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2024年8月「読んだ!」マンガまとめ

こんにちは。マンガライターのちゃんめいです。

新旧問わずに今月読んだマンガを全て紹介する本企画。元々マンガが大好きで毎月たくさんマンガを読んでいましたが、マンガライターとして活動し始めてから読む量が尋常じゃなく増えました。できることなら全作品しっかりとした漫画評を書きたい! けれど、現実的になかなか難しい。いやでも、せめてあらすじや一言感想メインだけでも!……という謎の使命感からこのnoteが誕生しました。

ちなみに、「Real Sound ブック」さんでは“今月発売された新刊”というしばりでおすすめのマンガを紹介しているので、とにかく新作が読みたい! という方はそちらもぜひ。

読み応えのある、または濃密な漫画評が読みたい方にとっては、こちらのnoteはかなり薄く感じるかもしれませんが、もし良ければ読んでいってくださいませ。この記事があなたにとって新たなマンガとの出会いになりますように。

▼ 過去の記録はこちら


サユリ

怨霊・サユリが棲まう家に引っ越してきた神木一家に降りかかる惨劇。そして、残された少年・則雄とその祖母がサユリに復讐するさまを描いた新感覚のホラー作品。

今月は地震のニュースで心が休まらず、なんだか鬱々とした気分でスタートしたのですが、どうにか元気を出したくて読み直したのが押切蓮介先生の『サユリ』でした。久々に読んでみて、やはり心と腹に力が入りますね。今日も明日も明後日も“命を濃く”して生きよう! と。読了したあとの1〜2週間くらいは生活リズムが恐ろしいほど整う(整えようと頑張る)ので、気持ちをシャキッとリセットしたい時に大変おすすめです。

ちなみに現在、実写映画「サユリ」が絶賛公開中なのでこちらもぜひ。感想はFilmarksに書いてます。ネタバレ有りです。

死びとの恋わずらい

CORECOLOR」で毎月連載している漫画コラム。今月は夏らしくホラー回にしよう! というわけで、伊藤潤二先生の『死びとの恋わずらい』について書きました。伊藤潤二先生といえば『うずまき』『富江』など数ある名ホラー作品があるにも関わらず、なぜ私は『死びとの恋わずらい』にこんなにも惹かれてしまうんだろうか? 今回改めて読み返して感じたことをコラムに詰めましたのでぜひに。

彼女はNOの翼を持っている(1巻)

会社の同僚や上司、パートナーや家族間で「NO」を突きつけたい場面に遭遇しても「NO」をなかなか言えない、うまく咀嚼できない人にすすめたい本作。

主人公は、自分はもちろん周囲の人たちの「NO」の声に真摯に耳を傾ける高校生・つばさ。そんな彼女が、なかなか「NO」といえない人たちの想いや関係性のもつれを少しずつほぐしていく。ただ、本作はそういったたくさんの「NO」をつばさが直接的に解決する物語ではない。なぜ嫌なのか? どうすれば良いのか? …….時には大人や友達の力を借りながら一緒に「NO」と向き合い思考していく物語。

そんな彼女の姿を見ていると、どんな瞬間でも自分が抱いた「NO」は絶対に手放してやるもんか、と心に火が灯るような感覚がある。例えすぐに状況が変わらなくても、この「NO」を持ち続けることは、きっといつか自分はもちろん、誰かを照らす光になるかもしれないから。

サイコ×パスト 猟奇殺人潜入捜査(1〜8巻)

「LINEマンガ」のミステリーランキングで常に上位にいるもんだから気になって読み始めたのだが、これが超面白かった…..! もっと早く出会いたかったすぎ! 警察官が猟奇的事件の被害者の中に入って、事件を未然に防ぐタイムリープ&異能力もの。結構グロめだけど、事件解決までの道筋がとても凝ってて読み応えがあります。

ガラスの仮面(1〜47巻)

またもや「LINEマンガ」の話なんですが、8月はなぜか『ガラスの仮面』全話無料という神キャンペーンをやっていたんですよね。新巻出るのか!? と思ったけどそうでもなさそうだし、多分「花とゆめ」50周年フェアの一環だったのだろう…….。

連載開始から40年以上経つ今でも愛され続ける、言わずと知れた演劇マンガの金字塔。私は高校生の頃に出会ったのですが、周囲に読んでいる友達がおらず、試しに祖母と叔母に「ガラスの仮面って知ってる?」って聞いたら、鬼ほど盛り上がったのを今でも覚えています。

『ガラスの仮面』といえば、「恐ろしい子……!」とか白目とか。ある種のエキセントリックさがフォーカスされがちで、つい面白文脈で語りたくなるけども。ぶっちゃけやってることはほぼ映画「セッション」なんですよ。才能と狂気のぶつかりあい!! 激アツ!! 

