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相対性理論と量子論について、物語との関連を探る

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注意


 
これらの物語の重要な展開を明かします。
 
 
 
特撮テレビドラマ
『ウルトラマンティガ』
『ウルトラマンダイナ』
『ウルトラマンガイア』
 
 
小説
『ウルトラマンF』
『絶対製造工場』
『酔歩する男』
『海を見る人』
 
 
漫画
『決してマネしないでください。』
 
 
アニメ映画
 
『宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』
 
 
 
 

はじめに

 
 これまで、生物学や環境問題、貨幣からの経済学、法律からの政治学、言語や宗教などの文化の問題を扱って来ましたが、私があまり挙げて来なかった、しかし言及可能である分野に物理学があります。
 今回は私の知る物語を、相対性理論と量子論から説明しようと考えています。
 せっかくなので、私に理解出来る範囲の数式も使ってみます。
 
 

相対性理論の歴史


 
 
 
 まず、相対性理論は、光の速度に関する、ある予想外の観測事実から始まります。
 歯車に光を通して鏡に反射させると、ある回転速度で、谷を通った光が戻るときに山に遮られ、どの光も通れなくなる状態が成立します。このときの回転速度と歯車の数と鏡との距離から、光の速度は割り出せます。
 しかし、太陽からの光は、太陽に対して地球が動いているのですから、方角によって速度が変わるはずだと予測されました。
 光は波だと当時判明していたので、その媒質をエーテル(化学の化合物とは異なります)と呼んでいたのですが、そのエーテルに対して地球が動いているとも言えます。
 しかし、どの方角で測っても、光の速度は変化が観測されませんでした。
 ここからアインシュタインは、動いていると時間と空間が歪み、光の速度だけは常に一定に見えるようになるという数式を考えました。
 別の学者の研究によって、ローレンツ変換と呼ばれます。それまでの常識はガリレイ変換と呼ばれます。
 
 ここにローレンツ変換を記します。
 
 




 
 
 
x:場所
x‘:動くものの場所
t:時間
t‘:動くものの時間
v:速度
c:光の速度
k:時空の伸び率
 
 
 
 
 
 
 この時空の変化から、速度v1の物体から見て速度v2に見える物体の速度が、止まっている物体からはどれほどの速度v3に映るかの合成速度の式を立てます。
 
 




 
 ちなみに、v1=cのとき、必ずv3=cとなります。
 
 
 次に、同じ質量と速さで逆向きに衝突する物体が接着して止まるときに、この合成速度の式を代入すると、動く物体は質量が増大すると導かれます。
 
 


 
M:質量
 
w=2v/(1+v2/c2)
 
w:合成速度
 
 



 
 ここから、質量のある物体が光速に近付くほど質量が増大し、無限のエネルギーを与えないと光の速度に達しないことから、質量のあるあらゆる物体は光の速さを超えられないことになります。なお、光の速度では時間の進みが止まり、空間も進行方向は押し潰されたようになり、超えると、2乗してマイナスになる虚数が絡みます。
 
 
 また、運動エネルギーはニュートン物理学では、質量と速度の2乗と(1/2)の積なのですが、これは元々質量そのものが膨大なエネルギーで、それが運動によって膨れ上がった分だと計算され、止まっている物体には、その質量に光速度の2乗を乗じたエネルギーがあることになります。核反応はそれによるものです。
 




 
E:エネルギー
 
 
 なお、動くものは時間が遅れるというのは、車で言えばアクセルの加速やブレーキの減速やハンドルによる方向変化のない等速直線運動のみ扱う特殊相対性理論の話で、加速や重力を扱う一般相対性理論では、加速度運動は相対的でないので、また別の議論が必要になります。
 強烈な重力でも時間は歪んで遅くなり、人工衛星は重力の弱さによる時間の速くなる効果と、円運動で遅くなる効果が重なり、GPSなどはそれによる時間や空間のずれが無視出来ません。
 ただ、高速の運動や膨大な質量を扱う相対性理論が実用に役立つ場面は、後述する量子論に比べて遅かったようです。
 

量子論の歴史


 
 
