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スタートアップが直面するフェーズごとの人事課題と求められる報酬とは【IVS2024KYOTOのセッションに登壇しました】

2024年7月に開催された日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2024 KYOTO」に、マーサージャパンの筒井と照山が登壇しました。

セッションのテーマは「上場/その後の成長に向けて、社員を惹きつけ活躍を促すための人事・報酬マネジメント」。

近年、スタートアップ企業には優秀な人材の採用や定着のために、報酬を含めた企業の魅力づけが求められています。

本セッションでは、スタートアップ・ベンチャー企業の組織・人材マネジメントを支援する立場から、成長を目指す企業が直面する「ヒト」における課題や、社員に活躍を続けてもらうための対応策について解説しました。

当日のセッションはTMI総合法律事務所 吉井様、株式会社kubell 山本様とのパネルディスカッションが中心でした。本セッションは一部参加者限定にて実施されたため、本記事では筒井による講演部分のみを抜粋してご紹介します。


テーマ①:「上場」や「企業の成長」によって、組織はどのように変化し、どのような組織・人事面の課題に直面するか

近年、毎年100社近くが新規上場をしている中で、上場や企業の成長に伴い起こる変化を組織・人事の観点から見ていきます。

多くのスタートアップが、上場することによって企業の知名度や信頼度が向上し、人材の確保をしやすくなるといった効果を実感していることがわかります。そして、実際に上場前とはまったく異なるスピードで社員数が増えていくケースもあります。

事業の成長と社員数の増加により、組織の状況が大きく変わることで、直面する組織課題も変わっていきます。

社員数が少ない創業期は採用や定着が課題となる一方で、新規上場企業が該当するフェーズ(社員50~300人)に入ると組織内の人材をどのように活用するかが中心的な論点になります。

マーサーが実施した調査でも、100人以上の組織規模になると、最も大きな人事課題が「採用」から「人材育成」に切り替わっていることがわかっています。

人員が増加するにつれて組織の階層も増え、社員の価値観やキャリア志向もより多様になるため、トップへの信頼や理念への共感に基づく従来のマネジメントが組織全体に行き届かなくなるのです。

テーマ②:集まる人材・組織が変化する中で、優秀人材を惹きつけ、社員に活躍を続けてもらうための報酬とは

企業フェーズの変化に伴い、社員が企業に期待することにも変化が見られます。

調査によると、転職意欲がある30代のうち、およそ半数がスタートアップ企業に転職したい理由として「先進性・革新性のある事業へ関与できること」を挙げています。(「ミドル1000人に聞く!「スタートアップへの転職」実態調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―

しかし、スタートアップに絞らず、その枠を全企業へ広げると、転職に対して「給与や待遇のアップ」を求める傾向にあります(ミドル1800人に聞いた「転職のきっかけ」意識調査)。企業の成長に伴い、企業が社員に対して提供すべき価値はより複合的なものになるのです。

ここで近年のスタートアップを取り巻く環境を見てみましょう。

「スタートアップ=低年収」という過去の認識は変わってきています。そして、大企業からスタートアップへの転職者は年々増加しています。

報酬マネジメントの幅が広がり、人材の確保・活用には給与だけではなく、株式報酬の導入を考える必要性も高まっています。

上記は、「企業が従業員に対してどのような体験価値を提供するか」を示す『EVP(Employee Value Proposition)』のフレームワークです。

スタートアップでは、感情面の訴求価値である「目的意識」に共感した人材が集まってきやすいのに対して、上場企業では「金銭報酬」や「福利厚生」といった契約面の訴求価値が重要視されがちです。

さらに、企業が社員に提供できる価値は「金銭報酬」だけではなく、キャリアアップの機会や働きやすい環境といった「非金銭報酬」も含まれます。

企業の成長に伴い、働く人々の“期待値”に変化が生まれる中で、契約面・経験面・感情面と金銭報酬・非金銭報酬、それぞれの価値をトータルで考える必要が出てくるのです。

企業のフェーズに合わせた人材マネジメントの重要性

自社に今後起こり得る変化をとらえ、それがヒトや組織の観点で経営にどのような影響を与えるのかを言語化するのは決して簡単ではありません。だからこそ、組織の成長に応じたマネジメントを実施する上では、自社の状況をメタ認知することが重要です。

企業のフェーズと、それに合った人材マネジメントを定期的に見直す経営者が増えることで、スタートアップ企業の人材マネジメントのあり方がレベルアップし、日本のスタートアップ業界が優秀人材にとってさらに魅力的になっていくでしょう。

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