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2024年11月「読んだ!」マンガまとめ

こんにちは。マンガライターのちゃんめいです。

新旧問わずに今月読んだマンガを全て紹介する本企画。元々マンガが大好きで毎月たくさんマンガを読んでいましたが、マンガライターとして活動し始めてから読む量が尋常じゃなく増えました。できることなら全作品しっかりとした漫画評を書きたい! けれど、現実的になかなか難しい。いやでも、せめてあらすじや一言感想メインだけでも!……という謎の使命感からこのnoteが誕生しました。

読み応えのある、または濃密な漫画評が読みたい方にとっては、こちらのnoteはかなり薄く感じるかもしれませんが、もし良ければ読んでいってくださいませ。この記事があなたにとって新たなマンガとの出会いになりますように。

▼ 過去の記録はこちら


センシティブ・ボーイ(1〜5巻)

性被害のトラウマと“普通”の狭間でもがく、男子高校生の物語。女性が主人公の物語はよく見かけるけれど、男性を主人公に設定しているのは珍しいなと思い手に取りました。事件以来、女性に突然触れられたり、過剰な接触をされるとPTSDを発症してしまう主人公の楓。当事者である楓の感情、そんな彼を周囲で見守る友人、そしてカミングアウトされた彼女側の葛藤、あらゆる角度から性被害について真摯に描いている作品。ちなみに、1~35話が楓編、以降は友人の依澄編と焦点が当たるキャラとテーマが変わっていきますが、共通しているのはそれぞれ人に言えない深い傷を抱えていて、世間一般的な“普通”になれない自分自身に苦しんでいるという点。読み進めていくたびに『センシティブ・ボーイ』というタイトルが一層心に重くのしかかってくる感じがあります。

GALAXIAS(1巻)

ーー不思議な青年と少女が出会い冒険に出る。『GALAXIAS』を一言で表すなら「王道ど真ん中のボーイミーツガール冒険譚」なのですが。その王道をより強固なものにする、圧倒的な力強さと輝きが本作には詰まっているなと。「コミックナタリー」さんでレビューを書かせていただいたので詳しくはこちらをぜひ。

罪と罰のスピカ(1巻)

『降り積もれ孤独な死よ』井龍一先生と「月マガコミックデビュー!」大賞受賞の瀬尾知汐先生がタッグを組んだ本作。 理不尽な今の世の中、こんなダークヒロインが居てくれたらと思うほど爽快感溢れる展開。一方で、そんな彼女を突き動かすのは正義感ではなく……という底しれない歪さ。この両極端な組み合わせが病みつきになります。

ボールアンドチェイン(1〜2巻)

夫に家政婦扱いされ、家庭内別居状態のあや。性自認に揺らぐなか、男性のパートナーとの結婚を控えているけいと。妻であること、女性であること……社会的立場や性別によってあらゆることが縛られてしまう窮屈さと、そこから一歩踏み出そうともがく姿を描いたヒューマンドラマ。特に、けいとを取り巻く周囲の人々の無邪気な悪意というのか、想像力のない無遠慮な発言はなんだかすっごくリアルだなと。タイトルの『ボールアンドチェイン』(ball and chain)は、調べたところ「鎖に金属球をつけた足かせ」「行動の束縛」を意味し、侮蔑的表現で「女房」「かみさん」を指すと知り、一層2人に思いを馳せてしまった。

娘はいじめなんてやってない

KADOKAWAから刊行されている「シリーズ立ち行かないわたしたち」シリーズ。

思いもよらない出来事を経験したり、困難に直面したりと、ままならない日々を生きる人物の姿を、他人事ではなく「わたしたちの物語」として想像できるような作品を刊行します。見知らぬ誰かの日常であると同時に、いつか自分にも起こるかもしれない日常の物語を、ぜひお楽しみください。

https://www.kadokawa.co.jp/topics/9159/

という趣旨のもと、これまでに「タワマン」「SNS」トラブルや「教育虐待」など様々なテーマの作品が刊行されてきたのですが、『娘がいじめをしていました』のしろやぎ秋吾先生が再び「いじめ」を描くと聞いて!! もうすぐに読みました。

