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《小説読了・感想》浜口倫太郎「ワラグル」

小説 浜口倫太郎の「ワラグル」を読了。

著者の浜口倫太郎氏は「AI崩壊」「22年目の告白〜私が殺人犯です〜」などが映画化されたりしている小説家。お笑いに向き合った小説という事で、お笑い好きな俺は即購入。

感想(ネタバレ上等)

お笑い芸人って俺の中で1番難しいものだと思っていて、尊敬に値する職業だと思っている。有名になる、というより、純粋にお笑いというものに向き合い闘っているそのイメージが単純に惹かれるのだ。

漫才師が挑む笑いと涙と戦慄の起死回生物語
崖っぷちの中堅漫才コンビ、リンゴサーカスのボケ担当、加瀬凛太は、冬の寒空の下、絶望していた。年末の漫才日本一を決めるKOM(キングオブ漫才の略)敗者復活戦で敗れ、決勝進出の一縷の望みを絶たれてしまったのだ。
おまけに相方は、今年ダメなら実家の生業を継ぐと公言していたため、コンビも解散となった。
なんとかして漫才を続けたかった凛太の前に、先輩KOM王者からある情報が寄せられる。死神の異名を取る謎の作家ラリーがコーチに付けば、KOM優勝も可能だ。事実、自分もそうして王者になれた、というものだった。半信半疑でラリーの元を訪れた凛太は、来年決勝に残れなければ芸人を辞めろ、と告げられる。(引用:小学館サイト

この作品の肝は主人公が2人いる事。「凛太」と「ラリー」。凛太は売れない漫才師、ラリーは謎の男。物語はお笑い好きの彼女と付き合った男・文吾、「リンゴサーカス」ボケの凛太・「キングガン」のマルコの3つを入れ替わりで物語が進む。

ネタバレを書くと、
この小説はややこしい時系列になっている。

物語は同時進行で書かれてると思いきや、文吾(昔)、凛太・マルコ(今)という時系列となっている。キーとしては某兄弟漫才師をもじったかのようなお笑いコンビ「花山家」というKOMのチャンピオンが、途中で「違う人が『花山家』と紹介される」部分が描写されている。つまりは文吾という人間の物語が噛み合わなくなるが、ここで物語の注釈が入り、「あれ、じゃああの話は過去の話?」と、まるで合わないパズルのピースが次第に噛み合うといったテイストになり、面白さが増す仕組みになっている。しかし、急にそれが提示されるためそこで一旦立ち止まり整理整頓しなければならず、分かれば良いのだが、小説など活字を読む人間が読んだ際に多少分かりにくいのではないかという印象を受けたので、注釈を入れず分かりやすくじわじわと謎が解けるようにすればもっと面白い話となったのではないかと思った。
何をごちゃごちゃと、、、となるが、文吾という人物が一体どういう人間なのか、という話である。凛太とマルコがお笑いに真剣に向かう中、文吾はお笑いの知識が富んだ彼女とその彼女の夢をひたすら支える、といった内容で、何やねんお前な感じだが、誰を指しているかが分かった時、思わず静かに唸るだろう。
それと、お笑い好きなら「ああ、アレをもじったのか」となってしまうのがあるのも残念だった。先述した「花山家」は完全に「中川家」だし、「キングガン」は「コウテイ」だろう。凛太のコンビだけ分からなかった。そこは難しいなりにもオリジナルでやってくれたら、もう少し入り込めたなと思った。

映像化はかなり難しいと思う。「イニエーション・ラブ」みたいな構成にしてどうにか…って感じかな。でも久々の小説は楽しく見れました。

次は伊坂幸太郎「逆ソクラテス」でお会いしましょう。それでは。

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