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名刺代わりの小説10選
はじめに
100%趣味で書かれたnoteです。
などと、西尾維新氏の「〈物語〉シリーズ」のキャッチフレーズを真似したところで。
今回から三部作で、「名刺代わりの〇〇」という記事を書いていきたいと思います。
もう一度言います。趣味全開です。
名刺代わりの小説10選
①Missing
作:甲田学人
物語は『感染』する。
そして徐々に、現実は『異界』に喰われている。
私の創作意欲の原点にして、あらゆる既読本の頂点に立つ作品。
それがこのMissingです。
何故そこまで言うかというと。
1つ目。民俗学をはじめ、魔術・童話・都市伝説などの知識がふんだんに含まれています。
Missingシリーズでも、「魔王様」と呼ばれる男子高校生が、とてつもない量の知識を語ってくれます。七不思議やおまじないなど、日常のすぐ脇に潜む「ちょっと薄暗い存在」について詳しく知りたいなら、読んで損はありません。
2つ目。恐怖や痛みの表現が、おそろしく恐ろしいです。
背後の隙間から感じる視線だとか。
眼球にガラスの破片を突き刺す感覚だとか。
そういうホラー的場面を、これでもかと緻密に書いてきます。
夜中に一人で読んで震えてください。
②断章のグリム
作:甲田学人
<神の悪夢>は、童話の形をとって浮かび上がる。
こちらも甲田氏の著作です。
が、Missingに比べてグロテスク度がものすごくアップしています。
ハトに目をつつき出されたり。
歯磨きの泡で口の中が溶けたり。
体中から植物の芽が生えてきたり。
それら怪奇現象は全て、『シンデレラ』『人魚姫』『いばら姫』などの童話が、現実世界にあふれ出したもの。
主人公達は<断章>という力を使って、苦しみ恐怖しながらも、それらと戦います。
ホラーやグロ好きだけでなく、いわゆる「異能力バトルもの」が好きな人にもオススメの作品です。
③キノの旅
作:時雨沢恵一
世界は美しくなんかない。
そしてそれ故に、美しい。
旅人キノと、喋るモトラド(いわゆるバイク。空を飛ばないものだけを指す)の、不思議な旅路をめぐる短編集です。
短いものだとたった4ページの話もあるので、忙しい方でも少しずつ読むことができます。
人の気持ちが分かる国。
何でも多数決で決める国。
殺人が合法になっている国。
大きな船でずっと移動する国。
何百という国々が、時にコミカルに、時に皮肉たっぷりに描かれます。
ああ、あとこのシリーズの特徴として。
あとがきはエンターテインメントです。
④怪人二十面相
作:江戸川乱歩
変装の名人・怪人二十面相と、名探偵・明智小五郎の華麗なる推理対決!
①のMissingが私の「創作意欲の原点」なら、こちらは「読書が好きになった原点」です。
出会った当時、まだ小学生だった私には、戦時中の文化や用語など難しいものがありましたが、それでもこの怪人二十面相という存在にものすごく惹きつけられたのです。
お宝を狙い、キザな予告状を送り付ける二十面相。
彼は変装や奇術の名人ですが、血や殺しを好まず、あくまで知恵勝負をモットーに行動します。
そして何度明智探偵に捕まろうとも、懲りずに脱獄して、また懲りずに犯罪をする憎めないところがあるのです。
小林率いる、少年探偵団の活躍にも注目。
大人から子どもまで安心して楽しめる小説です。
⑤姑獲鳥の夏
作:京極夏彦
この世には不思議なことなど何もないのだよ――。
20ヶ月もの間、子を身籠っていることができると思うか?
妖怪によるものとしか思えない事件を、古本屋の店主・京極堂が紐解くミステリー、それがこの「百鬼夜行シリーズ」です。
①のMissingに同じく、一見本筋に関係無いような知識が山ほど出てきますが、それらはもちろん全て繋がっています。アガサ・クリスティの「ミス・マープル」が好きな方にはもってこいかも。
また作者である京極氏のとてつもないこだわりにより、ページ跨ぎや句読点の位置に至るまで、視覚的読みやすさが徹底的に追求されているのも特徴です。
ただし「レンガ本」「鈍器」と言われるほどトンデモナイ分厚さなので、持ち運びには一苦労するかも?
