「過去」ができていく。【かつて住んだ街】
10代の頃、なぜか入ってしまった喫茶店がある。薄暗い階段をのぼっていくところにあり、住んでいる寮に近い。近いけど、怪しい空気を醸していたので普段は近寄らない。その日は、なにかちょっと、いつもと違うことをしたかったのかもしれない。
そこは本当に喫茶店だったんだろうか。まるで民家のようなのれんをくぐって中に入ると、おばちゃんと猫がいた。猫は太っていて、店内を自由に歩き回っている。店にはカウンターがあり、ソファーがあり、家のようなお店のような、よくわからない空間だった。