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「発達障害」という曖昧な用語と、統一性のない診断と猫も杓子も。
猫も杓子も発達障害である。生きづらさ、個性的、変り者、なんでもかんでも発達障害という言葉で片づけようとすべきではない。発達障害というラベルが貼られることで、かえって実態は曖昧模糊としたものになり、対処法もないかのように思えてしまうことがある。
発達障害という言葉の使い方・診断に関しての疑問を表明する識者は少なくないようだ。私も情報発信者の一人として注意しなければならないと感じた。
ひとまとめにできない発達障害
発達障害には、3つの個別の障害が含まれる。ASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥多動障害)・LD(学習障害)だ。この三者は、それぞれ、原因も症状も対処法も全く異なるものだが、現状は、まとめて発達障害という言葉に括られている。
このあいまいさに乗じて、発達障害という言葉が独り歩きするようになる。だんだん、個性的・変り者・人間関係になじめない人も発達障害と呼ばれるようになってきた現状がある。
「自閉症・LD・ADHDは、三者の状態が異なり、それぞれに適切な対応をする必要があります。「発達障害」という名でひとまとめにして対応できるといったものではありません。」
「自閉症でもない、LDでもない、ADHDでもない人たち、つまり、個性的と呼ばれる人々を巻き込んで、発達障害用語が広まっている現状を見過ごすことはできません。」(P6)
芸能人の発達障害カミングアウトも増えている。発達障害というキーワードが一般の人に認知されることで、問題を抱える子供たちが早い段階から発達障害と診断されることは好ましいことかもしれない。
その一方で、芸能人や有名人たちが、こぞって発達障害という言葉を使うことで「発達障害は個性に過ぎない、なんとかやっていけるものなんでしょう?」という誤解が広がるのも怖いことだという。臨床で発達障害と向き合っている医師たちは「本物」のADHD・LD・ASDには治療的介入が必須であることを知っているからだ。
曖昧な診断
大人になってから発達障害という診断をつけるのは簡単ではない。発達障害の専門医であれば、こぞってそのことを認めるだろう。上記の本の中では、専門家のこんな言葉が出てくる。
「発達障害と呼ばれるものは、そんなにあっさりと言い切れるものではない、というのが実情ではないだろうか。少なくとも筆者は発達障害をクリアーに語れる自信はない。」(用語発達障害批判 玉永公子 論創社 P17)
本物の発達障害は幼少期から続くものだ。大人になってから人間関係がうまくいかなくなったなどの障害?は含まれない。しかし、発達障害という言葉が広まったこともあり「私も発達障害ではないか」「お前は発達障害だ」と、発達障害という概念が、あまりにも広くとらえられていることに問題があるのだ。
発達障害を専門に診ている田中康夫氏は診断のさいに「控えめに診断すれば」ということを忘れないという。専門医でも、それほど診断は難しい。精神科医の岩波明氏も、発達障害に関しての誤診問題に言及している。
そもそも、日本で発達障害といえば、自閉症しかなかった時代が長い。自閉症専門の医師たちが、今は発達障害専門医だが、どうしても診断はASD(自閉症スペクトラム)に偏るという。本当はADHDなのに、ASDと診断される人が多いという。(表面上の行動は、どちらも似たような問題を起こすことが少なくない)
専門家でさえ、発達障害の診断には慎重であることを忘れないようにしなければならない。
曖昧な語彙で語らないこと
「発達障害という用語にくるめて、大雑把に、曖昧に子ども把握をすることは止めたいものです。四つを統括せず、「自閉症スペクトラム障害」「LD」「ADHD」「個性」とそれぞれの名で呼ぶことを提案します。」(用語発達障害批判 玉永公子 論創社 P176)
発達障害という言葉の響きはキャッチーなので、今や発達障害を前面に押し出した本などが乱発されている。読者として読み取っていく時には注意しなければならない。このnoteで私が発言しているのはADHD・個性というギリギリのラインのことばかりだけれど、それを「発達障害」と括らないように気を付けたい。
言葉の使い方に関して、改めて考えさせられた。
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