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仕事に熱意と楽しさはあるか(書評)ツイッターで学んだいちばん大切なこと ビズ・ストーン
暴露話も、成功本も、どの視点から語るかでだいぶ印象がことなるものだ。Twitterを作り上げたのは、エヴァン・ウィリアムズ、ビズ・ストーン、ジャック・ドーシー、3人なのはよく知られている。しかし、すでにTwtter社を離れているビズ・ストーンを主役に見た裏話はなかなかないので、興味深い本だった。
(この本を読んだのは5年ほど前、以前の書評からの転載)
Twitter社の内紛や代表者の交代劇は、どこからでも入手できる情報(ゴシップ)だが、この本は、Twitterの成功の理由・根幹がよく分かるという意味で面白い本だ。そして、ビズ・ストーンの破天荒ながら魅力的な特性が光る。
もちろん、ビズ・ストーンだけではなく、複数の人が関わってできあがってきたひとつのウェブサービス、その成り立ちさえ、Twitterそのもののように、自然に、偶発的に、気がつくと巨大に「拡散」してきたといえるのかもしれない。
Twitterが生まれるまでのいきさつ
彼らの最初のスタートアップである「ザンガ」は失敗し、負債を抱えていた。しかし、彼は一度や二度の失敗でくじけるようなタイプではない。彼は、実家の地下室を事務所に「ジーニアスラボ」という会社を作り、ブログでは成功者を装いながらフォロワーを増やしていく。
普通は、この辺で、本来の自分との剥離が大きくなり苦しくなったりするものだけれど、彼の場合は、現実がブログに引きづられて大きく変わっていくことになる。その頃、ブロガー(現在はグーグルに買収されたブログサービス)の運営者、エヴァンと知り合い、彼は積極的なコンタクトをとり、結局、グーグルに雇われるところまで上り詰めた。
コミュニケーション能力・ソーシャルスキルが高いのが、ビズ・ストーンの強みだ。 その後、エヴァンがグーグルを退社し、オデオというポッドキャストのようなウェブサービスを始める会社を立ち上げるんだけど、ビズもそのスタートアップに加わることになる。
熱意が前に進む力
オデオが軌道に乗り始めたある日の出来事を、ビズ・ストーンはこう語っている。
「君が描いた構想を実行にうつせば、俺達はポットキャスティング王になれる」ポットキャスティング王、のところに力を込めて、僕は言った。「おお、そんなによかったか?」エヴァンは嬉しそうだった。「うん。でも、1つ聞きたいことがある」僕は言った。「なんだ?」「エヴァンはポットキャスティング王になりたいか?」僕はそう尋ねた。自分自身にもずっとなげかけていた疑問だった。エヴァンはウイスキーを1口飲み、グラス置くと、笑って言った。「いや、ポットキャスティング王になりたいとは全く思っていない」「俺もなんだ」僕は言った。
自分たちが今言ったことの重みを、僕はわかっていた。自分たち自身が熱意を持てない事を、どうしてできるだろう?同時に、もやもやしていた気持ちをはっきりさせたことで、僕には高揚感もあった。そう、熱意を感じられなければ、先へは進めないのだ。(P65-66)
このタイミングで決断をしていなければ、Twitterは生まれなかったのだと思うと興味深い一シーンだ。 「最終的に、どうなりたいのか?」これは忘れてはならない視点ではないか。一生懸命に成功に向かってひた走っていても、気がつくと、ゴールは自分の思うところとは大きく異なってしまう。ビジネスをしていると陥りがちな罠。
ビズにとっては、それは許容できることではなかった。その点、自分に正直であった。(後に分かることだが、アップルがポッドキャスト事業に大きく乗り出すタイミングでもあったため、そのままオデオを続けてもおそらく撤退に追い込まれていたはず。だからこそ「熱意」につき動かされたビズの決定は、野生の直感だったのかもしれない。)
多くの投資を受けていた「オデオ」は、たいへん不安定な状態におかれることになる。しかし、この不安定さがなければ、今、世界を動かすほどの成長を遂げた「Twitter」は生まれなかったはず。物事が動く時とか、人生の転機になるときとか、新しいものを生み出すときってのは「安定期」というより「不安定」なものだと思っておくと良いかもしれない。
Twitterはこれからも多くの試練に見舞われるのだが、この「熱意」がなければ、それを突破することはできなかったはず。どんな仕事にも、苦しい局面があるが、それでも続けられるかどうかは「熱意」があるかどうかにかかっている。だからこそ、自分の「熱意」を無視せず、ある意味では自分に正直に進路を定める必要があるのだ。
私も本当に「熱」をこめて携われる仕事を今できているか、自分を振り返ることができた。まあ、生きていかねばならないから、甘いことは言っていられないけど、この辺は永遠の葛藤だなぁ。
(ビズは「熱意」と「楽しさ」を貫いて、何度も莫大の借金を抱えている、それが良いのか悪いのかは別として・・・w)
Twitterは楽しかった
Twitterには不思議な魅力がある。一言で言うと「楽しさ」だ。ほかのSNSにはなかったような、「楽しさ」があり、いろいろなSNSが台頭してくるなかでも、Twitterは独自の何かがあり、追随を許さない。ビズ自身、Twitterがまだ黎明期の頃に、このスタートアップの成功を確信した、出来事を述べている。
「この、ポットキャスティングでは感じたことのないわくわくするような気持ちは、Twitterを作ってる間ずっと僕の中にあったが、中でもいちばん鮮明に覚えてる一日がある。・・・
(自分が仕事中に休暇中のエヴァンのツィートを見て)今の自分とエヴァンの状況があまりに違っていて、ぼくは思わず笑い出してしまった。・・この時、僕はただおかしくて笑っただけではなかった。気がついたのだ。これまでのスタートアップが失敗して、Twitterが軌道に乗ろうとしてる理由に。
Twitterは楽しかった。・・・この日のことが特に記憶に残っているのは、この時、思い入れを持つことの重要性に気づいたからだ。心の中で、これはやってみたいと思ってることがあるとする。どうしてなのか、はっきりわからなくても構わない。うまくいくと保証はできないが、心からこれにかけたいという思い入れがなければ、失敗に終わるのは確実だ。この思い入れが、難しい挑戦をやり抜くために欠かせない要素になる。(P83-84)
まだまだ、現実的にはTwitterは過小評価されている時期に、ビズには確信が芽生えている。そのサービスの持つ「楽しさ」に気がついたからだ。自分が関わっているサービスだと、ユーザー目線でどうか?を考えてしまうものですが、自分自身がユーザとして楽しめているかどうかに、勝機があったのだ。
結局のところ、面白くないこと、楽しくないことは続かない。作り手の自分が楽しいと思えること、同時にユーザーとしての自分が楽しいと思えることを追求しなくてはならない。続かなければ、どんなものも、最終的に成功することはない。
まとめ
Twitterがここまで大きなサービスに成長した理由は、一言では言えないほど、たくさんの要素が関わっている。でも、その根幹には「熱意」と「楽しさ」があったのだと読むことができた。今は、ビズも、Twitterを辞めているけど、今でもTwitterは元気だ。
Twitterのスタートアップ成功談から学べることは多い!翻訳は平易でたいへんよみやすく、ビズの茶目っ気とか、時折、顔を見せる自分の思いを貫く強い心を学べる、おすすめの本だ。
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