無題

澄み渡る5月末の青空は歪んでいた。

まるで溶け始めのバターのようにどろりと垂れてきて、そのまま頭の上から私を押し込んでしまいそうだった。

私が新卒で入社した会社はみんな良い人だ。生活も順調に進んでおり、深刻な問題はない。
しかし私は不安に包まれていた。
何が不安かと問われると、具体的な回答は出てこない。
彼女がいないこと、友人の方が年収が高いこと、ウイルスの蔓延で思うように行動できないことなど表層的に浮かんでくる悩みはある。しかしそれらは根本的な原因ではないのだ。

私の脳みそはこの不安を打ち消す打開策を探している。しかし核心に近づけず、同じ場所をぐるぐる回っているので混乱している。

そんな状態なので、会社に家の鍵を忘れてしまった。

結局2往復し、帰宅したアパートの一室は、ここだけセピア色に染まっていた。
私は床に転がるペットボトルを避けながら真っ直ぐベッドに潜り込んだ。
住み始めた時は両手を伸ばして歩き回った十畳のアパートも、最近は壁が私を圧迫するようになった。

私はいつから世界が怖くなったんだろう。

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