製造業におけるDXの価値と方法を紹介、ARを活用して業務効率の向上を

今回は製造業におけるDX、特にAR(拡張現実)を活用したDXについご紹介いたします。


DXとは?

まず、DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称のことです。英語圏では「交差」を意味するTransをXで表す文化があるため、Transformationの略がXとなっています。

では、デジタルトランスフォーメーションとはどのようなことを指すのでしょうか?経済産業省によると、DXは「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する」ことのように定義されています。(『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』より)

噛み砕いて言うと、最新のデジタル技術を用いてビジネスモデルを改変していこう、という動きのことを大きくDXと呼称しています。ここでいうデジタル技術とはAIはもちろんのこと、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)も含まれます。

ここでARを知らない方がいるかもしれません。AR(拡張現実)とは、存在する現実世界と実在しないバーチャルな情報を重ねて体験する技術のことをいいます。ポケモン GOが最も代表的なARでしょう。確かにARは、AIやVRに比べて今現在の知名度は低いかもしれません。ですが、現実世界を唯一補助できる技術として、今後確実に産業利用が進む技術がARなのです。

では、DXで具体的に何ができるのでしょうか。
詳しくは後の章で解説するのですが、例えば生産性の向上。またそれにより人手不足に対応することができたり、近年厳格化されている残業規制へも適応できます。

また、属人化を脱して人材を標準化することも可能です。DXは新人研修の効率化・短縮に貢献したり、定年を迎えそうなベテラン人材の技能の保全・継承に寄与したりすることができます。人に頼らない、再現性の高いパフォーマンスが実現可能になるのです。

他にも出張の削減や所謂「見える化」も可能になります。出張が削減されることで有資格者やベテランをはじめとした技術者の負担が大きく軽減される他、3Dイメージを現実に重ね合わせて表示することによって異変・故障の察知が簡単になります。


なぜDXをしなければならないのか

製造業従事者は20年前に比べて100万人も減少しています。そうでなくとも、少子高齢化による労働人口の減少により、将来的に人手不足が深刻化することに疑いありません。

加えて現在の熟練技術者たちの引退も深刻な問題です。団塊の世代が70代後半に差し掛かり、いよいよ彼らの引退が差し迫ってきました。彼らの技術力に頼ってきた中小企業はもちろんのこと、その中小企業に頼っている大企業さえもが彼らの引退による損失は免れません。

だからこそ、製造業者の皆様は、今このタイミングでDXを推進し、生産性の向上による人手不足の解消と、知識・技術を蓄積し新人教育を徹底することによる属人化の解消を図る必要があるのです。


製造業の課題と解決策

この章では、製造業の抱える課題とDXによるその解決策を紹介したいと思います。

ケース①:覚えることが多い、備品や道具の置き場所が複雑で覚えられない

製造業は特殊な機器を扱うことが多い都合上、操作手順など覚えることが多くなりがちです。また、使う備品や道具も多岐に渡り、全ての収納場所を覚えるのはなかなか簡単なことではありません。

しかし、新入社員がこれらの収納場所をいちいち先輩社員に聞くことも憚られます。先輩社員にとっても、新人からの質問によって自分の作業を中断されることはストレスになるでしょう。

そんな課題はARによるラベル付けによって解決されます。
Google mapのARナビ機能のように、収納場所への行き方がARによって示されるのです。現実世界にラベル付けするよりも少ない手間で済む他、ラベルを貼る場所も考慮する必要がなく、工場内は散らからずに済みます。

ARによるラベル付けのおかげで教育の手間・時間は大きく削減され、新入社員の心理的負担も軽減されます。また、先輩社員にとっても教える負担が軽くなり、本来の作業に没頭することができ、全体として生産性が大きく向上します。


ケース②:残業規制に対応できない

2019年より働き方改革が推進されて、早五年が経とうとしています。残業規制が厳格化されている一方で、製造業従事者の数自体は減少傾向にあり、人手不足が深刻化しています。人手不足は生産性の向上でしか対応できませんが、一体どのように生産性の向上を図れば良いのでしょうか。

1つには遠隔作業支援が有効かもしれません。顧客や遠方の工場、あるいは無菌室など移動の手間のかかるような場所に、技術者が直接赴いて問題に対処しているような現場においては遠隔作業支援が大変有効です。

遠隔作業支援により、オフィスにいながら対面と変わらない精度でトラブルシューティングができたなら、移動時間や移動に伴う費用などが一気に削減され、さらに技術者はその分の時間を他の作業に費やすことができるようになります。つまり、生産性の向上が成し遂げられるのです。

遠隔作業支援に懐疑的な方もいるでしょう。しかし、近年の遠隔作業支援はAR技術の導入により大きく進歩しています。従来のテレビ電話に加えて、ハンドジェスチャー現実世界へのARによる描き込みにより、言葉だけよりも大幅にわかりやすく、大量の情報を交換することができるようになっているのです。詳しくは以下の記事にまとまっているので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。

