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二葉亭四迷(6) 長谷川辰之助の人生総覧2/4
この記事は長谷川辰之助(二葉亭四迷)の人生のポイントを抑えてまとめた記事である。また、参考資料は『二葉亭四迷:くたばってしまえ(ミネルヴァ日本評伝選)』としている。また、第二章は二葉亭四迷として生きた<文学>の章であり、各々の作品紹介にて紹介するとする。
<第三章 実業の世界へ>
・文学の道を外れる
二葉亭は東京外国語学校を持ち前の潔癖さから飛び出した。そうして今度は読書界からは概ね好
芥川龍之介(4) 「蜃気楼」についての感想及び考察2/2
<その4>
これまで、志賀直哉の「焚火」を、芥川が二つの心境小説にどのように利用してきたかを見てきたが、「海のほとり」は初めての心境小説だけに、種本への依存度がかなり高い事は明白であった。それに比べれば「蜃気楼」はその度合いが低く、枠組みにおいては依然として「焚火」に負いながらも、極力自らのオリジナリティーを発揮しようと努めている事が見て取れる。以下そのような部分を、「焚火」離れした素材を中心
芥川龍之介(3) 「蜃気楼」についての感想及び考察1/2
<その1>
芥川龍之介の晩年の心境小説「蜃気楼」(『婦人公論』昭和二年)には、周知の如く、初出時には「或いは「続海のほとり」」なる副題が付けられていた。それは今作品には、一年前の彼の作品——初めての心境小説である「海のほとり」(『中央公論』大正十四年)との繋がりが意識されていたからであろう。「海のほとり」は芥川が作家活動を開始したばかりの、大正五年初秋の上総一宮海岸での体験——大学卒業後の夏休
芥川龍之介(2) 「語り」についての考察2/2
<その4>
芥川の著作を概観した時、小説が言文一致体で書かれているのに対して、詩の方は、殆ど全て文語体で書かれているのが目に付く。芥川の中にある二律背反する志向はここで如実に現れている。一定のリアリズムを必要とする小説には言文一致体を、一定のリズムを必要とする詩に於いては、韻律を持つ文語体を使い分けているのである。また「骨頭羹」(『人間』大正九年)など一部の随筆は、文語体で書かれているものがあ
芥川龍之介(1) 「語り」についての考察1/2
<その1>
芥川龍之介は新思潮派の一員として生涯にわたり小説を記した。その技法は新技巧派と言って理知的たるを重視し、物事を冷静に書き表すのを特徴としている。また、新思潮派は芥川の他に久米や菊池などが含まれて、文芸雑誌『新思潮』は大正文壇勢力の一角を有した。
さてそんな芥川の小説は『語り』の小説だとも言われている。つまり彼の小説には殆ど必ず顕在化した「語り手」が存在する。顕在化した語り手とは