1945.08.06
その日、空は晴れ、風はわずかしか吹いていませんでした。
夏の太陽は、地上を照らし、暑い一日になることを予感させました。
お父さんは出勤し、お姉さんと弟は学校へ。家事を始めるお母さん。おじいさんは、縁側で麦茶を飲んでいました。
1945年8月6日午前8時15分。ヒロシマ。
人間は、自然の力を悪魔に変えました。
上空600メートルで爆発した原子爆弾は、0.2秒後には、6000度もの熱線を発しました。鉄の溶ける温度は1500度ですから、すさまじい高熱と風速200メートルの暴風が広島の人たちを襲いました。
原爆投下による即死した人の数は、すくなくとも8万人といわれています。その後も多くの人が亡くなり、死者は14万にもなりました。
14万人。文字にすれば、わずか4文字。
14万の笑顔。14万の夢。
原爆を投下した側、こう言います。
もし、原爆投下がなければ、日本において地上戦が行われ、もっと多くの犠牲が出ていた。原爆投下は、戦争を早く終わらせるために必要に措置だった。
本当に……
本当に、本当にそうですか?
14万ものヒロシマの人たちは、戦争を早く終わらせるために、死ななければならなかったのですか?
14万の涙。14万の手のぬくもり。
ほんとうに、ほんとうにそうですか?