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やんごとなき
来年の大河「光る君へ」
メインビジュアル中の題字(縦書き)がすごい。
一昨日、東京国立博物館で開催されていた「やまと絵」の展示を観てきた。
屏風、和歌、日記、神社への奉納物としての扇や絵巻物など、平安〜安土桃山にかけてのやまと絵や書がメインだった。
やまと絵の定義はwikiでググって欲しいのだが、簡単にイメージするなら…。
平安時代といえばみたいなThe 麻呂眉でふっくらした顔の人や、絵の途中にいきなりiCloud みたいなモクモクの雲や、水の渦が出てきたり…って感じ?
「光る君へ」と関連する、平安時代の絵巻物や書も豊富だった。
私は藤原実資の小右記の字が好きだった。
大河では実資をロバート秋山が演じるらしいというイメージに引っ張られて豪奢で大胆な字を想像していたが、実際は違った。
小右記は実資の日記だ。
日記と言えど、平安時代はその日起きたことを淡々と書く「記録」としての意味合いが強かったらしい。漢文で楷書だった。
でも日記ということもあるのか、カクカクしておらず、柔らかい雰囲気だった。
特に右払い。普通一旦止めてから払うみたいな流れが多いと思うのだが、柔らかく、しかし勢いが過剰なことはなく、いい塩梅のはらいだった。
また、文章の下の紙、絵巻物の絵周辺に、まるでネイルのラメのように金粉か撒かれていたのが
オモロかった。
決してキラキラさせることが目的ではなく、余白を「締める」ためだろう。
現代でも世界的にポピュラーな日本のネイル、デコる文化(ちょっと古いが…)の根底を垣間見た気がした。
1000年以上前の人達は、こんな風に自分が書いたものが、残り、受け継がれ、1000年後、多くの人に観られる展示物になると、想像もしてないないだろう。
同じ日本のものでも、浮世絵や日本画あたりは、ピンと張り詰めたものを感じる人が多いのではないだろうか。
「やまと絵」の多くの展示物の場合、屏風といった調度品、今日あったことを記録する日記、神社の奉納品など「作品」「芸術」「販売」といった概念が生まれる前のものだからか、全体的に良い意味でゆるくて、力みもなく、淡々としていた。
「見る人に訴えかけるパワーを持ってます!インパクト!」というより、ほんわか「そこにいますよ。」というようなテンションと言ったら分かりやすいだろうか。
「やまと絵」の展示の余韻も残りつつ「光る君へ」の題字を見たから、素晴らしさがより感じられたのだろう。
繊細でもなく、かと言ってパワー!迫力系!でもない。いい意味で力が抜けていて柔らかいけど、フニャフニャな訳ではない。
「美しい」「色気」とか俗な言葉では表しきれないけど、少しその要素も含んでいる。
伸びやかでまっすぐだけど、明らかに親兄弟に書く字ではない、なんとも言えない雰囲気。
題字を書かれた根本知さんのインタビューを読むと800枚くらい書かれて、大河ドラマ担当者のアドバイス「式部が道長に恋文を書いたとして、最後の宛名が「光る君へ」だったら…。そんな字をみたい。」で書けたそう。ピアノのレッスンみたいだな…。
本当にその通りの字だ。
また根本さんのwebやインスタも素敵すぎるのだ。作品は勿論、webのお名前が根本さんご自身で書かれた筆文字だろうと思うのだが、もうそこから上手すぎるのだ。
9年くらい私自身も習字をやっていたし、字は綺麗な方だと思う。
でも、いわゆる書道家とか書家の人が書く字に対して「うま〜」「よくこのサイズ書けるな〜」「この書き方が思いつくのすごい!」とか割と他人事で、感動したことはなかった。
一般の人が書道といってイメージする字を分類すると①どっしり系②訳わかんないくらい崩されて繋がっている系③あいだみつを系かなと思う。
「光る君へ」の感想と被るが、根本さんの字は線の緩急や流れ、雰囲気、どういう気持ちで書いたのかが読み取れて、とても自然だ。
見ている人への圧がない。
と同時に、昔のルールや書き方も熟知されているからこそ薫ってくる「品」や「時の流れのゆったりさ」といった雅さがある。
自分が持っているものと、所謂「型」とのバランスが絶妙だと思う。
センスエグい。
こんな字が書けたら、どんなに良いだろう。
絶対モテるし、私はこんな字の手紙とか貰ったら好きになっちゃうw w
楽器弾ける人がカッコよく見える現象と一緒ですね。(チョロい)
いつか子供を持つ機会があれば、名前を揮毫していただきたいなぁとか勝手に妄想してたけど、私が書いたっていいのである。
学生の頃、気になる人や友達の名前をノートとかプリントの裏に無駄に綺麗〜に書いて悦に浸った後、見られたら恥ずかしいのですぐに消すっていう遊びを、やっていたことを思い出した。
文字を書くの、好きだったかも。