日(陽)はまた昇る
アーネスト・ヘミングウェイの出世作。
第一次世界大戦下、性的機能の不全に陥った主人公と愛する男性を失ってしまい、心の底から男性を愛せない女性の物語。
お酒を飲み傷を癒そうとする者、忘れるために自由奔放に振る舞う者。
ヘミングウェイ自身がロストジェネレーションと言われていることもあり、いかに戦争が多くのものを奪うのか、ここにも焦点を置いた作品になっている。
主人公とその女性は決して結ばれることは無い。
心の繋がりを求めたとしても、女性はそれだけでは満足が出来ない。
愛していたとしても、傷つけてしまうと言い、結局はすれ違う。
途方もない虚無感を感じる作品。
正直、学生時代に読んだときは退屈だった。
感情表現が描かれず、何をしたいのかさえ分からない若者たちの話。
そう捉えたから。
それでもなお感情に従えば良いと思ったし、直情型の自分にとっては歯がゆいだけの内容。
大人になって読んでわかったのはタイトル通り、陽はまた昇るということ。
失ったものに興味を湧くようになってからはこの小説の理解が出来た。
失くした物をつべこべ言うことよりも、もっと大事なことがある。
いかに生きるか、そして生きていれば意義が見つかると。
著者ヘミングウェイは61歳に、航空事故の後遺症からうつとなり、自決をしている。
いま、コロナが多くの自決者を生んでしまった。
著者が伝えたかったことを伝え、自決を選ぶという結末に改めて生命というものを深く考えさせられる作品で。
それでも生きるという命題を背負う姿を描かれた若者に感情を動かされた。
改めて思う、生きることは難しい。
今日いつも通り接している方が事故で脚の自由を失ったという話を初めて聞いた。
オンライン上で何気なくやり取りしている中で、僕の販売しているドライフラワーのことで電話をする機会があり、ひょんなことから始めた会話の中。
実は車いすだと。
打ち明けることに躊躇う必要がないということは言い出したタイミングですぐに分かった。
その声はとても穏やかで、躊躇することなく話す言葉がとてもきれいで、日向で浴びる光のように感じた。
享受し生きていくことの素晴らしさを語っているように。
結局1時間以上笑いながら話して。
最後に貴重な時間を長電話に付き合わせてごめんねと謝られた。
受け入れることは容易い事ではない。
その辛さをよく理解している。
でも、人生に意義を見出した人の言葉はとても温かい光のように人を包み、
心地の良い感情にさせることを改めて学んだ。
陽はまた昇り、人の心を照らす。
陰るときもあるが、それでも生きていくことできっと陽が照るときは来る。
失った者として、生きていて良かったと強く感じれる出来事だった。
今日の貴重な時間を下さり、謝れた以上に思ったこと。
出会ってくれて、打ち明けてくれてありがとうございました。