#国民投票法改正案に反対 のタグに流れる自民党改正草案のファクトチェック
こんばんは
本日は少し真面目なお話です。
令和3年5月6日、衆議院憲法審査会にて国民投票法改正案が可決されました。
今後は、衆参本会議での可決を経て、今年中に成立する見通しだそうです。
憲法改正は、
改正原案
衆議院本会議
参議院本会議
を経て、
国民投票
となって、晴れて憲法改正となります。
今回はそこから波及したツイッターでの反響に関して、ファクトチェックしたいと思います。
上記の画像が数多く出回っています。
こちらの画像の制作団体は不明ですが、QRリンク先から見るに、@ESmdcre という共産党支持者によって制作されたようです。
念の為情報ソースを示しましたが、これは情報の信頼性を示すものであって、これを毀損する目的はありません。
誰が作ったかではなく何が書いてあるかで判断しましょう
さて、ここに書かれていることは事実でしょうか。
ひとつひとつ、といいいたい所ですが、これは思想信条に左右されるところがあるので、明確な問題点だけ羅列することとします。
自民党の憲法改正草案(自民党憲法改正推進本部HPより)も合わせてリンクを貼っておくので参照ください。
まず1つ目、前文からのツッコミです。
日本国憲法 前文
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」
この資料を見ただけでは、「自民党は国民主権を捨てるとんでもない暴挙に出ている!」と感じるかもしれませんが、それは全くの誤りです。
実際に、改正草案の前文にはしっかりと「国民主権の下、立法、行政および司法の三権分立に基づいて統治される」と書かれています。これは明らかに悪意を持った提示の仕方であると言えるでしょう。
第18条
第18条では、現行の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」という条文が「社会的または経済的関係において身体を拘束されない」と改正される点が悪いことかのように評していますが、実際は「奴隷的拘束」寄居も幅広く「身体の拘束」からの自由を規定していると見られます。
第20条
第20条「いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない」これはいわゆる「政教分離」の原則を示しています。政教分離は誤解されることが多く、例えば公明党の支持母体は創価学会であり、党員も学会員ですが、それは個人の信教の自由に立脚して合憲であると考えられています。「政教分離」とは、「政治がある宗教団体に特権を与え、団体がそれを行使すること」であり、自民党の改正草案ではまさにこれが明記されています。ですから、この批判というのはお門違いであると言えます。
第36条
第36条「公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」という現行の条文が「公務員による拷問および残虐な刑罰は、禁止する」と修正されており、この資料では「公益と公の秩序のための拷問が容認されます」と説明が付されています。
果たしてそうでしょうか?例えば、検閲に関しては憲法上絶対的に禁止されていると解釈されています。しかし、条文には「絶対的」という表現はありません。実際の条文は「検閲は、これをしてはならない」です。
憲法において「してはいけない」と書かれていることは絶対的にしてはいけないことに他ならないのです。
ですから、「絶対にこれを禁ずる」という書き方と「禁止する」という書き方は憲法解釈上一切変わりません。
第66条の2
第66条の2は「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」→「現役の軍人であってはならない」という修正箇所を指摘しています。
そもそも「文民」という言葉に馴染みのない人が多いと思いますが、文民とは「軍に所属していたことのある人および現役の自衛官」です。つまり、現行の「文民」において、当時の軍に所属していた人は現在国会議員として存在していませんし、今後もまず現れることがないので無視することができます。ですから、現在では事実上「現役の自衛官や防衛省職員」を除いた国民が文民であるという定義になっていると考えて差し支えありません。
もっと言えば「文民」という言葉自体、国民を不用意に二分する言葉ですから、現代には不適切な言葉です。
これ以上は自衛隊を国防軍として扱うことの是非に関わってくるので言及しません。
第97条
第97条の前文削除をもって、「基本的人権」よりも「公益と公の秩序」が優先されると指摘されていますがこれも全くの誤りであると言えます。
そもそも、第97条は基本的人権を保障する条文ではありません。
それは第10章 最高法規の第一番に挙げられる条文だからです。
第97条は憲法の最高法規性について言及しているに他ならず、実際に基本的人権を保障しているのは、第11条です。改正草案でもほとんど変更されることなく、日本国民の「基本的人権」は保障されています。
改正草案第11条を引用すると、「国民は全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である」
つまり、基本的人権は第11条が規定するところであり、第97条は憲法の最高法規性が人間の絶対的権利である基本的人権に担保されているということを示すことに他なりません。
これを削除する必要があるかどうかについては議論が必要ですが、少なくとも「基本的人権の尊重」は重複している内容なので削除しても問題ありません。
まとめ
以上が私の思うSNSムーヴメントで挙げられている問題点です。
改憲する必要があるのか、それを今する必要があるのか、様々な議論が必要ですが、国民投票法改正に反対する大きな目的が改憲を阻止することにあるようです。憲法改正は唯一国民投票がなされる改正ですから、最終的に我々国民が判断すれば良いのです。十分な議論をした上で国民投票によって民意を反映させるというのが民主主義の構造ではないでしょうか。
引き続き議論していきましょう。
個人的には国民民主党の憲法改正草案が多くの国民に受け入れられるような予感と期待があります。
もう少ししっかりした草案が出された時にはそれもじっくりと見ていき代と考えています。
それではこの辺りで。
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