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消えゆく記憶と共に〜双極症の私と認知症の母の日記〜

私は双極性障害を抱え、母は認知症を患っている。病が進むにつれ、私たちは現実を見失い、自分が誰であるかもわからなくなる。そんな私たちは、まるで鏡に映る存在だ。全体と部分は見方の違い…
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#絆

【第10日】笑顔を繋ぐ山頂で

母との再びの山登り 母との大切な思い出がある。あの山を一緒に登った日のことだ。その山は険しくはなく、低い山で、最初の八割はケーブルカーで登ることができた。ケーブルカーを降りた後、残りの二割を一時間ほど歩けば山頂にたどり着く。道中には、夏にはビアガーデンやレストラン、茶屋など、魅力的な休憩所がたくさんあった。 当時の母は信じられないほど元気で、私よりも足取りが軽かった。私が疲れて茶屋で休んでいると、母は軽やかに先へと進んでいく。しばらくして、山頂から戻ってきた母が、団子を食

【第1日】消えゆく記憶と共に

私と母は、静かに織りなす絆で結ばれている。私は双極性障害を抱え、現実と幻想の狭間を漂う。一方、母は認知症と闘い、記憶の彼方へと消えてゆく。病が進むにつれ、私たちはそれぞれの世界で自分を見失い、家族の存在さえも霞んでいく。 ある日、ふと気づいた。私と母は鏡のようにお互いを映し合っているのではないかと。全体と部分は視点の違いに過ぎず、大きく見るか小さく見るかで同じものを見ているのかもしれない。そう考えると、私と家族は一つの存在であり、切り離せない関係なのだ。 私は決意した。母