見出し画像

不動産関連の環境認証の種類を一覧で紹介

不動産のオーナーや投資家を中心に、SDGsやESG投資の関心が高まっております。メンテルでも、不動産ESGの文脈でご相談を頂ける機会が増えてまいりました。その中で不動産ESGに取り組まれるアセットマネジメント会社さまで取得を検討されている。主要な環境認証を一覧でご紹介します。


不動産における環境認証の種類とは? 

建築物の性能を示す事例として、下表のようなものが挙げられます。不動産ESG投資における主な環境認証は以下の3つに分類されます。

  1. 不動産・ファンドにおける取組を評価する認証

  2. エネルギー性能に特化した認証

  3. エネルギー性能に限らず総合的な環境性能を評価する認証

主要な環境認証

主要な環境認証

不動産・ファンドにおける取組を評価する認証

不動産会社・ファンドにおける取組を評価する認証では、不動産会社・ファンド単位におけるESG取組の評価が行われます。代表的な評価機関や認証機関がこれらの評価基準をもとに認証を行い、不動産やファンドが持続可能性に配慮した取り組みを証明することができます。このような認証を取得することで、投資家や利害関係者に対して、不動産やファンドのESGパフォーマンスや持続可能性への取り組みを示すことができます。代表的な認証として、GRESBが挙げられます。

個別の建築物における取組を評価する認証|エネルギー性能

個別の建築物における取組を評価する認証では、エネルギー性能に特化した認証と、総合的な環境性能を評価する認証の2種類に大別されます。エネルギー性能に特化した代表的な認証として、BELS・ENERGY STARが挙げられます。

個別の建築物における取組を評価する認証|総合的な環境性能

個別の建築物における取組を評価する認証の中で、エネルギー性能に限らず総合的な環境性能を評価する認証として、CASBEE・LEEDが挙げられます。また、総合的な環境性能を評価する認証は、従来のエネルギー性能に主眼を置いた評価から、近年は働きやすさや健康性などへの注目も高まっております。そういった背景から、快適性や健康性を主眼に置いた新たな認証として、WELL・CASBEE-ウェルネスオフィスが出てきました。


環境認証のメリット

ESG投資における企業や建物における取り組みを進める上で、その性能を示すことは建築物の提供側と利用側との間で共通認識を得る上で重要です。オーナーなどの提供側は情報の開示で自らの取り組みを周知することができ、建物の価値を利用側に訴求することもできます。また、テナントなどの利用側ではその情報に基づいて入居先の選定ができるといった活用が考えられます。以下に、不動産ESG投資における「環境認証を取得することのメリット」を記載します。

可視性と透明性の向上

環境認証の取得で、不動産の持続可能性や環境への影響に関する情報が明確になります。投資家や利害関係者は、持続可能性に配慮した不動産プロジェクトに資金を提供することができ、透明性が高まります。

市場価値の向上

環境認証の取得で、不動産ESG投資において持続可能性の向上や市場競争力の強化につながる重要な手段となります。認証所得有無で統計的に賃料の有意性が検証された事例も増えつつあります。

リスク軽減

環境認証の取得で、不動産が持続可能なプラクティスに準拠していることが示されます。これにより、将来的な環境関連リスクや規制リスクを軽減することができます。また、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入などの取り組みにより、エネルギー関連コストの削減も期待できます。

顧客や入居者の引き付け

持続可能性に配慮した不動産は、企業やテナントが好む傾向があります。環境認証を取得することで、顧客や入居者に対して環境に配慮したプロパティを提供していることを示すことができ、需要を引き付けることができます。


不動産ESG投資における環境認証の一覧

BELS

BELSは、建築物の省エネルギー性能の表示制度のことです。2014年に一般社団法人住宅性能評価・表示協会より開始されました。建築物の販売・賃貸を行う事業者は、建築物省エネ法第7条により、建物の省エネ性能を表示することを求められています。国土交通省の定めるガイドラインでは、表示する性能は自己評価と第三者認証の両方が認められており、BELSは第三者認証の例として位置づけられています。

