ヴィパッサナー瞑想合宿へ導かれた話
機会というものは、突然に、絶妙なタイミングで訪れるもの。
ヴィパッサナーのことは十何年も前に知っていたし、ずっとやってみたいと思っていたけれど、何せ10日間もの間、外部とのコンタクトを一切遮断されてしまうので、仕事のこと、子供のことなど、周りの理解とサポートなしではなかなかできない。
それに私は自営業なため、誰かに仕事を任せるということが難しく、いつかは・・・とは思っていたけれど実現にはなかなか至らなかった。
だけど、すべての星が完璧な位置に突然ピタッと揃って、「準備が整いましたよ!」と告げられる瞬間というものがあるのだと思う。
今年に入ってから精神的にかなり追い詰められていたし、自分のバランスを崩して普段の生活もままならい状態だった私。
ふと、ヴィパッサナーのことを思い出し、何気なくホームページで日程を見てみたら、2週間後に家の近所のヴィパッサナーセンターで10日間の合宿が行われるみたいだけれど、新規の参加者は「long waiting list」と書いてあった。その日程は、単身赴任している夫が丁度帰ってくる時期と重なっているので子供達の面倒は見てもらえるけれど、何せ2週間後だしキャンセル待ちの人もたくさんいるみたいなので、まあダメだろうなーと思いながら申し込みをした。
その5日後、友達に会った後、ふとメールを確認すると、「合宿参加の確定のお知らせ」メールが届いた。まさかこんなギリギリで決まるとは思っておらず、驚きを隠せず。でも、申し込みをした時「これで決まったら、何がなんでもやらなくちゃだめってことだから、絶対にやろう」と決めていたので、腹を括ってすぐに参加確定のメールを送った。その帰り道、運転しながらふと空を見ると、大きな虹がかかっていた。きっと、宇宙が後押ししてくれているよ、というサインなんだろうな、と思いながら心の準備を始める。
合宿中に仕事のことや生活のことがきちんと回るように準備しておかなければならない。合宿は1週間後に始まるため毎日大忙しだった。幸運なことに、年始に雇ったパートの女性が仕事に慣れてきてほとんどの業務を任せられたことは本当にありがたかった。夫も帰宅してすぐに色々な引き継ぎをして翌日に合宿所まで送ってくれたり、子供達も、寂しそうにしてはいたけれど、快く送り出してくれて私も真剣に取り組んでこの合宿を意義あるものにしようと心を決めた。
合宿所へ向かう途中、車の中からまた虹を見た。
またもや、宇宙からの後押しかな、と思いつつ、この決断が今の私にとって必要だったことだと再確信した。
合宿生活の話をする前に、ヴィパッサナーとはなんなのか、一通り説明しておこうと思う。
ヴィパッサナー瞑想とはブッダが悟りを開いた瞑想であり、生きる苦悩や嫌悪、悲しみや渇望などから解放され、幸せと平静なマインドを目指す、実は実践的で科学的にも効果が実証されている瞑想法。
ブッダの教えによるものなので、宗教的なイメージが持たれるかもしれないけれど、合宿は非営利団体によって100%寄付により運営されている。参加者は、参加後に寄付をすることができるが強制ではない。これにはきちんとした理由があり、合宿が進むにつれなぜすべて寄付により運営されているのか身をもって知ることになる。
ヴィパッサナーにはいくつかの流派があるけれど、私が参加したのは世界でもメジャーなゴエンカ式。ビルマ生まれのインド系移民であるゴエンカ氏は裕福なビジネスマンだったのだけれど、原因不明の偏頭痛に悩まされ、世界中の名医に診察してもらったが完治せず。友人の勧めでヴィパッサナー瞑想のことを知り、合宿に参加し苦悩からの解放を体験し、ティーチャーとなる。その後インドにてヴィパッサナー瞑想の普及に務め、世界中に合宿所を設立した。日本にも千葉と京都に合宿所があるそう。
合宿では、ブッダの教えである瞑想法を実践的に教えていただき、練習・体験して身につけてもらうというのを目的としている。
合宿中はいろんなルールがあり、10日間そのルールを守るよう誓約書にサインをさせられる。そのルールとは
いかなる生き物も殺してはならない。なので合宿中に頂く食事はすべてベジタリアンの食事で、合宿所に動物の革製品を持ち込むことも禁止されている。
性行為、不貞行為の禁止。合宿所は女性と男性の生活スペースがしっかりと仕切られていて、瞑想ホール以外でお互いを目にすることはないけれど、アイコンタクトも禁止されているのでほぼ接触することはない。
嘘をつかない。合宿中は「聖なる沈黙」が実施され、他の瞑想者とのコミュニケーション(話す、アイコンタクト、手振り身振りなど)が一切禁止。書くことや本を読むことも禁止される。アシスタントティーチャーとコースマネージャーとは必要な時だけ話すことは許されている。なので嘘がつけないようになる。
盗みを働かない。
酒、麻薬の類を摂らない。常備薬等も、コース開始前にチェックされる。
そして朝の4時半から夜の9時まできっちりスケジュールが決められており、スケジュール通りに従うよう指示される。一日に約10時間の瞑想を行い、それ以外は短い休憩時間と食事の時間、そして睡眠の時間がとってあるだけ。夜の8時からは1時間強の講話ビデオを観る。この合宿のすべての教えや指示は、数十年前に録画されたゴエンカ氏のビデオによるもののみ。アシスタントティーチャーは、ごく最低限の質疑応答やサポートをするのみ。
現代の生活からしたら、規制だらけで嫌気がさしてしまいそうなルールばかりだけれど、こういう環境じゃなければヴィパッサナー瞑想を会得することは不可能だとゴエンカ氏は講和ビデオの中で何度もおっしゃっていた。これも、合宿が進むにつれて私もジワジワと実感した。
続く
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