ビヨンセの逆襲
TEXAS HOLD ‘EMが話題になっている。
今のところSNSの評価はこんな感じのイメージ
ビヨンセのファン。いつも最高でありがとう!
ビヨンセが白人の保守層に喧嘩を売った! ギャフンと言わせてやれ!
カントリーを白人から取り戻せ。
報道がテイラーばっかでうざい。やはりビヨンセの方が偉大。
これ、カントリーなの?
ビヨンセ苦手だけど、この曲は結構好きかも!
一番多いかなと感じたのが、2と1と6かな。
1は、いいね!
2は評論家に多いかな? まあでも、そうだよね。
3は個人的に言い過ぎ。黒人と白人の文化それぞれに影響受けたんでねえの。
4は知るか。彼氏のチームがスーパーボウル勝ったんだから諦めろ。ビヨンセもテイラーもどっちも偉大だよ。お前が決めることではない。差別発言をしている奴がいたが、本当にビヨンセのファンですか?
5は言いたいことはわかるけど、まあタイトルに生まれ故郷入ってるしねえ(カントリーはマジでわからん)。
6みたいに思えた人が一番羨ましい。新しい価値観を覚えられるなんて、最高の体験だぞ。
私は2と、ちょっと5だったが、私はあまりビヨンセにピンと来ない人生を送ってきたのである。
子供の頃、思春期の頃にディスティニーチャイルドとかビヨンセソロデビューの時代を過ごしたはずだが、18歳の頃にはDr.Feelgoodを聴いてる野郎だったのでしかたないか。
もちろん新曲が出たら一応一回くらいは聴くが、うーんー……という感想しか抱いたことがない。いくら評論家が大絶賛してもである。
それでも2018年のコーチェラはとんでもないものだと感じたし(あれがコーチェラを迷走させる一因だったと思っている)、やはり私なんかより世間の評価の方が正しいと思う。
新しいものを作っているみたいな評価が、分かっていらっしゃる立場的な方からされる印象だが、そう感じないのが理由だと気付いたのは結構前である。個人的には、流行りのものを取り入れるのが上手な方という印象の方が強い。
クリエイター陣には私が好んで聴くアーティストが入ることもあるが、そこまで尖ったことはしているように思えない。
そもそもリスナーがそこまで求めていないし、やりすぎると理解されないだろう。
ここがポイントである。
ビヨンセは流行りを敏感に取り入れるけど、やりすぎはしない。
あくまでもビヨンセの音楽として仕上げていると感じて、物足りなくなっているのだと思う。
昔ふと知り合った方がビヨンセのMVを見て、「これが新しいんだよねー」みたいなことを言っていて不思議に思うことがあった。その頃私は、フジロックとかのチラシで下の方に書いてる知らないアーティストを追うのに必死だったのかな。
まとめると、色んなジャンルに手を出すけど、振り切った作品は出さない。
なので、ポップスの名曲にはなり得ても、そのジャンルの中の名曲には選ばれにくい印象。おそらく私の知識不足だろうが。
とにかく、もっと欲しいなーという感想しか抱かない悲しきモンスターなのだ。私は。
なのでビヨンセが理解できないのは大方私の趣味嗜好である。
メッセージを届けようにもマニアックすぎたら一部しか見てくれない。彼女はかなりメッセージ性が強い方と見受けられるので、多くの方に届くような曲作りを志しているのかもしれない。
しかしそんな私でも、ビヨンセがグラミーを獲っていないというのは流石におかしいと感じている。あれだけ売れて、色々挑戦してるのにね。
下らない差別のせいで権威が地の底まで落ちたグラミー賞。残ったのは歴史しかない、日本レコード大賞のアメリカ版。
価値観を変えるというのがいかに難しいことか。
今回一番ダサかったのは、ビヨンセを流さないと言ったラジオ局である。
結局リスナーからの批判を受けて、「リクエストたくさんあったんでじゃあ流すわ」というニュアンスのカッコつけた態度をとっていたが、とにかくダサい。
「何があってもウチはビヨンセを流さない。そういうスタンスなんで文句あるなら他所行け」
はっきり言って、批判など無視すればよかっただろうに。
もしくは流すなら
「先ほどはビヨンセに対する無礼を働き、大変申し訳ありませんでした。これからは古い価値観は全部捨てて、人種問わず良いと思ったカントリーソングを流す番組作りをしていく所存でございます。何卒、今後ともよろしくお願いいたします」
くらい言ってからの方が良かった。
今のところは、「俺は何も悪くないけど、お前らがそう言うから仕方なく流してやるよ」としか聞こえない。
メッセージ性など元々持ち合わせずに、中途半端なプライドで脊髄反射で生きてきたのだと思わずにいられない。
この局が今後何かを発信しているのを聞く機会があったとしても、私にはきっと響かないだろう。