そして、今回の全話無料で(単行本持ってるくせに)うっかり n 回目の再読をしてしまったのですがアラサーになってから読み返す『ガラスの仮面』よ…….。相変わらず姫川亜弓の高潔さには痺れてしまうんだが、なんかそれよりも水城さん&聖さんにむしょーに惹かれました。2人ともクールだけど、真澄の絶対的な理解者である所とか、あの温かい眼差しが良いよね。あと演劇「通り雨」めっちゃおもろいな?! 年を重ねるごとに胸に刺さる演劇にも変化がありましたよ、という発見。

天使なんかじゃない(全8巻)

すみません、またもや「LINEマンガ」の話です。矢沢あい先生の大名作『天使なんかじゃない』がこれまた無料公開されていまして。いや、読んじゃうよね??!! 何回も読み返したことあるし、単行本も持ってるけどさ!!

ただ、今回読み直してちょっと面白かったのは、 「LINEマンガ」のコメント欄で「どうしてアキラはいつも外で待ち伏せしているんですか?」と質問している方がいて。それに対して「昭和に青春時代を送った者です。この時代はスマホ、携帯はおろか、ポケベルもない時代だったので、そうするしかなかったんですよ〜」的な返答をされている方がいたのですが、時代を超えた読者の交流&時代考証(ちょっと意味違うけど)が行われていて非常に和みました。

写らナイんです(1巻)

 夏といえばホラー!  だけど、ふとした瞬間に怖〜いシーンが蘇ってしまうガチすぎるホラーはちょっと......なんて方におすすめしたい作品。

霊に追われる少年と霊を追う少女による、世にも奇妙なオカルト青春劇。もう少し詳しくいうと、霊が視える少年と霊が全く視えない少女という斬新なボーイミーツガール設定なんですけど。その設定もさることながら、とにかくホラーとギャグの応酬が天才的すぎる!

ページをめくるたびに自分は怖がっているのか笑っているのか........。とにかく感情が忙しい本作。怖いだけじゃない、いや、怖くても最後には笑いと青春の輝きでぎゅっと包み込んでくれる唯一無二の作品。

わたしがぼくになる話 ~臆病者の性転換日記~

幼少期より性に違和感を感じていた漫画家・七野ワビせん先生。そんな先生が、自身の性を巡り悩んできた人生を振り返りながら、自分自身を浮き彫りにしていく。七野ワビせん先生の自分自身や周囲の環境を俯瞰する力、言語化能力がとにかく凄まじい。本作を読んだ流れで、次に紹介する『我々は病んでいる!』も読了。(続く)

我々は病んでいる!

(続き)ご本人にとっては苦悩の歴史であるので心中お察しするけれど、悲壮感というのか、その辛さを全面に出さない、フラットな絵柄がとても良いなと。だからこそ読み手も一方の立場に肩入れすることなく、本作を俯瞰して捉えることができる。

ハネチンとブッキーのお子さま診療録(1〜2巻)

『マイガール』佐原ミズ先生の最新作。メタルが好きすぎてメタルメイクをしている若き小児科医・琴吹(ブッキー)と、妻を亡くして二人の子育てに奮闘する会社員羽根田(ハネチン)が織りなす医療ヒューマンドラマ。小児医療をテーマに子育ての悩み、そして親が成長していく様子を温かな筆致で描く。もうブッキーが素晴らしすぎて……! しかも彼のご両親の話もめっちゃ良くて、だからブッキーはブッキーみたいに育ったんだなぁと。もう、毎話沁みる作品。

ヒトグイ

『食糧人類』でお馴染みの蔵石ユウ先生×イナベカズ先生が放つWebtoon『ヒトグイ』。 最初から元気に絶望フルスロットルで最高過ぎたわ……。あと、感覚的に迫ってくる怖さがあって読んでると「こっち来んな!」と本気で思います。

きみの絶滅する前に

何かと“生産性”という物差しで価値を決めたり、切り捨ててしまいがちな私たち人間に刺さる1冊。詳しくは「ダ・ヴィンチWeb」さんでレビューを書いたのでこちらをぜひに。

雷鳴りて春来たる(1巻)

大正時代に職業婦人を夢見る少女・ハルが100年後の令和へタイムリープし現代のJKになるお話。 時代を超えた異文化交流……という感じで、ギャップによる笑いはあれど、根底には時代関係なく“1人の人間”として尊重されるコミュニケーションがあってとても胸を打たれた。

ヒドゥラ ~無限惨虐ゲーム~(1巻)

これといった夢や趣味もなく日々淡々と生きている男性が、突如としてデスゲームに参加させられることに。設定も展開もめっちゃ“急”なので、とてつもない疾走感がある。

流水りんこのアーユルヴェーダはすごいぞ~!