 量子論は、光の波と粒の性質から、物事の観測そのものを扱う論理的に複雑なもので、相対性理論を含めた古典力学と区別されます。
 光が波か粒かという議論は昔からあったのですが、光には波だけの回折や干渉という性質が発見されたため、波という説が有力になりました。
 しかし、アインシュタインは、金属に光を当てると電子というマイナスの電気を持つ粒子が飛び出す光電効果を研究しました。それが波の長さとエネルギーによって電子の速度と数が決まることから、光は波の長さに反比例する、正確には振動数に比例するエネルギーを持つ粒の集まりでもあるという光量子仮説が重視されました。
 また、電子にも干渉の性質が見つかり、逆に電子も粒でもあり波でもある理論が立てられました。
 さらに、電子は原子核というプラスの電気を持つ粒子の周りを回るとされましたが、それでは光を発して原子が潰れるとされました。
 ド=ブロイは、電子の波の長さが一定で、波が花びらのように重なり合う決まった軌道でないと安定しないため、固定されているという説を出して、アインシュタインに認められました。
 この光の波のエネルギーを扱う数式があります。
 
 
 
 

 
 
 
 
E:エネルギー
ℏ:プランク定数(光の振動数とエネルギーの関係からの決まった数)
ω:振動数
k:一定の長さ当たりの波の数
m:質量
 
 
 この数式から、電子の波と粒の性質はどちらかが強くなり、波の長さから場所と速度のどちらかが必ず曖昧になり、観測して初めて定まるという、因果関係や哲学から重要なものになります。これを不確定性原理と呼びます。
 
Δx・Δp=ℏ/2
 
x:場所
p:運動量(主に質量と速度で決まる値)
 

東洋思想と量子論

 
 
 
 
 西洋哲学が物事から切り離された観測者が客観的に分析するのに対して、東洋哲学は観測者と対象が共にあるとされるため、量子力学は東洋思想との関連が重視されます。
 『酔歩する男』では、量子力学によって、観測者を狂わせることによるタイムトラベルが起きていますが、どことなく私には仏教の輪廻を連想させました。
 
 
 

相対性理論と質量の使い方

 
 これらを扱った物語はきわめて多いでしょうが、幾つか挙げます。
 『絶対製造工場』は、E=mc2の数式から、燃料の質量を全てエネルギーに変えて工業に使う機械が開発されていました。しかし、その原理の説明に、物理学者の友人の工場経営者はあまり興味を抱いていなかったところが印象的です。
 
 

タイムトラベルと虚数

 
 相対性理論から、浦島太郎などの伝説やタイムトラベルを説明しようとするSFは無数にあるとみられます。
 しかし相対性理論では、ローレンツ変換の数式から、光速度の範囲内のどのような実数の速度でも、周りより自分の時間が遅くなるので、未来に行くことは可能ですが、過去には行けません。
 虚数の速度などを持ち出せば可能かもしれませんが、あまりに複雑です。
 『ウルトラマンZ』では、グリーザが虚数に関わる存在らしく、それを封印していたブルトンによって過去に行く場面があります。
 小林泰三さんの『海を見る人』では、相対性理論によって年齢の重ね方の異なる2人の何者かの関係が複雑になり、ブラックホールの重力によって周りから止まって見える現象が文学的になっています。
 『ウルトラマンF』では、別の宇宙から大量のエネルギーが送り込まれたとき、「これは質量で送られたとみるべきであり、それならば1グラムでしかない」とあります。
 ただ、よりによって、と言うべきか、増殖する細胞だったので、危険ではありました。
 
 
 

宇宙論は両方重視される

 
 
 
 『決してマネしないでください。』原作でのたとえが分かりやすいのですが、相対性理論は重く大きいもの、量子論は軽く小さいものを扱い、ブラックホールなどは重く小さいので両方が必要だとされます。
 宇宙の始まりも重く小さかったというビッグバンの理論から、両方の理論が重視されます。
 

反粒子のエネルギー

 
 
 また、相対性理論のE=mc2の数式とシュレディンガー方程式を組み合わせますと、マイナスのエネルギーという不可解な値が現れるそうです。
 これを解決するためのディラック方程式から、質量はプラスで電気は通常と逆の反粒子、たとえば電子に対する陽電子などの存在が予測され、これは発見されました。
 反粒子は対になる粒子と結合して、質量の全てを光のエネルギーに変えてしまうため、理論上最大の燃料とされます。
 光子力ロケットは、これにより限界まで加速するそうです。自転車や自動車のトップギアを極端にしたものらしいです。
 トップギアのような加速をオーバードライブと呼び、これを最大限にした反粒子による光の推進システムである「マキシマオーバードライブ」が、『ウルトラマンティガ』や『ウルトラマンダイナ』にあります。
 ただし、これによってγ線という、放射線にも分類される光、というより電磁波が出るようですが。
 また、反粒子だけで構成された生物として、『宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のテレサや『ウルトラマンガイア』のアンチマターがいます。反粒子の性質は、電気以外はほとんど粒子と同じなので、生物を構成出来るかもしれませんが、通常の物質と触れるだけで爆発します。
 
