第14回牧水・短歌甲子園参戦記

8/17・18に行われた短歌甲子園に出場しました。
全体では3位、さらには個人賞と、結果は良かったものの、自分の短歌への理解の至らなさを痛感させられた大会でした。
しかし、ここで後悔や何やらをグダグダと語っても意味がないので、気になった歌を厳選して感想を言っていきたいと思います。
※すべて個人の感想なので、あしからず

型落ちの肩書き気質カタツムリ恋を語れぬペースで歩く

帯谷到子(尚学館)

ディベートではさらっとしか触れられませんでしたが、カタツムリが作者自身であるという比喩を組み込んでいるのがとても綺麗です。
また、最初の「かた」のリフレインが、後半の「ペース」という語に繋がっていて、よく言葉が練られていると思いました。

また春が終わってしまう恋猫はどこでキスとかしてるんだろう

與那嶺陽大(興南)

「しまう」の後で断絶していると読んでもいいですが、僕は「また春が終わってしまう恋猫」と読みたい。そして、「キス」を持ってきたところに、作者のいやらしさを感じました。リアル重視にやるなら「舐めあい」でもよかった。「キス」とすることで友人を「恋猫」と見ている(!)作者まで見えてくるいい歌だと思う。

人間は濡れたらきれいゆるやかに恋は樹林のように果てるの

知念ひなた(興南)

すごくいい歌です。他の人が評を言っているので、あえて言うことはしません。正直に言って、初見でこの歌を見たとき、その美しさに感動しました。

暗闇で数を数えて雷鳴を待ってる時間恋への予兆

山本裕衣(宮崎商業)

俵万智が、体言止めは、「その」歌になってしまうと言っていましたが、これは歌の途中でもそうです。この歌では、「時間」と一旦体言止めにして時間の広がりを見せておいて、そこに「恋への予兆」をはめ込んだところが、分かりやすく、よい表現だと思いました。

皆の輪に入れずそっと部屋を出てエゾモモンガの飛翔を夢みる

生木沙弥(宮崎商業)

「夢見る」についてや、「一緒に飛んで欲しい」など言われていましたが、僕は「飛翔を夢みる」が一番だと思いました。「夢みる」だけ。そのあと作者は部屋に戻ったんだろうな、と思わせる、少し哀愁の漂うこの表現に深く共感しました。

<全体について>
全体として、定型意識が強いと思いました。歌人の歌集なんかを読んでいると、リズムが良ければよい、みたいな人が多いので、文語と口語を混ぜるなど、無理をしてまで定型に合わせる必要はなんじゃないかと思います。(短歌甲子園独特の雰囲気なのかもしれないですが)
リズムで言うと、

夜はすぐ来てハロハロは溶けきって君に白髪がある月明かり

知念ひなた(興南)

は定型ながらも独特のリズムを感じます。「夜はすぐ来て/ハロハロは溶けきって/君に白髪がある/月明り」と読むと、流れるようにきれいな形をしている。五/七/五/七/七のリズムだけではなく、いろんなリズムがもっと出てきたらいいなと思いました。

<さいごに>
今年は、俳句甲子園と兼ねて出場する高校が4校ありました。去年は確か日程が被っていて、こんなに俳句と短歌のどちらもに才を持つ高校生が多いなら、調整して被らないようにしてほしいですね。
あとは、少し上から目線になりますが、正直、各校はもっと自分の歌を鑑賞してきた方がいいと思います。良い歌であっても、アピールで良さをすべて言い切れていないことが多かったです。相手校にも言われず、審査員に言われるなんて、ディベートの意味がないじゃないですか。それは、過鑑賞を怖がっているからなんでしょうか。僕は、人の数だけ読みがあっていいし、作者の解釈は絶対ではないと思います。牧水短歌甲子園に参加した一人の高校生として、今後はもっと良いものになっていけばいいなと願っています。

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