娘がいじめをしていました』はタイトル通り、自分の娘がいじめの主犯者だった……というお話で、母親は当然自分の娘だから「守りたい」。でも、被害者の児童の様子を知ったこと、そして過去に自分がいじめられていた経験から「許せない」という気持ちが自分の娘に対して徐々に芽生えていく。いじめの加害者側の葛藤を描いた作品です。

対して、今回の『娘はいじめなんてやってない』は、前作と少し似ていて、自分の娘がいじめに加担している…..と知らされるところから始まるのですが、実はそのいじめの被害者はかつて自分の娘をいじめていた児童だった。つまり、加害者と被害者が逆転する物語なのです。

一口にいじめと言っても、分かりやすく殴る、罵倒を浴びせるなどではなく、SNSを使って精神的攻撃を行うシーンも細かく描かれており、時代と共にいじめが複雑化されているのだなと本作を読んで改めて感じました。

そして、『娘がいじめをしていました』と同様に、物語の閉じ方が本当にすごい。許す、許さない、とかそんな生やさしいものではなく「いじめ」がどれだけ重い犯罪なのか。取り返しのつかなさと、それに気付かない人間の恐ろしさをすごくサラッと描いているところが本当にすごい。

子どもが欲しいかわかりません

引き続き「シリーズ立ち行かないわたしたち」シリーズより。こちらもタイトル通りの作品で、「子どもっていつ産めばよかったんだっけ?」と。結婚するしない、子供を産む産まない……人の幸せの価値観や、生き方の選択は自由だけれど、出産ばかりはみんな等しくタイムリミットがあるわけなんですよね。そんなタイミリミットの狭間で揺れ動く30代後半の女性の物語。昔よりも妊娠・出産に関する情報が溢れ、選択肢も増えている(とも一概に言えないけれど)今、自分が後悔しないために計画的なロードマップを敷いている人が多い印象を受けるのですが。この主人公は良い意味で終始ふわ〜っとしている。人によっては、子どもが欲しいかどうかもっと早く考えるべき! と感じる人もいるかもしれないけれど、そうだよね、迷って良いんだよねと、ある種の希望を感じる一冊だった。

恋じゃねえから(1〜5巻)

今月、11月21日に最終回を迎えた本作。最終回を記念して「モーニング・ツーWEB」で全話無料公開(最終回を除く)されていたので、自前の既刊5巻に加え、単行本発売されていない最終回までの話数を一気に読了。創作(アート)や恋愛がはらむ加害性を描いた作品で、加害者を裁く、許す、許さない、ということではなく、そもそも「人の尊厳」とは何なのか、守るということはどういうことなのか? と。これまでに透明化されてきたものを圧倒的なセリフの力で描き切っていたと思う。私のなかでずっと忘れられない作品になりました。

左門くんはサモナー(全10巻)

めっちゃ良い人な天使ヶ原さんが召喚術士(サモナー)の転校生・左門くんに振り回されるオカルトコメディ。パロディネタ、ボケとツッコミのワードセンス……もうギャグの描写が天才的でずっと爆笑! なんだけど、最終巻にかけて「あ、これギャグ漫画じゃなかったんだ」と思うくらいの深いテーマというか展開があり驚いた。ギャグ漫画は一度読んだらそう何度も読み返すタイプではないのですが、この作品はまた読み返すと思う。

超巡! 超条先輩(1〜3巻)

『左門くんはサモナー』の沼駿先生が現在連載中の作品がこちら。超能力×ポリスコメディものなのですが、安定の神がかったギャグ力よ……! 大人になってからそんな爆笑することない(よね?)のですが、ちょっと斜に構えた感じのブラックジョークがたまらん。

おちたらおわり(全10巻)

