主婦ランチ vs 夫の昼ご飯
「主婦」と一口に言っても、その実態はさまざまだから、一括りにはできない。読んでいる本に「主婦の優雅なランチ、夫の質素な昼食」みたいな対比が出てくるのだけど、どこまで信じていいもんかな。ここでは、主婦は夫より常にいいものを食べていた。
書籍の出版が2010年、データはそれよりも前のもの。となれば、下手したら20年以上前の話になる。だからいま読むなら「昔はそうだったのね」くらいの感覚でいるのが適切かもしれない。
『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』は、文字通り、食卓の写真とともに家々の食事風景を追っている。データは2003年以降のもので、出版が2010年。だから微妙に昔の話として読むのがいい。
引用するとこんな感じ。
どことなく主婦に批判的に書かれているが、夫婦が合意の上でそうしているなら問題ない。有閑マダムたちが、働く夫のつくるお金でレストランに集うのも、べつに悪いことじゃない。文化と経済を潤すのはいつも有閑階級の人々だ。
写真つきのデータでは「妻(42)の昼食、オーガニックレストランで1260円。夫(42)は社員食堂で300円の豚カツ定食」なども記録されている。最近は物価高だから、オーガニックランチも社員食堂も値上がりしているだろう。
旦那さんはお小遣い制で、だから昼ご飯も質素で、奥さんの昼食は友達と外でランチ。それって、いまはどれくらいあたり前のことなんだろう。共働きも増えているから、そういう家庭は微減傾向にあるんじゃないか。
かく言う自分のところは、平日なんて毎日
「妻:社員食堂のカレー(480円)、夫:社員食堂のカレー(220円)」
みたいな記録になる(旦那さんの会社のほうが、社食の値段が総じて安い)。働いてたらそんなもんじゃないかな。
で、こういう面白みのないデータは誰も取り上げない。
夫婦のランチの内訳を書くものは「妻は優雅に外食、夫はお小遣い制でやりくり」と対比的に書かれることある。それを読んで「旦那さんがかわいそう」とか「女ばっかり贅沢しやがって」と反応する人もいる。
でも、そんなのは各家庭にまかされている話だ。外野が口出ししても仕方ない。また、記事にする価値のない退屈な記録は、当然ながら表に出てこない。だからその手の話を読んで「これがいまの夫婦の、食事事情の実態なんだ」と思い込むと、現実を見誤る。
結婚していない男性の中には「どうせ結婚してもお小遣い制にされて、食費節約しなきゃいけなくなるんでしょ」と言う人もいる。「ならもう結婚なんかしなくていい」と。なんでそんな受け身なんだろうな、と思う。
夫婦関係は、ふたりの合意の上でつくっていくものだ。お小遣い制が嫌なら拒否していい。実際、旦那さんは結婚前からそう言っていた。「僕もたまには飲みに行くし、旦那お小遣い制は採用せえへんよ」。
いまは彼が、わたしのお給料も含めて家計を管理している。強制されてそうしているのではなく、自分でそのほうがいいと思って提案した。そういう家庭もある。
主婦家庭でも、毎日の節約に励んでいるところは少なくない。「主婦のひとりご飯 節約レシピ」みたいな記事も多くある。ときどき目にする「優雅な妻ランチVS夫の昼飯」みたいな文章は、扇動力は高そうだけど、反応するだけ無駄って気がする。
だいたいの事実は、いつも平凡で落ち着いている。退屈で面白みがないから記事にもならない。