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消えゆく記憶と共に〜双極症の私と認知症の母の日記〜

私は双極性障害を抱え、母は認知症を患っている。病が進むにつれ、私たちは現実を見失い、自分が誰であるかもわからなくなる。そんな私たちは、まるで鏡に映る存在だ。全体と部分は見方の違い…
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#心理療法

【第7日】夢に響く母の声

ある夜、不思議な夢を見た。母が遠くから助けを求めている。涙を流しながら、「自分がどこにいるのかわからない」と訴えるその姿に、胸が締め付けられた。目が覚めたとき、もしあれが自分だったらと考えた。 私は双極性障害を抱え、妄想の中をさまよい、気づけば思いもよらない場所にいることがある。夢の中の母は、未来の自分自身のように感じられた。母は、まさに私の鏡なのだ。 思い返せば、6歳のときに起こした火事や、酒に溺れる亡き父への苦手意識から、家族から逃げ出したかった私は、大学入学と同時に

【第3日】ハリネズミの叫び

私は双極性障害を抱えているが、ここ数年はうつ症状はなく、軽躁状態が続いている。軽躁状態のとき、時折、大声を出したくなる衝動に駆られる。実際に何度か大声を上げてしまったこともある。 今年の正月、私は母に対して思わず大声を出してしまった。しかし、その理由を思い出すことができない。母は驚き、涙を流しながら「家に帰りたい」と震えていた。その姿に胸が痛んだ。母は自分がどこにいるのか、時間の感覚さえも失っているようだった。最後には、私に土下座をして「帰らせてほしい」と懇願した。 この