⑥殺人鬼
作:綾辻行人
グロ注意。
幼稚園~小学生くらいの時、母親に「そんなもん読むな!」とガチで怒られた本です。(母の本棚から借りたのに……。)
推理小説というのは、3つの視点から読むことができます。
Who done it → 誰が殺したか
Why done it → 何故殺したか
How done it → どう殺したか
そしてこの『殺人鬼』は、ひたすらHow done it を突き詰めた作品です。
手足を切断する、目玉を抉るはまだ生易しい方。
頭を捻り潰す! 喉に腕を無理矢理突っ込む! 自分の内臓を自分で食べさせる!
何かもうスプラッターすぎて逆に楽しくなってきます。
もちろん、あっと驚く大仕掛けもありますよ。
⑦三毛猫ホームズの推理
作:赤川次郎
猫は喋れないが、人間以上に雄弁である。
中学時代、とにかく大好きだったシリーズです。
中古本屋で月に10冊ずつ買ってました。
タイトルからも分かりますが、このシリーズでの探偵役は「ホームズ」という名の三毛猫です。紅茶を嗜み、アジの干物が好物。
とはいえ彼女が最初から推理力を発揮することは稀です。あくまで人間主体で物語が進み、ここぞという場面でホームズが出てくるのです。水戸黄門や暴れん坊将軍みたいなものだと思ってください。
猫好きにはもちろん、推理小説初心者にも入りやすい世界観ですよ。一巻で完結するので、どこから読んでも楽しめるのが有難いですね。
⑧ダレン・シャン
作:ダレン・シャン
親友の命を救うために、彼がバンパイアと取引した事とは……。
小学生時代、幾度となく読み返したシリーズです。
児童書にあらざる残酷な展開と、それでも運命を切り拓いていく少年・ダレンの勇気。最後まで読めば何故このタイトルなのか、何故作者名と同じなのか、全てが繋がり判明します。
美麗なイラストも見所ですよ。
ちなみに新井隆広氏が手掛けた、コミカライズ版もオススメです。長く広いシリーズを上手くまとめてくれているうえに、世界観を壊さないオリジナル要素も入っていますよ。
⑨遠野物語
著:柳田國男
願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ。
正式には小説というジャンルではありませんが、数々の「物語」が入っているという視点から採用しました。
私に多大な影響を与えたという点でも。
日本民俗学の祖・柳田國男が、岩手県の遠野地方で聞きまとめた説話集です。
神隠しの話。
山に棲む大男の話。
馬と結婚した娘の話。
遠野に限らず、今もなお日本のどこかで語り継がれている不思議な噺が、読む者をうすら寒くさせます。
そして実際にこの本に感銘を受け、はるばる遠野まで旅した私もまた、不思議な体験をするのでした。
それはまた別の機会に。
⑩銀河鉄道の夜
作:宮沢賢治
僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。
きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。
宮沢賢治ならではの、表現の美しさ、鉱物を用いた独特の比喩、切なくどこか自己犠牲的な人間模様が、それこそ宝石箱のように詰め込まれた作品です。
これを読んだ時、私は泣きました。
精神病院に入院している時に出会ったからです。
「ほんとうのさいわい」。
ジョバンニとカムパネルラは、銀河鉄道の中で考えます。
さいわい。幸せ。小さな幸せや一時的な幸せは、我々の近くに普通に転がっているものです。しかしここに「本当の」という枕詞が付くことで、途端にハッと考えさせられる響きが生まれます。
私の「本当の幸い」とは?
あなたの「本当の幸い」とは?
見も知らぬ誰かの「本当の幸い」とは?
読み終えた時、一抹の悲しさ寂しさと、それ以上に「今この人生を大切に生きなければ」という思いが湧き上がる作品です。
おわりに
なんと3,300字にわたって書き連ねてしまいました。
これは趣味だから! 書くからね私! と息巻いていましたが、予想以上に長くなってちょっと申し訳ないような。
でも楽しかったです。
この記事を読んだ人が、10冊のうちどれかを購入するキッカケになれば……なんてことは言いません。そう簡単に人の心を動かす自信なんてないですから。
ただ「名刺」なのです。
私を表す「名刺」を、受け取ってほしかっただけなのです。
おもしろおまけ
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この本……、
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ページがくっ付いてる!!!!!!!!!!
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