また、ARによる作業手順の3D化が有効なケースもあるでしょう。こちらは保守・点検作業が課題となっている事業者の方々においては大変有効な施策です。通常、保守・点検作業には多くのチェック項目が含まれていて、膨大な時間がかかるものです。

しかし、ARにより作業手順が現実の機械に重ね合わせて表示されることにより、手順に迷いがなくなり、保守・点検作業は簡単で効率的なものに変わるでしょう。

保守・点検作業が短縮化されれば、工場のダウンタイムが短くなる他、保守・点検作業に回していた人員を他に回せるようになり、人員を増やすことなく生産性の向上が可能になります。


ケース③:会社で一人しかわからないことがある、知識・技術・データの蓄積ができていない

高齢化が進み、熟練労働者の引退がすぐそこにまで迫っている製造業界にとって、知識や技術、データといった所謂ナレッジの蓄積は急務です。

ナレッジの蓄積のための有効な方法の一つとしてウェアラブル端末の導入があります。ウェアラブル端末とは身につけていられるデジタル端末のことで、メガネ型やヘッドセット型など多くの形がありますが、その特長としてハンズフリーでの録画や通話が可能になるというものがあります。

また、ウェアラブル端末は一人称視点での録画が可能というのも大きな特長です。三人称視点よりも作業中に注意すべきポイントや見るべきポイントがわかりやすくなります。そしてこの録画が蓄積されると、新人教育用の教材が非常に作りやすくなるというメリットもあります。

新人教育用の教材の充実は、新人の作業レベル向上にまで結びつき、工場全体としての生産性の向上さえも可能になります。


ケース④:ちょっとしたことで出張しなければならない、遠隔での情報交換がうまくいかない

製造業には大なり小なり出張がつきものでしょう。出張の中には展示会への参加など避けられないものもあれば、拍子抜けするほど簡単な顧客サポートなど避けられるものもあります。特に工場を複数持っている企業や全国に顧客がいる企業においては後者の避けられるはずの出張に多くのリソースを投じてしまっていることでしょう。

そんな避けられるはずの出張を本当に削減してみせるのが、先ほども紹介した遠隔作業支援です。遠隔作業支援の中でも、ARを活用したものは音声だけでなく視覚情報も双方向に伝えられるので、電話よりも指示が直感的でわかりやすいものとなります。さらに近年の遠隔作業支援ツールはARによる描き込み機能が備わっており、細かな指示も十二分に可能です。

遠隔作業支援によりオンラインでできることの幅が広がり、無駄な出張が削減されます。今まで出張に割いていたリソースを他に注ぐことができるようになれば、貴社の生産性は大きく向上するのではないでしょうか?


ケース⑤:作業工程・研修に危険がある場合

どんな仕事にも危険はつきものですが、製造業のそれは時として命さえも奪いうるものとなります。高温の素材や圧縮機など危険なものを扱う産業だから仕方がないとはいえ、それらの作業の研修すら危険というのは非常に危うい状況ではないでしょうか?

そんな時に役立つDXの一つが、デジタルツイン(ミラーワールド)です。デジタルツインとは、デジタル世界に現実の工場とそっくりの空間を作り出すことであり、これにより新人はデジタル世界での作業シミュレーションが可能になります。

デジタル世界の中であれば、若手は危険な作業でも安全に、そして何度でも訓練することが可能になります。加えて、仮に作業に失敗したとしても金銭的な損失が生じない点において事業者側にも大きなメリットがあります。


事例紹介

ユースケース:自動車部品メーカーA
A社最大の課題は生産設備のダウンタイムの存在でした。何らかの不具合でたった1時間設備を止めただけでも数千万円という損失が生まれてしまうのです。その上、設備の部品には他社製のものもあり、自社だけでの早期解決が難しいこともありました。その場合には他社の出張を待つ他なく、それには数日かかる上、負担する出張費だけでも数十から数百万円かかりました。

そこで、A社はAR遠隔作業支援ツール『MetaAssist』を導入しました。『MetaAssist』により、臨場感のあるサポートを遠隔で、即時受けられるようになり、設備メーカーが直接訪れるのを待たずして遠隔で指示を受けられるようになりました。特に『MetaAssist』のハンドツールや描き込み機能により、従来のビデオ通話よりも細かい指示を受けられるようになったことが大きかったようです。

結果、設備のダウンタイム短縮により生産高が安定した他、年間十数件あったメーカーの出張回数、及びそれに付随する費用を削減することに成功しました。


まとめ

今回は製造業におけるDX、中でもARを活用したDXについて詳しくお話ししました。AIやVRに比べてまだまだ普及していないARですが、今後産業活用が広がっていくこと間違いありません。もし、この記事でARを活用したDX、中でもARを活用した遠隔作業支援に興味を持って下さった方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

問い合わせ:https://metaassist.jp/#contact


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