼女には弱点があった…
Story ストーリー
美しき暗殺者エヴァ(ジェシカ・チャステイン)。彼女は暗殺を請け負う組織の実行役で、その命令を下すのは管理役のデューク(ジョン・マルコヴィッチ)。彼女は優秀だが、暗殺を実行する前に対象者に「何をしたのか」と質問するのをやめられずにいた。ターゲットに話しかける行為は組織に危険を招くとして、責任者のサイモン(コリン・ファレル)は密かにエヴァを監視する。エヴァは任務のためサウジアラビアへ向かうが、彼女の正体が露見しミッションは失敗。彼女は逃げ切ることに成功するが、任務から外されてしまう。ボストンへと戻ったエヴァは、何者かに命を狙われ、組織が自分を消そうとしていることを直感する。エヴァは関係者の中に自分を陥れようとしている存在を疑い始める…。
Commentary 解説
美しい容姿と知性、そして圧倒的な戦闘能力を持つ暗殺者エヴァ。彼女は完璧に任務をこなしながらも常に「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」という自問自答をやめられない。あるミッションの失敗から任務から外された彼女は、何者かに命を狙われるようになる。それが自分が属する組織の意思だと直感した彼女。暗殺者VS暗殺者、血で血を洗う戦いの火蓋が今、切って落とされる!主演は「ゼロ・ダーク・サーティ」「女神の見えざる手」のジェシカ・チャステイン。共演にジョン・マルコヴィッチ、コモン、ジーナ・デイビス、コリン・ファレルと豪華キャストが集結!監督は「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」のテイト・テイラー。(2020年/アメリカ)
感想
狙われる理由
元アルコール依存症で軍隊経験もある凄腕暗殺者のエヴァの欠点は、暗殺対象に「何をしたのか?」と殺される理由を執拗に尋ねるという悪癖がありました。
エヴァは組織の上層部から暗殺者として不適格だと判断されます。
客観的に考えたら、指示に従わない暗殺者など不安要素がありすぎて怖くて使えません。
というわけでエヴァは味方からの暗殺に脅かされることになります。
暗殺者という立場ゆえ、父親が亡くなったことで久しぶりに会った母親・妹・元カレにも自らの職業を明かせず、組織からも狙われ、上役のデュークも疑ってしまうというのっぴきならない状態になってしまいます。
陰影のある主人公エヴァ
映画を観る前はエヴァは勧善懲悪のヒーローなのかと思っていました。
しかし彼女には精神的に不安定な面が多々あり、自分の居場所と愛情を探し続けているような迷い猫のような主人公でした。
自らのアイデンティティーの不在に悩み、だからこそ暗殺対象へ「あなたは(殺されるような)何をしたの?」という問いかけをせずにはいられなかったのだと考えられます。
実際は上役でもあり師でもあるデュークから目をかけられ、家族からも愛されていますが、自分には愛される価値があるのかと自信を無くしている状態のようです。
デュークとサイモン
エヴァの直接の上司デュークは、組織の暗殺を疑うエヴァに勘違いだと嘘を言い、エヴァをなだめるとともに、上司のサイモンにエヴァの殺害指令を解くよう直接談判します。
サイモンはデュークのもと教え子でしたが、今の立場はデュークの上になっています。
ここまでで感じたのは、サイモンの判断は冷酷ですが組織運営にとっては妥当で、デュークこそプロとしての目を曇らせているような気がします。
それはエヴァに対する父性愛そのものでしょう。
カミーユ
いつもサイモンの横に控えている娘カミーユも、父親の命令でエヴァを監視したり、ボディーガードをしたりといいように使われています。
サイモンのもう一人の娘ダニエラへの溺愛を見たデュークが「(汚れ仕事を仕込むのは)一人で十分かな?」と皮肉を言うシーンで、サイモンが「レディーがする仕事じゃないだろう、そうだよなあ」とデュークに返し、カミーユがサイモンをハッと一瞥するシーン。
(私はレディーじゃないの?)と思ったであろうカミーユ
そんな彼女に一瞬憐みの視線を向けるデューク。
彼女の心情は明確に描写されていませんが、カミーユもきっと父親の愛情に飢えているのでしょう。
デュークと疑似親子のような関係を築いているエヴァ。
父親に組織のエージェントとして使役されるカミーユ。
その二人の対比をもっと見せてほしかったですね。
デュークの死とサイモンの来襲
デュークはエヴァの殺害命令を撤回させようした結果、サイモンと戦い殺されてしまいます。
彼の死を知ったエヴァは元カレの元を尋ね一緒に逃げようと口説きますが、元カレは妹を妊娠させておりその誘いを断ります。
エヴァは妹と元カレのために、ギャンブルの元締めを脅して金を完済しました。
全てに絶望して自室で酒をあおり泣き笑うエヴァ、銃を顎に当て自殺しようとしたその時、サイモンが自らエヴァを始末しようと現れます。
組織の偉いさんが自ら手を下しに来るの?といぶかしくなりますが、これまで何人もの暗殺者を撃退してきたエヴァに対しては、兄弟子である自分しか通用しないと判断しての襲撃でしょう。
サイモンの最後
苦闘の末サイモンを追いつめ、足を撃たれて思うように動けないサイモンは組織に家族を守るよう電話連絡をしつつ外へ逃げます。
橋の下で追いついたエヴァ。
家族には手を出さないでくれと頼むサイモン。
家族には興味がないと答える彼女。
「5つ数える」と言って「1」で頭を撃ち抜くのは痺れましたね。
ラスト
その後、妹に大金の入った口座情報と現金を渡し、母親と元カレともに国外脱出するよう言い残し、街に消えていくエヴァ。
サイモンを倒しても組織の殺害命令はきっと止むことはなく、家族もターゲットになることはわかりきっているがゆえの措置です。
自分はどうなってもいいから母と妹と元カレ、そして産まれてくる姪を守りたいという気持ちにウソ偽りはありません。
でも最後まで妹達に自分の本当の姿を明かすことはありませんでした。
デュークの遺言
妹宅に届いていたデュークの遺言にはこうありました。
幸せな人かどうかは最後にわかるものだ
サイモンは「ギリシャのたわごと」と言うだろう
人は死ぬときになって初めて自分にとって何が大切なのかを知る
何のためなら犠牲を払えるのか?何のためなら死ねるのか?
誰を愛し誰に愛されていたのか?
人生というのは思い通りにならないものだ
でも最後なら自分で選ぶこともできる
これを読んでるなら私はもういない
幸せな最期だった
デュークはエヴァを守ろうとして戦った自分に誇りをもって死んでいきました。
彼の大きな愛を知ったエヴァは街に消えていきます。
その後を追うカミーユの姿。
さらなる戦いを予感させて映画は終わります。
最後に
「愛されていないのではない、愛に気づいていないだけだ」と思わず教えたくなる主人公エヴァにもどかしさを感じざるをえません。
きっとわずかなボタンの掛け違いが大きなズレとなって、家族や元カレと離れてしまったのでしょう。
デュークを失ってしまいましたが、母と妹と元カレを守るため、これからもエヴァは戦っていきます。
エヴァもデュークと同じように大切な人を守るために死んでいくのか?
何とも切ない終わり方でした。
次回
次回は鉱山に閉じ込められた作業員26人を救うための命がけの救出行!リーアム・ニーソン主演の『アイス・ロード』。
こういった極限状態のサバイバル映画も大好きなので楽しみです。
いつも魅力ある映画を教えてくれる『シネマクラッシュ』と渡邉美穂さんありがとうございます!
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!
(終)
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