肉食が人類を滅ぼす!2030未来への分岐点 (2)「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」
高タンパク食(MEC)を支持する立場の私としては、まるで心臓に釘を刺されるように辛い番組だった。先進国の異常な肉食により世界の飢餓が加速している現状を全く知らなかった。そして、この食料システムの不均衡が温暖化に直結している。2030年までに、大きな矛盾をはらむ食料システムを改善しなければ地球は滅亡に向かうだろう。
けっこうな衝撃を受けたので、翌日にスーパーで肉を買うのをためらってしまった。売場に並ぶ大量の商品(肉)を、今までとは全く違う目線で見ることができた。だからと言って、食スタイルを変えるのは簡単ではないだろうけれど、まずは事実を直視することから始めなければ。
矛盾を抱えた食料システム
現在、世界の飢餓人口は8億人だ。コロナ禍の中で、飢餓人口は上昇している。コロナは、矛盾を抱えた食料システムの脆弱さをついているのだ。しかし、恐ろしいことに裕福な人(日本を含む先進国)はこの現状に気づいていない。残念なことに、私もこの番組を見るまで知らないことが多すぎた。
飢えに苦しむ人が多くいる一方で、先進国では大量の食材が廃棄されている。世界で生産される3分の1が廃棄されている。特に日本は世界一の飽食だ。食品ロスは1年間で612万トン。国連が飢餓に苦しむ国に支援を行う1.5倍の量が毎年捨てられている。
特に先進国の肉食が世界的な飢餓を加速させている。
肉食が人類を滅ぼす
この番組を見るまで肉食と飢餓の関係が、まるで分らなかった。しかし、全体像が見えてくるにつれて、悪寒を感じた。実は世界で生産される穀物の量は、平均すると全世界の人を養うに十分な量なのだ(26.7億トン・1人あたり2348kcal)。しかし、穀物は均等に配分されているわけではない。
豊かな国の異常な食欲を満たすため、世界の穀物の3分の1が、牛や豚の餌に回されてしまっているのだ。アメリカの牧場周辺の土地では、大量の牛肉を生産するために、餌のトウモロコシを作る畑が必要になっている。
トウモロコシを生産するためには大量の水が必要だ。1キロの牛肉を生産するのに、風呂77杯分の水が必要になる。現在、トウモロコシ畑を維持するための水不足が問題になっている。あと10年も経てば、地下水は枯渇する。
2050年には、世界の7割の水源が枯渇すると言われている。人類は今になって地球の資源が有限であることに気づき始めている。なんてこった。温暖化の原因になっている温室効果ガスの4分の1は、世界の矛盾を抱えた食料システムが原因になっている。「脱炭素」を進めても、食料システムの是正に手をつけなければ、人類に未来はない。
フードショックの恐怖
今後、気候変動や水の不足問題が、いよいよ、誰の目にも明らかになる時がくる。そこで生じるシナリオが「フードショック」だ。各国で輸出停止が連鎖し、それぞれの国が自身の国での食料をキープしようとする。こういう時に弱いのは、食料自給率の低い国だ。そして、食糧危機が起きると暴動が起こり、社会は不安定になる。
すでにフードショックが顕在化している国がある。食料自給率が40%のレバノンだ。レバノンでは2年前に激しいインフレが生じて、食品が以前の3倍の値段になった。そして去年の食料備蓄庫の爆発により、食料の価格の高騰に歯止めが効かなくなった。庶民は十分に食事を手に入れることができなくなり、街中はデモや暴動が頻発しているのだ。
日本で食糧危機が起こる可能性は大いにある。日本の食料自給率は37%なんだから・・・。
今はお金を出せば外国から食料を買える気になっているが、地球の資源が枯渇して、食料そのものが枯渇した時にはお金は役に立たない。各国は輸出を停止するに決まっている。
持続可能な世界への変化
食料システムそのものを変えなければならない。EATフォーラムが提唱している現在の人類にとっての理想の食事がある。「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」と言われている。
1日の食事を、ひとつの皿に載せてみよう。半分は野菜だ。そして肉は牛・豚なら98g・鶏肉なら203gまで。これは、先進国では7~8割肉食を減らすことを意味する。不足するタンパク質はナッツで補う。今から、一人一人が、こんな食生活に変えることができれば・・・というものの、自発的に日本人が、こんな食事を摂るだろうか。
日本人というか、私がこの情報を知ったからといって、食事スタイルを変えられるだろうか。正直なところ難しい。もちろん、人類は地球に存続することをあきらめていないので、人口肉の開発や、食品ロスを減らすこと、持続可能な方法で農地を耕すことなどが、同時に行われている。ただ、どの方法も、根本的な解決策になっていないように思えた。
国連は食糧システムを変革し、2030年までに飢餓人口をゼロにしたいと目標を持っている。2030年が人類にとって、地球に住み続けられるかどうかの瀬戸際なのだ。一番の問題は、それだけの危機意識を共有できていない世界の現状ではないだろうか。
温暖化をテーマにした第一話(地球は勝負の10年に入った!【NHKスペシャル】2030未来への分岐点(1)「暴走する温暖化“脱炭素”への挑戦」)も、かなり良かったが、個人的には今回の番組のパンチ力は大きかった。ずいぶん前に見終わっていたのだが、なかなか記事にできなかった。それくらいショックだった。
幸いNHKオンデマンドでは、すぐ見られなくなる番組ではないようだから、登録している人は見てほしい。第3回はプラスチック製品について扱われるらしい。テーマ的にはあまり興味はなかったが、このシリーズは全部見ることにしようと思っている。