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小説投稿サイトを整理する日記⑤短編集『四季狂い』完成
講談社が運営しているNOVEL DAYSに引っ越しを初めて約ひと月半、課題だった短編集が完成しました。
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降魔一郎の『東方異聞録』を先にアップして、その後ひと月くらいかけて、四季の四章、春夏秋冬にそれぞれ3月から2月まで、全12編の短編を手直ししてアップしました。
これはなかなかの貴重な体験でした。比較的僕の作品には季節の情景を盛り込んているものが多く、今回の作業に当たって季節を改めて設定しなおした作品は二つ。秋の章、10月の『嘘つきの来訪~古き良き友』と11月の『パンツを被る男』でした。
『嘘つきの来訪』では、「焼酎のお湯割り」という単語が出てきます。したがって真夏ではないというところ。「登山」という単語から真冬ではないということはニュアンスで感じられるかもしれません。春先か秋というざっくりしたイメージはあったのですが、これを10月としました。
『パンツを被る男』はもともと春の設定でした。しかしこの物語のキーになるのは「トワイライト」と季節外れのサンタコス。春先の夕暮れというのは徐々に昼が長くなっていきますが、秋の夕暮れは突然訪れるイメージが僕にはあります。
サンタコスは10月ならハロウィンがありますが、11月の頭ならかなりフライイング気味だろうということで、11月に設定を変更しました。
僕にとっては短編小説を書くとき、だいたい会話劇か、独白という形のものが多くなります。書きやすいと言ってもいいかもしれません。季節を念頭に入れて書いている場合があります。僕の傾向としては比較的多いかもしれません。しかしそうした設定をまるで必要としない作品もあります。
そうして作品に季節をつけるならいつがいいのかという体験は今までなかったことなので、面白く思いました。
また今回の12作品にはすべて<まえがき>をつけ、そこに表紙をさし絵として入れました。
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八月。
蝉の鳴く声が激しい。
蝉しぐれとはよく言ったものである。
夏に食べたいのは大きくてよく冷えた真っ赤なスイカ。
少女は歌う。
「スイカ、スイカ、真っ赤なスイカ、真っ赤なスイカが食べたいな」
少女は歌う。
「スイカ、スイカ、真っ赤なスイカ、真っ赤なスイカを食べるには」
少女は真っ赤なスイカをどうやって食べたのだろうか。
小説を書くようになってから、ほとんどの作品に表紙絵をつけています。絵を描くことはできませんが、フリーの画像を加工してそれらしくしているだけなのですが、僕にとっては楽しい時間です。
前書きを書くこと自体は「小説家になろう」の機能に「まえがき」、「あとがき」を設置する機能があるのでいくつかの作品でやったことはあったのですが、短編一つ一つに前書きをつけたのは初めでだったので、これもなかなか面白い体験でした。
最後に収録した二月『平成Vamp』に関しては僕の中でも紆余曲折あった作品で、生まれたときは4000文字くらいの短編だったのですが、のちに設定を追加して長編化を試みて挫折している作品です。
今回の短編集に真っ先に入れようと思った作品のひとつで、それはつまり、まだこの物語をきっちり終わらせていなかったからであり、この短編集の最後に収録することで、少しだけ特別な役割を持たすことができました。
もうすぐ春が来る。
春になったら夜桜を撮影しよう。新学期が始まり、ゴールデンウイーク、長雨、熱帯夜、スイカ、満月、二十歳になったら酒が飲める、どこか隠れ家のような店を探してみよう。吸血鬼として迎える初めてのクリスマス、一人暮らしもしてみたい。そしてまた、今日のように二月に雪が降るのはいつのことになるのか。
もしも最初から季節の短編を12編書いてみようなどと考えていたらこれらの作品は生まれてこなかったのだと思う。
それぞれの作品には季節の設定はあるものの、季節に縛られるものでもない。その発想では生まれてこなかった作品たちだ。
書いた時期も動機も筆者の文筆スキルもまばらな作品たちを今、このときに書き直して再編するという体験は、僕という物書きがどういう人間なのか、どんな癖があって、何が得手不得手なのか、登場人物をどのように設定し、舞台をどう整えるのか。それらを客観的に見ることができた。
この経験を経て、次に何をやるか。何ができるのか、それもそれで楽しみである。
やはり引っ越しは面白い。
よかったらぜひ、短編集『四季狂い』を読んでみてくださいね!