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感情には時間軸が存在するという話

コミュニケーション心理学「交流分析」が大好きなコスギです。

交流分析の理論では、人間の感情は「喜」「怒」「哀」「怖」の4つに分かれています。きどあいふ。喜び、怒り、哀しみ、怖れ、ですね。これら4つの感情には、大きな時間軸が存在します。

喜びと怒りは「現在」です。
怒りは長続きしないと言われますね。それは、怒りの感情が現在のものだからです。同様に、実は喜びも長続きしません。

哀しみは「過去」です。
涙が出るとき、これまでの過去を思い出していますよね。

怖れは「未来」です。
これから先の行く末を案じて怯えている状態です。

これらが、本当の感情。

あまり感情が発露していないという時には、単純に、思考や行動が優位になっているのではないでしょうか。たとえば今、これを読んでいるときとか。
※感情が出やすいかどうかは、交流分析では「エゴグラム」を使って判断できます。コレも面白いのでそのうちに。

時間軸がズレているとストレスになる

さて、感情の時間軸がズレている場合、実はニセの感情を使っています。
※交流分析では「ラケット感情」と言いますが、今回は割愛。

いつまでもニセの感情を使っているとストレスになりがちですが、時間軸を頼りに本当の感情をケアすると、ストレスを軽減できます。

未来に対して泣いていた娘の話をしましょう。

コロナ禍で学校が休校になったとき、身近に感染者が現れたらどうするかという話を子どもたちとしました。感染者への差別的行動が話題になっていた時期で、彼らがどのような考えを持っているか知りたかったので。

中学生になった息子は飄々としたものでしたが、小5の娘は話している途中に泣き出しました。曰く、みんなと離れてしまうことが怖い、と。

未来に対して怯えているように見えるものの、どうにも涙が止まらないので、これは過去の哀しみを感じていると察して聞いてみました。

私「昔、誰かと別れて寂しかった記憶、思い出せる?」
娘「(しばらく無言で泣きつつ)……おばあちゃんが死んじゃった時」

率直に、私の母親が亡くなったときのことを挙げてきました。私を含めた大人が忙しくしていたのと、親戚が集まって色々声をかけられて緊張していたらしく、泣くに泣けなかったようなのです。

娘「本当は大声で泣きたかったけど、迷惑になっちゃいそうだったし、我慢してたと思う」
私「そっか。じゃあ、今の(娘)がその時の(娘)に会いに行けるとしたら、どんな声かける?」
娘「うーん……人間は、はかない生き物なんだよ、って言う」
私「そう言われて、その時の(娘)はウレシイ?」
娘「は?ってなって、もっと泣くと思う……何か言わなきゃだめ?」
私「言わなくてもいいよ」
娘「そしたら、何も言わずに大声で泣いているのをギュッとする」
私「そっか。泣き止むまでそうしてる?」
娘「うん……(布団かぶってすすり泣いてる)」
私「……何か伝えたいこととか、ギュッてしてる(娘)は何か言ってる?」
娘「ううん……。……でも、泣き止んだ」
私「そっか、泣き止んだんだ。そのあとどうする?」
娘「バイバイってする」
私「へ?すぐ離れちゃうの?」
娘「(キョトンとして)うん、泣き止んだし」

あまりの急展開で私が拍子抜けしたくらいでしたが、このあとで先程の話をしてみたところ、本人も「あれ……あれ?さっき泣いてたよね??」と笑えるくらいになっていました。

そして、「自分がコロナにかかったら怖いけど、その時になったら考える。今は手洗いとかマスクとか、できることをする」と話してくれました。

娘の場合、私が深く関わったことで安心できたというのもあるでしょうが、感情の時間軸に合わせてケアすると、ストレスが軽減されるという例でした。

このように、本来の感情の時間がズレて、ニセの感情を使っているのはよくあります。だって使い慣れてて便利なんだもの。ネガティブなコミュニケーションになる例は、前回の「心理ゲーム」についてのnoteを参考にしてください。

では、どんなズレ方があるのかを考えてみましょう。

未来に対して泣いている / 過去に対して怯えている

未来への怯えがあるか、過去に悲しみがあります。

「哀しみ」と「怖れ」のどちらかがホンモノの感情です。過去に対する不安は、例えば「許されない秘密がバレたらどうしよう……!」といった場合ですね。これは未来への怯えというのがわかりやすいです。

「哀しみ」なら過去の感情を抱きしめてあげればいいし、「怖れ」ならシミュレーションしてみると冷静になれます。

未来に対して怒っている / 過去に対して怒っている

これも、未来への怯えがあるか、過去に悲しみがあります。

「怒り」は本来、目の前に起きたことに対する突発的な感情なので、長続きしません。「そうは言っても、すんごくイライラするんだよ……!」と続いている場合、時間軸がズレています。

本来の感情は、そのイライラが未来に向いている場合は「怖れ」、過去に向いている場合は「哀しみ」ですね。

子育てでイライラするのは、「この子は本当に大丈夫なんだろうか」という未来への怯えと言えるでしょう。同じような悩みを持つ人と話をしたり、先輩に話を聞いたりして、「怯え」を解消するとラクになれます。

もし怯えを解消しようとして泣けてきたのであれば、今度は過去の哀しみに気づいた証拠。これらが積層していることも珍しくないんです。

このように、「過去・現在・未来」の時間軸を頼りにひとつずつ解消していくと、どんどん本来の感情を取り戻せるようになります。アドラー心理学で言えば、「課題の分離」をしていくイメージですね。

大抵の場合、過去に対する哀しみを持っている事が多いのですが、その辺りは次回の「禁止令」で「逆鱗」を探ってみましょう。