「心の技術」: トップアスリート渡邊雄太のメンタル戦略とその心理学的背景
『FIBAバスケットボールワールドカップ2023』への出場が期待されるトップアスリート、渡邊雄太（フェニックス・サンズ所属）が、都内でのジョーダンブランドイベントでのトークショーで、自身の経験を通した心理的側面について語った。
彼が米国への進学を機に体験した多くの困難や壁に直面しても、その都度乗り越えてきた背後には、心理学的にも興味深い要因が隠されている。彼は「日本でトップでもアメリカではスタート地点」と語り、自己表現の重要性を強調。この自己表現の背後には「自分を信じる力」があり、これは一夜にして身についたものではなく、日常の細やかな努力の蓄積から来るものと語る。
心理学的に見ると、彼が述べる「自分を信じる力」は、自己効力感とも関連が深い。自己効力感とは、自分の能力を信じ、挑戦や困難な状況に対しても対処する自信のことを指す。渡邊選手の日常の努力や経験が、この自己効力感を育てているのだ。
また、彼が「練習に行きたくない日もある」とオープンに語る姿勢には、心理的な自己受容の側面が見られる。全ての日に100％のモチベーションを持っているわけではないと語る彼の言葉は、自分の弱さや疲れを受け入れることの大切さを示している。
「僕だって今日は練習に行きたくないなと思う日はありますよ。（笑）毎日100パーセントのモチベーションを持って練習できている選手は、おそらくいないと思います。同じ練習を繰り返していたら、体も疲れてくるでしょうし、精神的にも疲れてくる。僕もNBAではそういう時期があった。
でも、そういう時に思っていたのは、『昨日は頑張れていたんだから、今日も頑張れるでしょ』と。今まで頑張れていたのに、今日は頑張れない理由がない。それこそ今日頑張れなきゃ今までの努力が無駄になってしまうし、サボってしまったら『過去の自分に対しての侮辱だ』と思って頑張っています。
サボりたいと思ったら、『サボるのは明日にしよう』と。それの繰り返しです。今日頑張ってみて、無理だったら明日サボろうと。結局サボる日はないんですけど、『今日頑張ってみよう』という繰り返しなんです。
練習がしんどいと思ってしまう自分自身に嘘をつく必要はないと思います。練習したくないという自分の弱さも認めつつ、でも頑張ってみようと。その一歩を踏み出せるかどうかだと思います」
彼の「サボりたくなったら、『サボるのは明日にしよう』」という戦略は、プロクラスティネーション（先延ばし）の逆手をとったメンタルテクニックとも言える。心理的に、小さな目標を設定し、それを達成することで、自己効力感を高めるという方法が研究で示されている。
結論として、渡邊選手の言葉には、心理学的知見とも重なる多くの要素が含まれている。トップアスリートの彼が日々の努力を続ける背後には、努力だけではなく、自分を知り、自分をコントロールする心理的技術が隠されているのだ。これらの言葉は、多くの人々にとって、日常生活の中での努力や挑戦のヒントとして役立つことでしょう。
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