ADHDの衝動性と人間関係がキモ(書評)わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます。司馬 理英子
私はADHD特性のある男子(中年)だけれど、女性のADHDは、やはり生きづらいだろうなと思うことが多い。ADHDを自覚してから、周囲には、かなりのADHDの友達ができた。ADHDガールもたくさんいる。
女性のADHDは本来のかわいらしい性格とは裏腹に、その衝動性や不注意、多動性などが「信じられないほどだらしなく」見えたり「すぐドタキャンして信頼できない」と誤解されることが多い。結果、女子仲間から嫌われたり、いじめられたり、男性にドン引きされることがある。
女性に求められる社会像みたいなものと、ADHDガールの性質は真反対なので、生きづらいのは当然のことだ。それでも、人間は中身が大事だ。私は、愛されているADHDガールをいくらでも知っている。ちゃんと中身を知ってもらえば、ADHDガールも生きていける。
ただ、知り合う前にADHDの特性ゆえに、人間関係を破綻させてはいけない。この本は、女性のADHDの人間関係に的を絞った本で、恋愛や結婚や職場での人間関係など、対処法まで突っ込んでいるので、当事者には大変役立つのではないか。男性だけどADHD書評家?として目を通してみた。
ADHDの衝動性を抑える
人間関係ということに絞って考えると、ADHDにとって問題になりがちなのは「衝動性」だ。少し待つことができれば、一瞬でも間をとることができれば、大きな問題には発展しなかったのに、、悔やむようなことを、たくさん経験しているのが、ADHDガールだ。
あるADHD本を読んだ時に「とにかく10秒待つ」というADHDハックが書かれていた。感情的になった時は、待つだけで、ほとんどの問題が解決する(というより、問題を引き起こさないですむ)のだ。この本の中で面白いと思ったのが、視覚的(イメージ)に訴えて、自分を冷静にさせる・待つことができるようにするノウハウだ。
頭の中の「ヤンチャ君」
この本の中では、一貫して、ADHDガールは、頭の中に「ヤンチャ君」という子供がいるかのようだという例えが用いられている。そのヤンチャ君がハンドルを握っている時は問題が生じがちだ。とにかく、子供なので、後先考えずに行動してしまうからだ。衝動的なのが子供じゃないか。
ADHDガールは、いつも、このイメージを頭に描くとよい。
出典:わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます。 2018/6/14 司馬 理英子 (著) 東洋館出版社
例えば、感情的になって、ワ~っと彼に当たりそうになってしまった時は、次の3つのステップを思い起こすと良いという。
1:まず止まる(パニックになっていることに気づく)
2:ヤンチャ君をイメージする
3:コーチを呼んでくる
単純そうだけれども、効果的だ。
一瞬でも、自分と感情を切り離して考えられるようになるからだ。自分が怒っているのではなく、自分の中の「ヤンチャ君」がハンドルを握ってしまっていると思えば、コーチ役(理性的な自分)を連れてきて、話し合ってみるということができる。
感情的な反応を乗り越えるためには、自分の感情に自分が埋没してしまわないことが大事だ。自分の中の理性的な部分を引っ張り出すことができれば、確実に衝動性は抑えられる。そして、これは技術なのだ。
人間関係さえ良ければ何とかなる
この本が、ADHDの人間関係に主な焦点を当てているのは非常にポイントが高い。ADHDの不注意や多動性など、どうしようもない脳の特性は周りに迷惑をかけるが、人間関係さえうまくやれば、ADHDは「障害」にならない可能性が高い。周りの人に快く助けてもらえるADHDは少なからずいる。できないことが多い分、コミュニケーション能力が発達している人が多い印象すらある。
しかし、そのADHDの人間関係を破壊するのが「衝動性」という特徴だ。ADHDは衝動性ゆえに、思いついたことをやってしまったり、言ってしまったり、後になって悔やむようなことを繰り返す。衝動性が人間関係を脅かす。だとすれば、何とかして、衝動性を操るスキルを身に着ければ、ADHDは社会でやっていけるのではないか。
最低限のスキルに絞って書かれている(そういう印象がある)本書は実践的なのだ。多くの発達障害本では、対人関係の問題は、ASDの特徴(空気が読めない、コミュ障)に焦点が当てられすぎていて、ADHDのコミュニケーションにぴったり当てはまるものではない。ADHDはどちらかというと、読みすぎるくらい空気を読めるのだ。
その点、衝動性とその対処法に焦点を当てた非常に実践的なADHD本として、他にはないと感じた。ADHDガールとは銘打っているものの、ADHDの衝動性ゆえに人間関係にギクシャクを感じているADHD男子にもおすすめだ。
さすが、のび太・ジャイアン症候群という言葉で、ADHDを世に広めた司馬氏だなぁと!感服した。
この本も読んでみたい。
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