 

相対性理論と量子論とエントロピー

 
 
 ブラックホールは、これまで私が扱ったエントロピーが特別らしいのですが、まだ細かい理論は分かりません。
 また、相対性理論では、3つ以上の物体が重力で関係し合う運動で、時間反転すると成立しない重力波という現象が起きるらしく、これに、時間反転対称性を崩すエントロピーが関係しているかはよく分かりませんでした。
 一方、小さな世界を扱う量子論とエントロピーの関係は、場合の数などの比較的分かりやすい関係があるようです。
 量子論、相対性理論、エントロピーの関係にも私は興味があります。
 
 
 

まとめ


 
 
 
 量子論や相対性理論のような基礎的な数学や物理学の理論が、生物学や環境問題、『絶対製造工場』のような産業や経済、対になる反物質生物との倫理や法律の問題、東洋思想のような文化との関連もあるかもしれません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

参考にした物語

 
特撮テレビドラマ
 
村石宏實ほか(監督),長谷川圭一(脚本),1996 -1997,『ウルトラマンティガ』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),川上英幸ほか(脚本),1997 -1998(放映期間),『ウルトラマンダイナ』,TBS系列(放映局)
根本実樹ほか(監督),武上純希ほか(脚本),1998 -1999(放映期間),『ウルトラマンガイア』,TBS系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)
 
 
小説
 
 
 
 
小林泰三,2018,『ウルトラマンF』,ハヤカワ書房
小林泰三,1999,『玩具修理者』,角川ホラー文庫(『酔歩する男』)
カレル・チャペック/著,飯島周/訳,2010,『絶対製造工場』,平凡社ライブラリー
小林泰三,2002,『海を見る人』,早川書房(表題作)
 
 
漫画
 
蛇蔵,2014-2016,『決してマネしないでください。』,講談社
 
 
 
アニメ映画
 
 
松本零士(原作・監督),舛田利雄ほか(脚本),1978,『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』,東映(配給)
 
 
 
 
 

参考文献


 
佐藤勝彦,2006,『相対性理論と量子論』,PHP研究所
佐藤勝彦,2005,『〔図解〕相対性理論がみるみるわかる本 愛蔵版』,PHP研究所
科学雑学研究倶楽部(編者),鈴木昌子(発行人),2015,『量子論のすべてがわかる本』,学研プラス
佐藤勝彦,2010,『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』,講談社ブルーバックス
浅田秀樹/著,2021,『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』,ブルーバックス
山口昌哉,1986,『カオスとフラクタル』,ブルーバックス
著者/J.ブリッグス+F.D.ピート,訳者/高安美佐子+山岸美枝子,2000,『バタフライパワー-カオスは創造性の源だ―』,ダイヤモンド社
森肇,1995,『カオス 流転する自然』,岩波書店
丹波敏雄,1999,『数学は世界を解明できるか:カオスと予定調和』,中公新書
米沢富美子,1995,『複雑さを科学する』,岩波書店
鈴木炎,2014,『エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計物理学』,講談社
室田武,1983,『君は、エントロピーを見たか?』,創拓社
ジェレミー・リフキン/著,竹内均/訳,1990,『エントロピーの法則 地球の環境破壊を救う英知』,祥伝社
戸田盛和,1999,『ソリトン,カオス,フラクタル,非線形の世界,物理読本』,岩波書店
1994,『岩波講座 現代の物理学 第15巻 散逸構造とカオス』,岩波書店
杉本大一郎,1985,『エントロピー入門 地球・情報・社会への適用』,中公新書
高水裕一,2020,『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』,ブルーバックス
1994,『岩波講座 現代の物理学 第5巻 場の量子論』,岩波書店
1992,『岩波講座 現代の物理学 第10巻 素粒子物理』,岩波書店
吉田伸夫,2020,『時間はどこから来て、なぜ流れるのか?最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』,ブルーバックス
松浦壮,2017,『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体』,ブルーバックス
小形正男,2007,『量子力学』,裳華房
ランダウ,リフシッツ(著),恒藤敏彦(訳),広重徹(訳),1978,『場の古典論(原書第6版)』,東京図書株式会社
 
 
 

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