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いろめがね(仮)

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小説と呼んで良いものなのか、わからないもの
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#小説

無題ー4

泳ぎ続けるうちに、自分の海との境界線が曖昧になってくる。自分の体と、世界の一部が一体化しているようだ。私の体は世論を一部反映している。自分のやりたい事よりも、世論を、みんなの最大公約数たる人物になることを、優先してしまうようだ。

無題3

部屋はすっかり真っ黒になっていた。
部屋の圧迫感がさらに強くなった。
私は圧迫感から逃れるためにスマホの電源を入れた。漠然とした不安を検索ワードに打ち込み、インターネットの海に出かけた。不安の根本的な原因は分からないので同じ場所をぐるぐる回った。
真っ直ぐ泳いでいるつもりでも、気づいたら蛇行していたり、同じ場所に戻ってきてしまう。

無題-2

私は保育園に通っていた。
山から近く、園庭の真ん中にイチョウの木がそびえる自然豊かな保育園だった。
当時の記憶はほぼ思い出せないが、いくつか心に刻み込まれた記憶はある。

その園では給食がある。農業が盛んな地域性か、白米は各自持参して来ることになっていた。給食ではおかずのみを提供してくれるのだ。
しかし当時の不思議なルールとして、時間内に完食できなかった時、完食できるまでいつまでもテーブルに座らさ

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無題

澄み渡る5月末の青空は歪んでいた。

まるで溶け始めのバターのようにどろりと垂れてきて、そのまま頭の上から私を押し込んでしまいそうだった。

私が新卒で入社した会社はみんな良い人だ。生活も順調に進んでおり、深刻な問題はない。
しかし私は不安に包まれていた。
何が不安かと問われると、具体的な回答は出てこない。
彼女がいないこと、友人の方が年収が高いこと、ウイルスの蔓延で思うように行動できないことなど

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