AIを利用した作品シリーズの話
どうも、お久しぶりです、アート屋です。
これまでにも何度か記事を書きかけてはいたのですが、noteが下書きを自動保存してくれないことを忘れてて途中で消えちゃったり、気持ちが続かなくて最後まで書ききれずお蔵入りさせたりしちゃってました。ごめんなさい。
本日は「AIを利用した作品シリーズの話」です。
ここ1年程度の間にAIによる画像生成を利用した作品をいくつか発表してきました。
AI画像生成をコンセプトに絡めるようになった背景についてですが、「機械学習によってAIが獲得した定義の意味と我々人間が考える意味との差を示すアート作品を作ることで、人間同士においても本当に同一の意味でその対象への認識を共有できているのか、いわゆるヴィトゲンシュタインのパラドックスを視覚化したい」と2020年末にツイートしていますね。
こちらの記事も参照。
このあと私は機械学習による画像生成をおっぱじめようとPythonに挑戦しました。
しかし当時私の使っていた平安時代のノートpcでは残念ながらwindows10がろくに動かなかったためそもそもPythonを触ることすらままなりませんでした。
そこで個展の売り上げを投げうって新たにゲーミングPCを導入。さらに運良くgithubで目的の画像生成のオープンソースを見つけることができたものの、上手いこと動かず…。
解決策を調べてあれやこれや試してみたものの、素人の私にはどうにもなりませんでした。
そして「これは一から地道に勉強しないとダメだな…」と思って書籍などを探していた頃、twitterのTLで『実在しない猫の写真を生成するAI』で遊んでいる人を見かけました。
なんか埋め込みに失敗してますが『This cat does not exist』ってサイトです。そのまんまですね。『この猫は存在しない』。
ページに飛んだらいきなり架空猫が現れます。ページ更新して新たな架空猫を無限に生成できます。リアルな写真に見えますがAIが生成した画像なんです。そう言われなきゃわからないレベルのものがほとんどです。すごいですよね。
https://thiscatdoesnotexist.com/
これを見て「そういえば以前に実在しない人物の写真を生成するAIが話題になってたな……」ということを思い出しました。『This person does not exist』。おなじくそのまんまですね。
https://thispersondoesnotexist.com/
それで実際にこのサイトで遊んでみながら『AIが生成した実在しない人物のポートレート』について考えてみました。
1.ポートレートという伝統的な様式でありながらAIという現代の技術を用いていること。
2.実在しない人物であるため肖像権はない。
3.この人物は誰でもない。人種、国籍、性別といった属性やアイデンティティを一切持っておらず、この写真が撮られる(作られる)にあたってのバックボーンも何ら存在しない。
4.ランダムに作られた自動生成であるため、制作者の意識や意図が全く介在しない作品といえる。
それらの点を考慮し、ダダ、シュルレアリスム、あるいはウォーホルの虚像性などを連想しながら作品に落とし込んでいきました。AIが生成した人物の画像を網点にしてキャンバスプリントで大量生産しようというプランです。実際には大量生産する資金がないためCMYKの4色を並べて印刷物感を演出しました。
キャンバスプリントという様式も伝統的な支持体を用いながら現代技術を利用しているという点で作品とリンクしています。
この作品を作ったのが2021年3月、発表は4月。
私のAI利用作品の第一弾です。
これを初公開した展示ではなんか美術評論家の人による賞選考が行われておりましたが、ろくにコンセプトも聞かれず「手描きだったらすごい作品だった」というクソありがたいコメントを頂戴いたしました。
それから時は過ぎ10月半ば、東京展も終わり次の作品について考えていたころ、WOMBO dreamというサイトに出会います。『League of Legendsのアイテム名でAIに絵を描かせてみた』みたいな記事をTwitterで見かけたからですね。そうです、またTwitterです。
このサイトは入力したキーワードを元にAIが画像生成をしてくれるサービスです。おそらくWebブラウザの画像検索をソースにしていて、いくつものタッチ・画風が選べる楽しいサイトです。
これはちょうど最初の目的であった『機械学習によってAIが獲得した定義の意味と我々人間が考える意味との差を示すアート作品』を作るのに適していると考え、ひたすら試行してみました。
愛とはなにか、神とはなにか、美とはなにか、死とはなにか……
答えのない哲学的な問題をAIに投げ掛け、Webブラウザの検索結果という人類の集積情報に御託宣を賜る、一種のデジタルカルトの儀式という感覚の作品群を作りました。
これは『Love,Sex, and Death』シリーズ。
美術における定番のテーマです。
アレクサンダーマックイーンをテーマにした『Oh,my darling McQueen』シリーズ。
ダミアンハーストをテーマにした『Hirst! Hirst! Hirst!』シリーズなど。
AIの生成画像に加筆して、AIとの合作も行いました。
往年のテーマのひとつであるカワイイ信仰を取り扱った『カワイイカルト・イントロイトゥス』
日本に関連するいくつかのキーワードから生成した画像を模写して組み合わせた『温故不知新』などです。
これは模写という行為によってAIの生成画像を私自身の網膜と脳が再解釈しているので、認知とはなにか、対象の真の意味や形はどうなのか、といった部分をさらに曖昧にさせられていますね。
右の方のドラえもんとか、形の意味が通っていない支離滅裂な色の羅列を模写するのはかなりきつかったです。
この作品にはかなりのエネルギーを要しており、ひとつの集大成というか燃え尽きた気持ちになったので、しばらくは別の表現に移る可能性が高いです。
まだ私自身の作品をソースにして新作を生成させるという試みができていないのですが、一旦お休み。ここまでの足跡を大まかに記録しておきたくて記事を起こした次第です。
ではまた。
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