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「正しい姿で生きましょう」其2

 2023/07/28 17:00~記入開始

 今日、1時間早退した。

 理由については職務上詳しくは話せないが、「死」が非常に身近だと感じる出来事があって泣き崩れた。
 30分、その後も含めれば1時間近くに渡って涙を流し続けていた。それはひとえに「悲しかった」の一言で片付けることも出来る。だけど今日、私の人生は大きく変わることとなった。その理由について此処に残し、改めて私が理想とする「正しい姿」について再考することで、今後の長いんだか短いんだか分からない人生に少しでも華と彩を加えたい。

 何故悲しくなったかというのは、私の豊かな感受性と想像力のお陰と言うより他に無い。あくまで私個人の発想だが、普通の人ならば赤の他人の死なんて文字通り「他人事」だろう。
 だが私にとっては、ひとつ縁が出来ただけで他人事ではなく自分事となる。まるで自分と近しい人が亡くなったような心地が溢れ、そして死んだのが自分であると妄想し、残された人たちの立場に初めて立って更に涙が込み上げた。心調180センチの金髪ド派手男が部屋の隅で顔を伏せて泣いている光景はさぞかし異様だったであろう。

 私の特性のひとつとして、昔から何事も自分に当て嵌めるものがある。そのため時にそれは役に立ち、時に自分を苦しめる。今回はどちらでもなかった。人生三度目の産声を上げたような気分である。

 今年三月の末、持病が快方へと向かった出来事があった。それは「いつ死んでもいいようにやり残しが無いような生き方をしよう」という決心をさせた。結果として環境も変わり、生活こそ逼迫しているものの今の職場で安定して勤務出来ている。いや、今日だけは違うが。

 「いつ死んでもいい」は「いつでも死ねる」へと形を変えて、やがてそれは武器となった。

 故に、電車内で誰もが近寄りたがらない酔っ払いに勇気を出して声を掛ける二人に助力しようとそこに混ざって電車から降りるよう説得したり、派手な風貌とは裏腹に礼儀を全うする意識を常に持ったり、好きなものには惜しみなく金を注いだり。

 今日の午後二時半から流れ続けた涙と零し続けた嗚咽は間違いなく人生を変えた。生き様について考え直しながら。

 ずっと、お別れを告げられるのが苦手だ。かと言って告げるのも嫌いだ。自然といなくなられてしまうのもどこか寂しい。
 つまり私は、「おわかれ」が嫌なんだ。

 自分で思い浮かぶがまま書いてから改めて思ったが、確信を突いた数行である。

 2023/07/29 09:11:40 続筆

 寝惚けてひと駅前で降りてしまい、大した距離ではないので歩いてみた。枯れる間際に咲き誇る紫陽花、すれ違いざまに会釈してくれた自転車乗りのおばさん、川に架かる鉄橋。

ただいま。

 昨日のあの涙を流すまで、この柵は「超えれば1000万円手に入る柵」だと考えていた。だがこの時から「超えたら私が最も嫌うことを私と関わった全員に押し付ける超えてはいけない柵」へと変貌を遂げていた。

 酒場に寄って、数杯の酒で4時間話し続けた。今までずっと「死」と「惜別」を甘く見ていたと思い知り、私が理想とする正しい姿が鮮明となった。

困ってる誰かの拠り所になりたい
自分がされて嫌な事は人にしない

 たった2つ、だがとても重い楔である。その楔が壊れるような壊滅的事件に出逢うまでは、心臓の奥深くに突き刺して忘れぬように日々を生きたい。

 諦めて記憶の彼方に追いやっていたが、私は今「恋」というものを性懲りも無くしているかもしれない。私の信条を見失ってはならぬ。「伝えずして風化させるよりも、全て伝えて華と散れ」。後悔はもう、したくない。

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