友達から「今度、サッシー(速水りんこさんの旦那さん)のインド料理屋行こうよ〜」と言われ。まだ行けていないのですが、なんとなく流水りんこ先生の作品を改めて見返していたら、これ読んだことない! そしてめっちゃ興味ある! と思って手に取ったのがこちらでした。

渡印歴30年以上の流水りんこ先生がアーユルヴェーダの専門病院に入院してみた……という、現地での実体験を赤裸々に描いたコミックエッセイ。アーユルヴェーダって名前だけは聞いたことあるし、なんならアーユルヴェーダ風(?)のマッサージにも行ったことあるんですけど、全ッッッ然違うんだなと衝撃。基礎的な所からとてもわかりやすく解説してくれるので、読み応えがあって面白かった。ーーインドのアーユルヴェーダ専門病院を体験する。人生のやりたいことリストに追加しちゃいました。

恋愛的瞬間(全3巻)

恋愛クリニックを営みつつ、大学で恋愛心理学を教えている森依四月。そんな彼の元にやってくる患者たちの物語。恋愛と友情の違いは? 人を好きになったことがない人はどうすれば良い? など、恋愛にまつわる人間の深層心理を掘り下げていく。恋愛の悩みを持っている人はもちろんなんだけど、自分の感情を噛み砕くのが苦手な方にぜひおすすめしたい。学びしかないので……。あと、舞台演劇みたいに美しく、優雅に展開していく所も好きです。

七つ屋志のぶの宝石匣(22巻)

質屋を舞台に繰り広げられる宝石ミステリー。今巻はミステリーより宝石&質屋ネタ多め。大阪と東京の“あきちゃん”が言い合いっこしてたり、しのぶを取り合っているのが大好きなので、個人的には非常に高まる最新巻だった。

カッパのカーティと祟りどもの愛

宮崎夏次系先生の最新作きたぞ.…..。号泣するとか叫ぶとか、直接的な表現を介さずに、こんなにも人の“傷”をじわじわと表現して心にブッ刺してくるマンガってそうない。

一緒にごはんをたべるだけ

一緒に餃子作りながら「人生最後は何食べたい?」と話す2人。非常にほんわかしながら読んでいたら、ラスト1ページでぐわっと引き戻された……。確かに、人間にとって不可欠な食という行為を共にしたい人って、“愛”そのものだよな。なんだかエグいところブッ刺してきそうな斬新なグルメ漫画になりそうな予感がしていて、新連載2話目ですが今後の展開がすごく楽しみ。

2024年8月雑記🔥

ここからは毎月恒例、今月のお仕事報告です。

▼ 「週刊スピリッツ」36・37合併号:『BLUE GIANT』シリーズ・石塚真一先生 ×『スーパースターを唄って。』薄場圭先生 特別対談

取材&執筆を担当させていただきました。 ジャズとヒップホップ、漫画で音楽を描くお二人の大変密度の濃い対談です。ぜひに!

▼ 「ビッグコミックスペリオール」18号:映画『夏目アラタの結婚』柳楽優弥さん 特別インタビュー

映画『夏目アラタの結婚』で夏目アラタを演じる柳楽優弥さんの特別インタビューを担当させていただきました。柳楽優弥さんが語る原作と映画の魅力、そして“堤組”ならではの撮影裏話をぜひお見逃しなく。映画は9月6日(金)より公開です。

▼ 「コレカラ」連載コラム:あちらのお客さまからマンガです 第18回

連載コラム18回目は、夏らしくホラー! というわけで、数あるホラー漫画のなかでも愛してやまない伊藤潤二先生の『死びとの恋わずらい』について書きました。

その他執筆記事一覧はこちら

8月は地震に台風、とにかく災害の脅威を改めて実感した月でした。ただでさえ不安で気持ちが落ち込むのに、加えて台風とセットでやってくる気圧をモロにくらい、体調もガッタガタ!(みんなもそうでしたよね、俺らまじでよく乗り越えた8月🤝)

でも、そんな状況でも容赦無く締切はやってくるし。いや、なんでこんな目に見えないものに左右されなきゃいけないの?! ずっとやりたかった仕事だから100%万全な状態で臨みたいんだが?! みたいな……..。段々、どうしたらコレ(現状)を乗りこなせるんだ? 的な気持ちになっていきました。 

そんなわけで、今月から新たに利用し始めたというか、新習慣として取り入れたのがジャーナリングアプリ「muute(ミュート)」。

1人Twitterみたいな感じで、タイムライン形式で自分の心境を書き込めるんだけども。その時の自分の感情(嬉しい、不安、満足、平穏など)や、何に対しての感情なのか(仕事、友達、健康など)を細やかに、でもとても気軽に記録できるんです。

その記録をもとに、自分の感情の揺れ動きや傾向をグラフにしてくれるんだけど、数字とかではなく色で表現してくれるから小難しいことを考えずに「あぁ、私はこういうことに感情が揺れがちなんだな」とか「毎日この時間帯になるとちょっとモヤりがちなんだな」とか、直感的に“自分”が掴めるようになっていく。

だからといって、自分の感情がフラットになるとか、怒りや不安が消えることはないんだけど。自分で自分を把握しているという状態が、なんだか小さな安心に繋がる。どんなに今感情がぐっちゃぐちゃでも、この波はいつか過ぎ去るんだって思えるし、過去の傾向をもとに自分で色々と打ち手を講ずることだってできる。

自分の取説、拠り所…….。うーん、良い例えが思い浮かばないんだけど、「muute(ミュート)」を利用してまもなく1ヶ月だけど、今後も続けていこうと思います。みなさんもぜひ。

最後に、致死量の太陽と宮本浩次を浴びたロッキンの写真で〆。
(ちなみに9月はエレカシを見にひたちなかまでエンヤコラ)

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