ミスを減らすチェックリストの力。「アナタはなぜチェックリストを使わないのか」アトゥール ガワンデ
ADHDは不注意でミスばかりする。私は、ある職場では「ミス〇〇」という名誉称号をいただいていたこともある。自分では気づかない失敗が多く、あとで指摘されて「またやってしまった」と青くなるのだ。その場では気づかないのがつらい。
そこで、大切なのが、自分は必ずミスをするという前提で仕事を組み立てることだ。ミスを減らすために役立つのが「チェックリスト」だ。仕事の重要な局面では、自分の意志に関わらずチェックリストを読み上げるというシンプルなルールが役に立つ。
私たちが経験する仕事のほとんどは「あ~ごめんなさい」で済むミスだと思うけど、時には決して許されないミスもある。外科医師の手術や飛行機のパイロットなどは、まさに、ミスが決して許されない仕事ではないか。
重責を担う人たちのエラーを極限まで減らしたチェックリストの力に関する興味深い本がある。私は、引っ越しで、この本を失くし、もう一冊買いなおした。それくらい、価値のある本だと思っている。
医師のミスを減らす
決して失敗してはいけない仕事もある。その代表格が医療職だ。特に外科医などはミスをすることは、患者の命を失うことに直結する。
私は多少、医者や医療関係者との接点がある仕事をしていたことがある。彼らが求められる仕事量は尋常ではない。朝も昼も無く、患者を見続けたり、一分一秒を争うスケジュールの中で手術を行ったり・・とても常人では務まらない。医師になるためには、頭脳もそうだけど、体力、集中力も常人の何十倍も無ければ務まらないと思えるほどだった。
しかも、彼らの仕事はミスが許されない(実際には生じるが、患者からは容赦されない)。医療訴訟は毎年増え続けている。はた目から見ていれば、医師にそれを求めるのは酷だろうなと思うような患者の要求でも、実際に自分が患者になってみると「間違えて薬を投与してしまった・・ごめんね」ですまないのはよく分かる。
複雑であり、決してミスが許されない仕事で、いかにしてミスを減らすのか。ヒューマンエラー(人間のミス)をなんとか防ぐこと。複雑化していく医療現場で、それを防ぐために、チェックリストを導入したガワンデ博士のたどった道筋を、正確にたどることで・・・医療現場だけではなく、仕事にチェックリストがいかに有用かを痛いほどに気づかせられる。
パイロットのチェックリスト
航空業界(パイロット)建設業界・投資業界のエラーの少なさの秘密はチェックリストにある。それを医療へ応用していく過程が興味深い。
パイロットがミスをすることなど考えずに、私たちは安心して飛行機に乗っている。ビルが崩れ落ちるなんて思わずに、今日も安心してオフィスに通う。そこには何かがあるはずだ。何事にも理由がある。ミスがあるのにも理由があるし、ミスが無い(安全)にも理由がある。
ガワンデ博士は、そこにミスを減らすチェックリストの力を見るのだ。
パイロットはチェックリストの使い方をたたきこまれる。事故が発生したときにパイロットが頼るのは、己の野生の勘や経験値ではなく、いつもチェックリストだ。そのように教育されているのだ。徹底して、人間の感覚より、チェックリストを活用するように叩き込まれている。
余計な「感情」は不要だ。とにかく、手順を一個ずつ・・確認し実行していく。それが、一番確かな方法だから。
「ハドソン川の奇跡」は、機長がいかに素晴らしかったかということだけで評価されがちなのだけど、実はそこにチェックリストという素晴らしい道具があったことが紹介されている。
もちろん、この奇跡的な救出劇に・・一人の人の英断、能力が寄与したことは間違いないのだけれど、航空業界の長年のチェックリストの精査と改善、この繰り返しがあったことは語り継がれなければならない。
チェックリストはミスを減らす
多くの人がチェックリストを使うことを嫌がる。正直にいえば、著者でさえ、自分にはチェックリストは不要だと思っていたという。各業界での目覚ましい成果を目にし、なおかつ、医療業界にチェックリストを持ち込んでおきながら。
ところが、チェックリストによって致命的な事故になりかねない手術ミスを回避できたことを、著書の中で正直に告白している。だれも完全ではない、だからこそ、感情のままにではなく・・。一度立ち止まってチェックリストを確認することが大切なのだ。
具体的なノウハウや方法は一切載っていないけれど、心を揺さぶるノンフィクションの力で、モチベーションが高まる。生活の中の落とし込みは、まだまだ不十分なのだけれど、ミスが多くなってきた時には、ミスをする直前の作業を洗い出して、チェックリストを作る(もしくは確認する仕組み)を作ることを必死で続けている。
ADHD特性が非常に強くても、なんとか社会でやってこれているのは、チェックリストの力が大きいのではないかと思う。
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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq)