“ダメなところ”がいい。「スゲーテキスタイル」の注染手ぬぐいは、布をつかい続ける楽しさを教えてくれる
STORY11:バンダナ柄の注染手ぬぐい「スゲーテキスタイル 」
日本の手ぬぐいと、アメリカのバンダナ。どちらも“古くからつかわれてきた生活布”であることに気付いていましたか?
「スゲーテキスタイル」の手ぬぐいは、いわばその2つの良さをかけあわせたもの。ヴィンテージバンダナのモチーフをアレンジしたテキスタイルを、日本の伝統的な染色技法「注染(ちゅうせん)」で染め上げています。
この手ぬぐいに触れると、つくり手である稲葉大祐さんの、素材やモチーフへのリスペクトが伝わってきます。稲葉さんは一枚の布で、どんな思いを表現しているのでしょうか。
手ぬぐいとバンダナに通じる魅力
稲葉さんがスゲーテキスタイルの手ぬぐいをつくる上で、切っても切り離せないのが、10代の頃の古着との出会い。
学校では染色を学び、ものづくりの道へ進もうと思っていた稲葉さんでしたが、就職したのは繊維製品の検査機関。生地の耐久性や色落ち具合などを検査・数値化し、品質を評価する仕事をしていました。
バンダナ柄の手ぬぐいを初めてつくったのは、そんな仕事をしていた2008年ごろ。
作品の完成度は高かったものの、当時はあくまで趣味。それっきりで10年近く経ったのち、2017年に「自分で何かやりたい」と仕事を辞めた稲葉さんは、「スゲーテキスタイル」として本格的に手ぬぐいづくりを始めたのです。
「注染」なら世界観を表現できる
稲葉さんが手ぬぐいづくりに選んだのは「注染」という、生地自体に染料を染み込ませる染色技法。表も裏もしっかり染まるだけでなく、つかうほどに色が落ち、経年変化を楽しめるのが魅力です。
ヴィンテージバンダナと手ぬぐいをかけ合わせる上で、古着の世界にのめり込むきっかけにもなった“素材感”が欠かせなかったという稲葉さん。世間一般で言う「日本のものづくりっていいよね」には懐疑的な立場でありながら、それを叶えてくれるのは日本の繊維産業であるとも思っていました。
職人の作業による高いクオリティーを求め、現在は福島県の注染工場に発注しています。そうすることで、日本の繊維産業に微力ながら貢献し、長続きさせていきたいという意気込みも。
単純な柄の中に散りばめた工夫
稲葉さんの“新しい提案”であり、スゲーテキスタイルの象徴とも言えるバンダナ柄のデザインは、すべて稲葉さん自身で制作しています。単純なバンダナモチーフの配置に見えるかもしれませんが、ここには稲葉さんの並々ならぬこだわりと努力が注がれています。
とはいえ、単純につくられている柄が好きだという稲葉さん。一見すると単純でも、よく見ると「あ!」と発見があるような、面白い気配りをしています。実はそれこそが、ヴィンテージバンダナの再現でもあるそう。
稲葉さんはそんなしかけを決してアピールしません。人気のラーメン屋さんが時代に合わせ、お客さんに気づかれない程度に少しずつ味を変えているのを参考にしているそうです。
また、線が細いバンダナ柄を注染で表現するための工夫もたくさん。それを選りすぐりの染め工場に依頼することで叶えています。
「そこそこ精通している人にも認められつつ、全く知らない人が見てもいいと思うものをつくりたい」と稲葉さん。染色の知識をいかしながら、バンダナの魅力的なモチーフを再構成することで、元の柄とは一味違う、新しいパターンを生み出しています。
生活の中でつかい続けてほしい
手ぬぐいは「日常生活でつかってほしい」としながらも、そのつかい方を具体的に提案しないのが稲葉さんのスタンスです。
手ぬぐいに縫い目がないのは、雑菌の繁殖を抑え、乾きやすくするため。まずはフキンやハンカチ、首に巻くなどしてつかいはじめ、やがて色が褪せ破れてきたら、掃除道具にしてつかい終える。そんな風にあれこれ考えながらつかい方を変えていけるのは汎用性の高い手ぬぐいならでは。
ダメなところがいい――。検査機関でずっと、毛羽立ちや色落ちを「ダメ」と評価してきた稲葉さんが言うからこそ、深みのある言葉に感じます。肌馴染みがよく、風合いも早く出るよう、手ぬぐいにはあえて目の荒い生地を選んでいるそう。品質とは違う角度で、“布をつかうことの価値”を噛みしめていきたいです。
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