BELSはエネルギー性能のみを評価する制度ですが、他国ではエネルギー消費量の実績値を評価する仕組みがメジャーな一方で、BELSは設計時点での性能が評価されます。BELSの認証物件数は、2024年1月末時点で、非住宅4,561件、住宅506,329件、複合用途32件です。

BELSの基準

ZEBの評価とBELSの評価は同じBEIという指標が用いられています。BELSでは、BEIの値によって星の数で5段階評価が行われ、BEI1.0以下(省エネ基準)で星2、BEI0.8以下(誘導基準)で星3というように、性能が良いほど星の数が増えていきます。ZEBの基準を満たしている場合、BELSの星表示に加え、「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」の表示をすることもできます。

参考:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 建築物省エネルギー性能表示制度について


CASBEE

CASBEEとは、2001年に国土交通省主導のもと開発された、建築物の環境性能を評価する認証です。評価対象は建築物から都市まで幅広く、評価対象に応じて分けられた各評価ツールを総称して「CASBEEファミリー」と呼ばれます。2023年6月末時点、2,324件の認証物件があります。

近年の室内空間の快適性・健康性に対する関心の高まりに対応するため、環境品質Qの評価項目を健康重視の方向に拡張するCASBEE-ウェルネスオフィスの評価認証が2019年から開始されました。従来のCASBEE-建築と合わせて使用することで、建築物の環境性能をより広範に評価することができるようになります。

CASBEEの基準

CASBEEはLEEDやBREEAMといった海外の制度と同様に、エネルギー性能だけでなく資源循環や室内環境等も含めた総合的な環境性能を評価するシステムですが、LEEDをはじめとする海外の制度が、環境負荷低減に主眼を置きつつ評価項目の一部として環境品質向上を扱っているのに対し、CASBEEは環境負荷(Load)と環境品質Q(Quality)を2つの評価軸として明確に分けて扱っている点が特徴的です。Lを分母、Qを分子に取ったBEE(環境性能効率)という指標の値の大きさに応じて、Cランク(劣っている)から、B-、B+、A、S(大変優れている)の5段階でランク分けされます。

参考)一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 CASBEE


DBJ Green Building

DBJ Green Building認証とは、環境・社会への配慮がなされた不動産(Green Building)を支援するために、2011年4月に日本政策投資銀行(DBJ)が創設した認証制度です。対象物件の環境性能に加えて、防災やコミュニティへの配慮等を含む様々なステークホルダーへの対応を含めた総合的な評価に基づき、社会・経済に求められる不動産を評価・認証し、その取り組みを支援しています。平成26年2月より、日本不動産研究所(JREI)との間で業務連携を深化し、共同認証体制を構築することでDBJ Green Building認証の一層の普及に加え、認証制度の不動産価値への反映を進めて参ります。DBJ Green Buildingの認証物件数は、2024年2月末時点で、認証物件数2,150件、認証事業者数635件、申込物件数3,147件です。

DBJ Green Buildingの基準

DBJ Green Buildingの基準は、建物のエネルギー性能や環境性能を総合的に評価し、持続可能性に配慮した不動産投資を促進することを目指しています。認証は「環境・社会への配慮」を十分行っている不動産に対し、★の数で5段階評価されます。

  1. エネルギー効率:建物のエネルギー効率を向上させるための対策が含まれます。エネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの活用などが評価されます。

  2. 環境負荷の削減:建物の環境負荷を軽減するための取り組みが評価されます。具体的には、CO2排出量の削減や廃棄物の削減などが含まれます。

  3. 資源の効率的な利用:建材や資材の選定や使用方法が効率的であるかどうかが評価されます。資源の再利用やリサイクルに関する取り組みも考慮されます。

  4. 快適性と健康性:建物内の環境が居住者や利用者の快適性と健康性を確保するように設計されているかどうかが評価されます。室内の空気質や照明、温度調節などが含まれます。

