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私と音楽/the pillows
(※注意※)
この記事はthe pillowsのことをほんの少しだけ語ると共に、自身の人生をダラダラと振り返る大変私的な内容になっています。不快感を感じた方はお読みにならないで下さい。
「その曲なんの曲?へ~知らなかった~」
私がまだ20代そこそこで、箸が転がっただけでもゲラゲラ大爆笑出来る程若かった頃、カラオケでthe pillowsのMY FOOTを歌ったら友達にそう言われた。
好きな曲だったし、特段皆が知らないとは思わなかったし、こんな曲を知ってるんだぜ!と誰かに自慢するような、そんな気持ちも無かった。
たぶん友達も傷つける為に言った訳じゃない。
私の好きなものを知ってとは何故か当時は気恥ずかしくて言えなかった。
それからは一人で歌う時の十八番になった。
その、ほんの何年か前に両親が離婚した。
就職したばかりの会社で、先輩のあたりがきつく理不尽な嫌がらせをされていて、仕事を辞めたいと思っていた頃だった。(理不尽な内容は胸糞過ぎるので書かない。)
先輩に挨拶しても返して貰えず、とうとう耐えきれなくなって次の日に初めて仮病で会社を休んだ。
鬱々と後ろめたい日だった。
「お父さんとお母さんは離婚したけん、証書も作ってきたけんね」「あんたたちも就職して自立したけん、安心して離婚した」「家は売るかもしれんから出て行ってくれ」「娘たちに残して貰わんと困る」「俺が買った家なんやけ俺の勝手やろうが」
そんな感じの内容を矢継ぎ早にまくし立てられたと思う。
突如、ぐらぐらと目眩がし始め、胃のあたりがギュッと持ち上がり、お昼に食べた物を盛大に吐き出していた。
カップヌードルしょうゆ味だ。
父と姉は心配していたが、母だけは「それどういう意味なんね」と怒り狂っていた。
当てつけだと思ったらしい。そんな馬鹿な事があるか。
当時の私は親のすすめで車を購入していて、そのローンも残っている、でも仕事は辞めたい、しかし両親は離婚した、家はすぐにでも追い出されそう、どうしたらいいんだと極限に追いつめられていた。
年を重ねた今ならまあ何とかなるかと思えるが、あの頃はそれは世界が終わるくらい先の見えない恐怖だった。
結局、急激なストレスで突発性難聴になっていた。
入院しても左耳の聴力は戻らず、耳鳴りが残った。
(後に何度も再発してメニエール病だった事が分かった。)
退院後、聴力よりも厄介だったのが目眩で1ヶ月程寝込んでしまった。
結局仕事は病と引き替えに辞めた。
寝込んでいる間、私の部屋は荒れ放題だった。
なんせ寝ても立ってもふらつくので、もう二度と普通の日常生活が送れないと思っていた。
目眩で読めるはずもないのに、すぐ手に取れるように漫画や小説がタワーのように積み重なっていたし床に荷物が散乱していた。
(私の極端な汚部屋嫌いは多分ここから来ている。)
しかし幸福な事に月日を経ると、徐々に目眩は無くなり、そこそこの元気を取り戻す事が出来ていた。
そうすると、急激に部屋の惨状が嫌になってきて、ゴミ袋に端から端から詰め込んでいくのだが、散乱している山の中から、購入した覚えのないシングルCDが出て来たのだ。
8センチのCDと細長いパッケージ。
何だかよく分からない灰色のオブジェを掲げた男と視線をそらした後ろの男たち。
the pillowsのハイブリッド レインボウだった。
学生時代、好きなバンドの楽曲を教えあうのはMDを編集するよりCDが手っ取り早く、私はそのシングルCDと、当時好きだった、FANATIC◇CRISISのシングルCDを交換したはずだった。
棚のFANATIC◇CRISISのCDをリリース順に並べると足りない状態なので恐らく借りパクし合っている。
貸してくれた彼の人は東京の大学へ行き、自然と疎遠になってしまった。思い出としてまあいいだろうと、有り難く頂戴することにした。
そこからは、そんな懐かしさと部屋が片付いて体が動き始めた事、耳が悪くとも音楽は聴ける新発見もあり、the pillowsの楽曲をしっかりと聴き始める。
ちょうどMY FOOTのアルバムをリアルタイムで購入する機会にも恵まれた。もちろん宝物になった。
特に表題のMY FOOTが、しんどくて冴えない事続きでどん底の自分の背中をずっと押してくれるような気がしていた。
僕はまだ見てる 進む爪先を
雨も水溜まりも気にしないぜ
すぐに乾くんだ
いつの日が立ち止まるのなら
冒険家のように進め my foot
道なき道を
踵を鳴らして行こう
私はこの曲が大好き。
そこは借りパクしたハイブリッド レインボウじゃないのかよ!と言われればまあそれはそれ。
解散した今になってこんな風に言うとはなあ。
もっとこの曲が、グループが好きなんだと公言していれば、the pillowsの魅力に取り憑かれた人と解散を一緒に悲しんでくれる人が、ほんのちょっとでも増えていたかもしれないのに。
気恥ずかしいからと控える事は無かったんじゃないか。
ただただ残念で、とても寂しい。
the pillowsには人気のFunny Bunnyやストレンジカメレオン以外にもMVがダサすぎる(失礼)と言われても名曲の天使の詩もある。
(なんせ1989年の結成以来、21枚のスタジオアルバム、4枚のEP、8枚のコンピレーションアルバム、38枚のシングルをリリースしている。)
今からでも是非追いかけて欲しい。
多分、人生の一部になると思う。