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7年周期説~それぞれの時期の教育的課題~

シュタイナーの考え方では人間は7年ごとに節目が訪れるとされていて、こうした人間観に沿ってそれぞれの時期の教育的課題が非常に明確に設定されています。0~7才を第1・7年期、7~14才を第2・7年期、14才~21才を第3・7年期と呼びます。

第1・7年期 /0~7才
キーワード『体を育てる』『善』『模倣』『意志のもとをつくる』

まず『体』をつくることが大事。
生まれてから首がすわり、目が見えて、音がきこえ、匂いや味がわかり、五感が育ち始める。そして立ち上がり歩くという発達をしていく。この頃子どもは全感覚を総動員してまわりの全てを『模倣』するので、子どもに吸収されて良いものを身の回りに置くことが大切。(ex.安全な食べ物、自然素材の衣服、テレビやゲームよりもお母さんのうた)
きれいなものを見るときれいな心に、美味しいものを食べると美味しさを味わえる味覚になっていく。
何でも『模倣』してしまうので、悪いものを見せて「これはダメですよ」という反面教師のやり方は通用しない。大人はお手本になるような『善い行い』をして、普段から考えや思いを濁りのないものにしておく必要がある。子どもは大人の内面までも模倣するということを心に留めること。
この時期に『善』なるものを好むようになり、土台である『体』をしっかりと作ることで、後に『意志力』や行動力が育つことになる。大人にとってはこの最初の7年が最も難しい。


第2・7年期/7~14才
キーワード『感情』『美』『芸術』『権威に従う』『権威から離れる』

感情を育むとき。
この時期の子どもは芸術的な刺激を受けることや、芸術的体験によって『世界は美しい』という認識を強めていくことが重要。シュタイナー教育においては、何の教科を教えるにも『芸術的』なオブラートに包むという手法がとられている。この頃の子どもに知的な活動ばかりさせると、脳が疲弊して創造的な力が奪われてしまう。逆に芸術的でクリエイティブな活動が子どもを元気にする。
この時期の子どもは信頼できる大人のふるまいを意識的に取り込むようになるので、教師は『権威』として子どもを惹き付けなくてはならない。権威とは厳しさによって従わせることではなく、生徒に自然に好かれる魅力があるということ。子どもたちに仰がれるような存在になれるかは、教師の精神性にかかっている。生徒1人1人を深く見る目を持った教師の精神は豊かになっていくし、子どもの本質を深く見ていく時、教師は子どもを敬うようになる。教師が芸術的なものへの喜びに浸されておらず、単に知性だけで子どもに向き合ってしまうと、生徒はその教師を尊敬しなくなる。
この第2期には権威に完全に身を委ねて成長していくことが望ましいが、シュタイナー教育では第2期の終盤で子どもたちが『権威から離れる』ところまで計算されている。権威にやみくもに従うことのない大人に育つために、人生の最適な時期に権威に従う経験が必要ということだ。(芸の世界でいう守破離)
実際のカリキュラムの中では、ルネサンス、宗教改革、大航海時代が扱われ、時代の担い手たちが従来の権威に異を唱えて新しい時代を切り開いたということを学ぶことになっている。

第3・7年期/14~21才
キーワード『思考力』『真実』

権威から離れた子どもたちに対して、専ら1人の人間として、長所も短所もある人間として接することが大切。ただし教育者である以上、数学だけは本当にすごいとか、音楽をやらせたら何もかも忘れてしまうというような、ある分野で突出した専門性を持った人である必要がある。それまでは芸術のオブラートに包み、感情を通して教えてきたが、、この時期になれば直接知性に働きかけることが許されるようになる。これまでのようにファンタジーに満たされた世界から脱して、現実の中での大人の判断を示していくのもこの頃である。

まとめ

注目すべきは第1~3の3つの時期に①意志②感情③思考の順番で育むという点です。まず意志の基礎を作り、次に感情の基礎を作り、その土台の上に知識や理論を積み上げる。それぞれの7年期の課題や順番を取り違えると最終的な知力まで劣ってしまう可能性があります。もし3才児に記憶や計算を強制したら、一見知的に発達したとしてもどこか意志力や行動力が弱い人間になってしまう危険性があるということです。
本当の思考力とは、意志力や行動力の裏付けなしには人生の糧にはならないし、その力に限界がきてしまうことでしょう。知的早産をせずに本来の順番通りに育つと『知・情・意』がバランスよく身に付き、ひいては“自由の獲得”へと繋がる、このことがシュタイナー教育において非常に重要な柱となっています。

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