お正月、なにする?
11月だ。年末が近い。ということは、その先にある正月も近い。そのうちおせちを作らなくてはなるまい。
と思ったわけではないけど、岩村暢子『普通の家族がいちばん怖い』を読んで、おせちくらい作れないとダメかなあ、と考えている。「くらい」って、どんだけハードル高いかわかっとるんかアンタ、と言われたらわかってない。やったことがないから。
母親から習った「それらしい」=「ハレの日っぽい」料理は、飾りニンジンだけだ。ニンジンを花の形に切る、あれ。でも別に正月に必須の食べものではないし、自分は母から、おせちについてほとんど教わってきていない。
何があればいいんだっけ、カマボコと田つくり?毎年なんらかの形で食べているはずなのに、ろくに内容を思い出せない。漠然と口にしているだけで、作り手にならないから、覚えていなくても支障はない。支障はないが、それではいけない気がする。
『普通の家族がいちばん怖い』にも、同じような主婦がたくさん出てくる。お正月料理なんて教えてもらってない、覚えているのは見た目だけ、自己流で作って似たものができればそれでよし。
おせちの一品一品について、きちんと作り方を教わり、毎年そのようにしている人なんてまずいない。縁起物だから、どれもそれなりに由来あって正月に食卓に出てくるのだが、それを知っている人も数少ない。
由来というのは、例えば「黒豆は、マメで過ごせるように」「レンコンは、穴が空いていて見通せることから、将来の見通しがよい」などのいわれである。自分はどれも、うっすらとしかわからない。とりあえず鯛は「おめでタイ」だろうけど……。
こんなにあやふやなことでいいのだろうか。若干の危機感を覚えたので、他のものについても調べて確かめてみる。きんとんは、見た目の華やかさが金に似ており、富に通じる。数の子は卵が多いから、子孫繁栄への祈りが込められている。
昆布巻きは「よろこぶ」の「こぶ」。うん、これは過去に聞いた気がするぞ。黒豆と似た感じがする。カマボコは、邪気を祓う赤と、清浄の白との組み合わせで縁起がいい。なますは、ニンジンと大根の色合わせが水引きに見えて幸運に通じている。
あとは海老。背中が丸まっていることから、腰が曲がるまで生きる長寿を意味する。ざっと列挙したけど、おせちってこれくらいで全部?わからない。田作りも入っていると思ったけど、おせち料理にカウントしてないサイトもあり、真偽が不明となっている。
旦那さんに「おせちって、作れた方がいいかなあ」と訊くと「買うからいいよ」と言われる。昨今はどこの家もそんなんですかね。「だったらお雑煮くらい作ろうか」と言ってみると「それはいいね」と返ってきた。お雑煮は手づくりがいいらしい。
それだって、母から明確に教わった記憶がない。ひょっとしたら1、2度、作り方を聞いたかもしれないけど、覚えて作れるレベルでは全然ない。こういうのって「ちゃんとした」家の子は、親御さんから伝承されて、何も見ないで作れるもんなのかな。
実家で食べていたお雑煮は、どうやって作られたものだったんだろう。疑問に思って、母に手紙を書いた。急ぐ用事ではないから、郵便の速度で質問を届ける。母親は、いまだに携帯もスマホも持っていない。気が向いたら、そのうち返事をくれると思う。
お母さんへ。年末までに返信くれると嬉しいです。
調べて作ってもいいのだけど、お雑煮は地方ごとにいろいろ特色があるらしく、わたしが知りたいのは実家のそれである。出汁は煮干しだった気がするけど、よくわからない。京都のほうは白味噌つかうんだよね、確か。
そういうわけで、たぶんお正月にはお雑煮をつくって食べている。