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「辛い過去やトラウマを未来の力に」心的外傷後成長(PTG)
こんにちは。
メンタルウェルネスあおぞらです。
人生には、時に私たちを大きく揺さぶるような出来事が訪れることがあります。それは、事故や災害、病気、愛する人との別れ、職場での挫折など、私たちの心に深い痛みを刻む「トラウマ」と呼ばれる経験かもしれません。
そんな辛い経験に直面すると、私たちは立ち上がるのが難しく感じることもあります。しかし、これまでの心理学研究からわかっているのは、深い心の傷から学び、それを力に変えて前に進むことも可能だということです。それが「心的外傷後成長(PTG)」です。
先日、【傷ついた心から学ぶ成長(心的外傷後成長)】をテーマに講座を行いました。今日はその内容の一部を書きたいと思います。
心的外傷後成長(PTG)とは?
PTG(PosttraumaticGrowth;⼼的外傷後成⻑)は、「トラウマティック」な
出来事、すなわち⼼的外傷をもたらすような⾮常につらく苦しい出来事をきっかけとした⼈間としてのこころの成⻑を指します(Tedeschi&Calhoun,1996)
例えば、大きな災害を経験した人が「命の大切さ」に気づき、日々の小さな喜びに感謝するようになる。また、人生の大きな挫折を経た人が「本当に大切なもの」を見つけ、それに向かって進み始める。これらはPTGの一例です。
ただし、すべての人がPTGを経験するわけではありません。トラウマの経験は人それぞれであり、それに対する反応も異なります。それでも、知っておきたいのは、辛い経験が「必ずしも負の結果だけをもたらすわけではない」ということです。
心的外傷後成長がもたらす5つの変化
PTG(心的外傷後成長)がもたらす変化は、大きく分けて次の5つの側面で表れることが知られています。
① 人間としての強さ
深い心の傷を経験することで、自分の中に「思いがけない強さ」があることに気づくことがあります。これは、困難を乗り越えることで得られる、自己効力感や自信といったものです。
例:大病を乗り越えた後、「自分にはこの試練を乗り越えられる力があった」と気づき、その経験が次の困難への挑戦を支える力になります。
② 他者との関係性
トラウマ体験を通じて、人と人とのつながりの大切さに気づくことがあります。他者の存在が自分を支え、成長の土台となることを実感するのです。
例:自然災害を経験した人が、地域の人々と助け合いながら復興に取り組む中で、「人は一人では生きていけない」という気づきを得て、より良い人間関係を築く努力を始めることがあります。
③ 新たな可能性
辛い出来事をきっかけに、自分の中にある新たな側面や、これまで気づかなかった可能性に目を向けるようになることがあります。
例:挫折を経験した後、それまでの仕事を見直し、自分が本当にやりたかったことに挑戦し、新たなキャリアを築く人もいます。例えば、企業で働いていた人が、挫折をきっかけに福祉の道へ進むなどです。
④ 人生に関する感謝
大きな喪失や苦難を経験した人が、「人生の一瞬一瞬がいかに貴重か」に気づき、日々を感謝の気持ちで過ごすようになることがあります。
例:大事故から生還した人が、「歩けること、食事を楽しめることがどれだけ幸せか」に気づき、日常の小さな幸せを大切にするようになります。
⑤ 精神的・スピリチュアルな変容
辛い経験は、私たちの人生の意味や存在意義について深く考えるきっかけを与えてくれます。これにより、自己の精神的な成長やスピリチュアルな変化が起こることがあります。
例:喪失や困難を経験した人が、「自分にはこの経験を他の人に役立てる使命がある」と感じ、ボランティア活動や支援活動に積極的になることがあります。
成長のために重要な「意味の問い直し」
PTGを経験した多くの人が共通して行うのは、「出来事の意味を問い直す」という作業です。辛い出来事そのものは変えられませんが、「その出来事にどのような意味を見出すか」は私たち次第です。
例えば、「辛い経験があったからこそ、自分の価値観が明確になった」「あの時助けてくれた人々の優しさを知ることができた」など、出来事の中に「自分なりの意味」を見つけることで、未来を創る力を得ることができます。
トラウマを成長へ変えることができるのか?
このような成長の変化は誰でも起こるわけではありません。そしてこのような変化を起こさなければいけないこともありません。
でも、成長に変わることもあります。
このような成長をした人たちの多くは、出来事の意味を問い直すことをしています。つらい出来事は、それ以上でもそれ以下でもありませんが、そこから自分にとっての学びを見つめ直していました。
そしてさらに大事なことは、
意味を問い直すことは、
過去がつらくなくなることではありません。
つらいことでありつつも、前に進む⼒に変えていくことです。
よく「過去は変えられない」と言われます。
でも、過去の意味づけは変えることができます。
意味づけが変われば未来の選択肢も変えることができます。
PTGは、「辛い出来事の先にある新たな可能性」を示す希望の考え方です。もちろん、すべての人がPTGを経験するわけではありませんし、それを目指すことが義務でもありません。ただ、辛い経験の中にも成長への種があることを知るだけで、前を向く力になるかもしれません。
あなた自身や、あなたが支える人々が少しずつでも前に進めるよう、このブログがそのお手伝いとなれば幸いです。
トラウマに向き合うことはつらいことなので、一人ではなく、理解ある人または専門家に相談することも有効です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。