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大人のオムツの可能性

本日は「すやすや水曜日」です。画面を離れて、いつもより早く寝ると吉。


 むかし読んだ英語のエッセイに、こんなのがあった。
 
 「わたしがこれから書くことに引かないでほしいのですが、実は最近、あるものにハマっています。それが、大人の介護用オムツを身に着けること。車で遠出するときや、しばらくトイレに行けるかわからない状況のときに着けています。いまのところ、それを『使った』ことはありませんが、はいているとすごく安心できるんですよ」
 
 文章の最後は確か「これを聞いたあなたが、私を見る目が変わらないといいのですが」だった。なるほど「いい大人がオムツをはいている」と聞くと、困惑する人も多いかもしれない。
 
 自分は「まあ、そういうのもアリなのかな……」と思った。困惑3割、納得7割。だって、言われてみれば安心感はありそうだし、トイレが確保できるかわからないときには心強いだろう。実際に使うかどうかはともかくとして。
 
 近頃の大人用オムツは結構な進化を遂げていて、薄くて軽く、目立たない。少なくとも、ズボンやスカートの上から「あの人オムツをはいてる!」とわかるレベルの物はほとんどない。
 
 だから、ひょっとしたら街を行くあの人もこの人も、はいていておかしくはない。特にお腹を下しやすい人なんかは、重宝している可能性もある。大人用オムツ、なるほどねえ、と思った記憶がある。
 
 最近になって、ふと母親にその話をすると、「ああそうよ」と返ってきた。「ああそうよ」って何?
 
「わたしも(親の)介護してるとき、はいてたもん。いつ呼ばれるかわからないでしょ、ああいうのって。だから、本当に『した』ことはないけど、安心感があったよ」
 
 ああ、そういう需要があるんですね、やっぱり。「うっかり漏らしてしまうかもしれないから」ではないのだ。「トイレの時間が確保できるかわからないから、安心感がほしくて」使う人がいる。
 
 エッセイ主と母、ふたり例を挙げられると、これは他にもいるんじゃないかと思えてくる。ひょっとしたら自分が知らないだけで、もうどこかの企業が目をつけているだろうか。
 
『オムツなんて……』はもう古い!
仕事のデキるビジネスマンは、トイレを不安がらない。
オトナのための安心感、『スマート・アンダーウェア』✨

 
みたいなコピーと共に、新型スマートおむつを売っていてもおかしくない。「あったら買うか?」と言われたら買わないけど。
 
 でももしかしてこの先、すごく育児が忙しくなって「ゆっくりトイレにいる時間もない!」ってなったら検討するかもしれない。母や、件のエッセイ主と同じように「実際には使わないけど、安心感を買う」目的で、はくようになるかもしれない。
 
 「オムツ」といえば、どうしても「赤ちゃんやお年寄りのもの」というイメージが強い。「いい大人」には「排泄をコントロールできる」ことが必須だ。オムツはそれができない人に向けたもので、「大人が使うのは恥ずかしい」感じがつきまとう。
 
 それが何かの拍子に「大人でも普通にはくよね」とか「長距離運転のときは必需品よ~」みたいなノリになることもありうる。「育児中のママのための、トイレ時間節約おむつ!」が出てきても、それほど驚かない。
 
 いわゆる「いい大人」でも、不安なときはあるのだ。「緊張がお腹に響きやすくて、人には言えないけどときどき下着を汚している」とネットでこぼしている男性もいた。それならオムツ、いいんじゃないかな。汚れたら捨てればいいんだし。
 
 いま毎日、目にしている赤ちゃん向けのオムツは、カラフルでバリエーション豊富だ。しまじろうが笑っているデザインもあれば、ディズニー柄もある。大人向けオムツが普及したら、親子でお揃いデザインとか出るんだろうか。
 
 赤ちゃんの育児中、そんなことを考えている。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。