伝説のロックバンドの町に家出した
家にも居場所を失くして
家出した時
伝説のロックバンドの地元の町に
行ったことがある
各駅電車に揺られて
はるか遠くまで
町中の車からは
伝説のロックバンドの歌しか
聴こえてこなかった
制服のまま何もかもから
逃げるように来たから
まず服を買って
もう二度と家には帰らないつもりでいた
閉まった駅の前で野宿もした
伝説のロックバンドの町は
優しかった
まるで滑走路みたいに
テールライトが
どこまでも続いてる中にいて
私を明日という日に
導いてくれていた
死にたいなんて思う暇もないほど
一日を生きてくことに必死だった
毎日が新しいことの繰り返しで
働いたりもしたけど
そんな暮らしは長くは続かなかった
伝説のロックバンドの町が
私は好きだった
伝説のロックバンドのおかげで
みんな一体感があって
絆も強かった
あんなに長いテールライトは
もう見ることはないけど
伝説のロックバンドの歌を聴くたび
私はあの長くて短い家出が
私の家出の中では
一番思い出深い時代だったと
思い返す
伝説のロックバンドが
ボロボロだったあの頃の私を
支えてくれていた