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花咲く庭

「木瓜を植えたらボケない。」

30年前、実家の庭木が増えたのに気づいて聞くと、父が真顔でダジャレのような理由を言った。
今から思うと、ちょうどその頃から母の脳梗塞は少しずつ始まっていた。

赤い花がたくさん咲き、庭が華やかになるのを両親は毎年、楽しみにしていた。
幼い娘たちを連れて実家へ行くと、母は子供らに花を見せ、「棘があるから」と注意した。
大きな実がなるのも喜んでいた。
食べられるわけでもないのに…と思ったが、今ならなんとなくわかる。
自分の庭の草木に可愛い実が実るのは幸せだ。

門柱のそばには柊南天。
トゲトゲの葉で邪気を払うらしい。
若い頃から高血圧で体調不良だった母は
「お迎えが来ても追い返したる!
『お門違いじゃござんせんか?!』って。」
と何故か時代劇口調で啖呵を切っていた。
なんだかんだで86歳まで生きたのだから、母は強かった。
柊南天も役割を果たしてくれたのだ。

香りの良い花を好んだ母は、くちなしや金木犀そして沈丁花を植えた。
この季節、甘い香りを漂わせる沈丁花が満開。
三色の花が庭に咲き誇る一番美しい季節が母の命日になった。

お彼岸のおはぎは母の好物。
きなこもあんこも両方供えると、
「わあっ!」と目を見開いて喜ぶ顔が浮かんだ。

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