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西加奈子『夜が明ける』

15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。
大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった……。
思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、 人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く、感動作!

新潮社より

「当たり前」だと思う価値観を、優しく流してくれるような一冊。
耐えなくていい、疑問を持っていい、恐れていい。

辛く、痛々しい現実を見せながら、そういう風に力強く伝えてくれます。

終始、暗く、地を這うような物語だった。
ずっと、辛い。

社会って、現実って、辛い。
吸った二酸化炭素を何度も吸って読んでいるような気分だった。

最初の高校生活の眩しさと、
その後、2人が社会に出てからの生活の落差が大きくて、
泥を這いながら読んでいる気分になる。

厳しい職場や滅入るような人間関係など、
彼らの前にはいつでも辛さ・痛さが立ちはだかる。

それら全てを理解できたとは思えないけど、
どれだけ辛い状況にあっても、2人は繋がっていたことは分かる。

細い糸のようなもので。
繋がっていることがずっと心にあった。

だから最後、きっと、少し、光が見えたんだろうな。
読んで良かった。


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