タクシー in china 2009
昨日書いた下書きを寝ぼけてごっそり削除してしまって、ひーひー言いながら書いています。
この文章は、わたしが10年前の2009年3月から一年間、中国に留学していた頃の回顧エッセイです。毎週火曜19時に更新しています。
疑惑の中国一周旅行から帰ってきて、改めて長春のタクシーの治安の良さと安さに驚く。6都市くらいをまわってきたけれど、初乗り運賃が長春より安いところを見たことがなかった。
残念ながらいくらだったか忘れてしまった・・・13元くらいだった気がする。上海は22元くらいだったと思うので、めちゃ安だ。
ちなみに中国のタクシーには防犯のため、一般的に運転席と後部座席の間に透明の板や、金属の柵があることも長春を出てから初めて知った。
そのためか。寒い時期はタクシーが全然捕まらなくて涙も凍る。
わたしたちの住んでいた寮は中心部から車で20分くらいのところにあって少し遠い。
日本の感覚だと遠距離のほうが一回の運転でたくさん稼げるから喜ばれがちだけど・・・平気で乗車拒否されてしまう!マイナス25度の寒空の中、一時間以上もタクシーが捕まらないこともざらだった。
運転手曰く、
「遠すぎて行きたくない」
「帰ってくるのが面倒くさい」
「もう仕事の時間が終わるので乗せたくない」
とのこと。
挙句の果てには「町の近くの寮になら行ってやる」!
さすがにその日の気分で寮を変えるわけにはいかない。
人を乗せるのが仕事だろう!と言い返すがハンドルは彼のものだ。
やっと乗り込んだタクシーでも「ごめんなさい~」なんてへこへこしてはいけない。足元をみられて遠回りされてしまうから注意が必要。
しかも留学生寮に帰る女の子だとなおさらだ。
だからタクシーに乗り込む時も、扉をバーン!と閉めてドカーッ!と両手を広げ足を組んで強そうに見せないといけない。毅然とした態度が重要なのだ。
タクシーの運転手がニコニコして観光スポットの話を振ってきたりするときは特に要注意。運転手の好意により気前よく市内観光をしてくれる場合があるが、もちろん運賃は自分が払うのである!!本当に行きたければそれでも良いが、家に帰るのにわざわざ観光する必要はない。
ともかく自分を強くみせて「こいつは油断ならないな。」とちょっとでも思わせることが重要なのだ。何かあった時にも主張するぞ!と。
しかし!もっと気をつけなければいけないのは帰国後であった。
日本のタクシーで同じことをやってしまったことがある。
バーン!と扉を閉めて(自動ドアなのを忘れていた)ドカーッ!と両腕を広げて座り、「〇〇町(自宅)まで」と偉そうにした結果「お前みたいな女はろくな人生を生きられない」みたいなこと(そんなひどくはないがとにかく強烈な一言だった)を言われ、ものすご~く険悪なムード。そして俺はお前の家の道なんか知らねえよとばかりに変なルートで帰るはめになってしまった。
「やってしまった!」と思った。
当然のことながらタクシーの運転手を尊敬していないだとか、気にくわないだとか、そういう気持ちは毛頭なかった。
日本でタクシーに乗るのも久しぶりだったし、それに夜中に女一人だったから弱みを見せてはいけないと無意識に考えていたのかもしれなかった。
中国では自分を強く見せることで対等になるけれど、日本では自分を弱く見せることで対等になるのかもしれない。
そんな生き方は少しわたしにはきゅうくつかな、でも自分を抑えていた方がみんな気持ちよく過ごせるかもなんて考えながら、帰国してからはだんだんと日本式の自分を弱くみせる生き方に戻っていったのだった。
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