【まくら✖ざぶとん】①⑧⑦『活弁批評』映画短評➌〈PMC ザ・バンカー〉
いつぞやの『映画月間』からの『映画曜日』と来て、此度はここに至ってついに単体作品での映画まくら、見どころはあれど今ひとつどころか過去みっつくらい魅力が伝わりづらい作品こそ短評解説の出番、てなわけで活動弁士のごとき語り口で一席を。
タイトルかつメインキャストのPMC[Private Military Company]=民間軍事会社たる雇われ傭兵部隊が守るのは国でも家でもなく報酬の金と同舟の命、関係各国の思惑に翻弄されながら与えられたミッションに挑む姿をFPS[First Person Shooting]一人称シューティングゲームを彷彿とさせるカメラワークで描く〈ミリタリーアクションムービー〉。
主人公の役どころは傭兵部隊を束ねる隊長、どんな凄腕かと思えば見るべきところは腕じゃなくて足、「義足の俺に先陣を切らせるつもりか」と豪語してから束の間、逆の足にも被弾して序盤からろくに動けなくなる始末。そこに至るまでもシナリオとしては肩透かしの連続、冒頭で冗長に知らしめた背景設定や作戦内容はあっさりとウラガエされて右腕もネガエりヒルガエり、結束を固めた矢先にあっけなく隊員が脱落する展開から読み取るべくは、ストーリーに連続性を持たせる映画的な仕様はなぞらないってこと。
主人公のキャラ仕様も映画のそれではなくゲームのそれ、すなわちその場その場で選択肢を与えて選ばせていくスタイル、新たな情報を得るたび身の振り方に迷えば自身の指針も隊員への指示もブレブレ、でも自分がロールプレイするゲームの主人公ってそんなもんか?とも思わされる一方で何度もこすってなぞっていくエピソォードがパラシュート事故のくだり、枝葉は切り捨てるけど脚本の本筋だけは守り抜きますよ、というサインであり伏線。
動けなくなってから描き出したコントラストは静のタクティクスと動のアクション、最先端ミリタリー・ガジェットを駆使して最前線にいる隊員を遠隔サポートする一方、取り掛かったのは要人の警護ならぬ救護、傭兵部隊の隊長が司令塔と衛生兵を兼ねるあたりは映画にもゲームにも類を見ない前衛ぶり、止血処置からの弾丸摘出まではよく見るが心臓の血を抜く瀉血に点滴からの輸血…と豪放磊落な鬼軍曹とはほど遠い優柔不断な小隊長が粛々と医療行為に勤しむくだりはさながら〈サージェント・サージェリー〉。
要人が死に絶えたらGAMEOVERだし援軍が間に合わなければGAMEOVER、そのほか細々とした数々のゲーム的絶体絶命ミッションを乗り越えた先に待っていたのは、待ってましたわかってましたの空中落下シーン。のっけからこのかた部屋の隅を這いずり回ることしかできなかった主人公が、空中なら自由に動けるもんね…!!ここぞとばかり縦横無尽に躍動する姿にようやく凝縮させたのが映画的カタルシスだったわけ。
肩透かしばっかり・行き当たりばったりのゲーム的シナリオと一点集中・一点突破を目指した馬鹿馬鹿しさのひとつ覚えのごとき映画的シナリオが交差して調和したところでクスクスッと漏れたのは呆れ笑い、これぞまさに泣きはせずともクライマックスッ!
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えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!