  5. 地域貢献:建物が地域社会に対してどのような貢献をするかが評価されます。地域の景観や環境に配慮したデザイン、地域の雇用創出などが考慮されます。

  6. 持続可能な経営体制:建物の運営や管理が持続可能な経営体制に基づいているかどうかが評価されます。適切な管理計画や定期的な点検・メンテナンスが含まれます。

参考)一般財団法人 日本不動産研究所 DBJ Green Buildingとは


LEED

LEEDとは、米国の非営利団体USGBCによって開発された、建築物の総合的な環境性能を評価するシステムのことです。上述のCASBEEと同様に、評価対象は建築物から都市まで幅広く、評価対象に応じて5種類の異なる認証カテゴリーが用意されています。1998年のパイロット版の開発以降、何度かのバージョンアップが行われており、2020年現在はv4が最新版となっています。CASBEEは日本国内の建築物のみを評価対象としていますが、LEEDは世界中で使用することが可能です。2020年7月現在、全世界で86,081件、日本国内に149件の認証物件があります。

LEEDの基準

認証カテゴリーごとにクレジットと呼ばれる評価項目が設定されており、クレジットの評価基準を満たすことで得られるポイントの合計値によって、CERTIFIED(標準認証)、SILVER、GOLD、PLATINUMの4段階で評価が行われます。

認証カテゴリーごとにクレジットと呼ばれる評価項目が設定されており、クレジットの評価基準を満たすことで得られるポイントの合計値によって、CERTIFIED(標準認証)、SILVER、GOLD、PLATINUMの4段階で評価が行われます。


WELL

WELLとは、公益企業であるIWBIによって創設された、健康・快適性に重点を置いた環境認証制度のことです。 CASBEEやLEEDなどの従来の環境認証制度は、省エネルギー性能を重視して資源や周辺環境といった環境性能を総合的に評価する指標ですが、WELLの評価項目は人の健康・快適性に焦点を当てたものです。特にWELLの場合は、環境工学だけでなく医学的観点からも検証されている点が特徴です。建築物のエネルギー消費量を削減する取組は快適で過ごしやすい室内環境の実現にも寄与するため、ZEBを考える際にもWELLのような健康・快適性の観点も重要と考えられます。2020年8月6日現在、世界中で4,500件以上のプロジェクトが登録されており、日本でも42件が登録済み、うち7件が認証を受けています。

WELLの基準

LEEDと同様にWELLもバージョンアップが進められており、2018年5月に公開されたv2 Pilot版では、WELLの評価項目は空気や水といった10のコンセプトから構成されます。各コンセプトはFeatureという複数の評価項目に分かれており、必須項目をすべて満たしたうえで加点項目を一定以上満たすことで、その点数に応じてシルバー、ゴールド、プラチナの3段階で評価が行われます。点数はFeatureの具体的要件であるPartを満たした数によって計算されます。


GRESB

GRESBとは、欧州の主要年金グループを中心に2009年に創設された、不動産セクターの企業のESG配慮を評価する制度のことです。BELSやCASBEEなどの他の認証制度は個々の建築物や都市を評価対象としますが、GRESBは不動産会社・ファンドを評価対象とします。評価対象となる企業・ファンドの種類に応じて、以下の3つの評価指標を使い分けられます。

  • GRESBリアルエステイト

  • GRESBインフラストラクチャー

  • GRESBリアルエステイトデット

「GRESBリアルエステイト」が、不動産会社・ファンドを対象とした場合に最も広く使われます。GRESBリアルエステイトの参加者は2022年10月時点においては、全世界で1,820団体で、国内で122団体が参加しています。日本の内訳は、J-REITが多く57社で、その参加率は時価総額ベースでJ-REIT市場の99.3%に達しています。

GRESBの基準

企業のESG配慮を評価する枠組みは様々なものが存在しますが、不動産セクターに特化したものはGRESBリアルエステイトがメジャーです。GRESBリアルエステイトの評価項目は主に「マネジメントと方針」「実行と計測」の2軸に分類され、両軸ともに50%以上の評価を得るとグリーンスターの称号を獲得できます。また、総合スコアのグローバル順位によって、上位20%が5スター、次の20%が4スターというような相対評価も行われます。

参考)一般社団法人グリーンビルディングジャパン



▼ メンテル技術ブログ

▼ メンテル会社サイト


いいなと思ったら応援しよう!