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お褒めの言葉はこちらまで

お店や企業にお礼のメールを送ることがある。例えば絵葉書が気に入ったから、例えば接客がよかったから、例えば食べ物がおいしかったから。その会社や店に「ありがとうございます」と一言つたえるために、そうする。メールではなくて手紙を出すこともある。

最初は「手紙を受け取るのが手間になったりしないかな」「お礼を言うだけのメールってアリなのかな」とか考えて、恐る恐る出していたけど、大抵の場合よろこんでもらえる。小さなお店なら「お手紙ありがとうございました」と手書きで返信をくださったり、企業から「お褒めの言葉は私どもにとって励みとなります」とメールが返ってきたり。

だから、もし自分と同じように「わざわざ感謝を伝えるって変かなあ」と迷っている人がいたら、「変じゃないし、伝えたほうがいいよ」と言いたい。

もちろん何事にも例外はあって、「タクシーの運転手さんが値引きしてくれました、ありがとう」とかは言わないほうがいい。会社にとってマイナスの判断をしたということで、その人が会社から責められることになる。値引き関係は触れずに「○○さんの接客が素晴らしかったです」とか言うのがベターかと

でも、これにはひとつハードルがあって。

企業の公式ホームページって、大抵クレームか質問(「この製品をこういう風に使っても大丈夫ですか?」)を想定した作りになっている。最初から「どこの店舗で何時ごろに何が起こりましたか?」「トラブルが起こった製品の商品番号は?」と聞いてくる会社もあって、「えっ、別にどこで何があったとかじゃなくて、ただ『いつもありがとう』って言いたいだけなんだけど」と戸惑ったこともある。

さらに、いろいろ個人情報を書く欄がある。気軽にお礼メッセージだけ送れるところってまずなくて、名前とメールアドレス、返信が必要か不要か、場合によっては住所を記入する欄も。クレームを入れる人に対してハードルを高くしているのかもしれないけど、「この商品いいね、作ってくれてありがとう」と伝えたいだけのときには完全に障害だ。

いっそのこと「お褒めの言葉はこちらへどうぞ!」という問い合わせフォームがあれば、気軽に感謝の言葉が送れて、いいと思う。「ご質問(ないしはクレーム)はこちらから」「お褒めの言葉はこちらから」みたいに分けてあれば、「ああ、好意を伝えるだけのメッセージも受け付けてるんだ。じゃあ送ろっかな」みたいになるだろう。

「褒め言葉を要求するなんて図々しい」と言う人もいるかもしれないけど、これは要求じゃなくて「受け皿を作ろう」ってだけの話だ。例えば神社に行ってお賽銭箱がなかったら、どこに硬貨を置けばよいのかわからなくなるだろう。そこに「お金はこちらに入れてくださいね」という目印があるから、お参りもスムーズになる。そういう感じ。そういう、好意の受け皿を皆もっと作っていい。

中には、SNSでハッシュタグをつけて、応援と感謝の意を表す人もいる。それはそれでいいと思うし、お店や企業の人は検索して見ているかもしれない。思いが届くこともあるだろう。「ありがとう」を伝える方法はいろいろだ。

とはいえやっぱり、直接つたえるのが一番確実じゃないかな。日本はクレーマーが多いとか、評価が厳しい客が多いと言われるけど、それは好意を表現するのに慣れてないってだけなんじゃないか。促すきっかけさえあれば、乗ってくれる人はそれなりにいるだろう。そういうわけで「お褒めの言葉はこちら」的コーナー、あったらいいなと思うのです。

 

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本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。