タワマンを舞台にしたドロドロヒューマンドラマ。物語の舞台がタワマンということで、経済格差(何階以上に住んでいる人じゃないと交流しない)からくる人間関係の闇を描いているのかと思いきや、主人公に個人的な愛憎・私怨を抱いているサイコパス女のドロドロ劇! という感じでした。しかしながら、すえのぶけいこ先生が描く女性の“あの顔”。『ライフ』の愛海の時もすんごかったのですが、女性がとてつもない恨み嫉みなど、どす黒い感情を抱いた時の表情の描写よ……。思わず魅入ってしまうほどの吸引力がありますね。

かつて女の子だった人たちへ(16巻)

略奪癖のある女、推し貢ぐ女、スピリチュアルに心酔していく女…….。あらゆる角度で自らを滅ぼしていく女性を描いた作品。1〜5巻までのレミ編は、個人的にはレミが完全なる悪って感じがしなくて、これからの行く末が気になる主人公だった。みんな幸せになって、というか救われてほしい。

パーフェクト グリッター(新連載)

「明日カノ」をのひなお先生の新連載です。まず、をの先生が描く美女!  儚くて眩しくて最高過ぎます。あと1話でイチカが言う「仲良くできそうな人とだけ一緒にいればいい」ってセリフがすごく刺さった。私も20代前半の時は本気でそう思ってた。自分の中の絶対的な世界と人だけを見つめていたな。

「ダ・ヴィンチWeb」さんで、新連載『パーフェクト グリッター』のテーマやタイトルが決まるまで、そして気になる見どころについて、をの先生にお話を伺ったのでこちらもぜひ。

ぬらりひょんの棲む家(1〜6巻)

読み進めていくうちに「あ、そういう話だったの?!」と驚かされるタイプの漫画があると思うのですが、『ぬらりひょんの棲む家』は完全にそれ。ぬらりひょんとは一体誰のことなのか……。試し読みで離脱した方はぜひ読んでみてほしい。

覆面の羊(全6巻)

人間のクローンを作る組織を巡る、ヒューマンサスペンス。大切な人を蘇らせることができるのなら…….。その“大切”というのは、決して愛からくるものだけではなく、私利私欲に塗れたものもあるわけで。それぞれの登場人物がクローンを作ろうとする理由になんだか深く考えさせられてしまった。

嫌がってるキミが好き(全8巻)

嫌がってる顔を見ることに興奮するという、異常性癖の持ち主のまこと。対して、最初はドン引きしながらも、それを受け入れるうちに自分の中にある性癖が芽生ていくみこと。そんな2人が織りなす変態的ラブストーリー。一言でいうならば、開けてはいけない扉を開けてしまったような…….そんな漫画です。

スーパースターを唄って。(4巻)

こんなにも一枚一枚のページが重い、ズシンとくる漫画って他にあるだろうか。 今巻のメインは芦屋さん。彼の過去話はもう涙なしでは読めないんですけど、雪人のリリック制作の過程と呼応するように展開されるので最後のライブシーンの説得力がえぐかった。

そして、『スーパースターを唄って。』4巻を読んで、以前担当させていただいた対談にて、石塚先生が芦屋たちを「単なる悪者ではなく“もう戻れない人たち”」と表現されていたこと。薄場先生が「人間性が見えない舞台装置的な悪者は描きません」と仰られていたことを思い出しました。

ひらやすみ(8巻)

作中の季節は“なつやすみ”ど真ん中。そして、本誌で読んだ時あまりにも刺さり過ぎてすぐ真似した、よもぎさんの「ベランダでねるねるねるねを肴に酒を飲む」が収録されている巻です。何度読んで良すぎる……。

2024年11月雑記🍂

ここからは毎月恒例、今月のお仕事報告です。

▼ 「週刊スピリッツ」49号:ドラマ『ハスリンボーイ』特別鼎談

ドラマ『ハスリンボーイ』主演:間宮祥太朗さん × 原作:草下シンヤ先生×漫画:本田優貴先生による特別鼎談の取材・記事構成を担当させていただきました。ドラマ撮影の裏話から連載秘話までたっぷり語っていただいてます。

▼ ダヴィンチWeb:新連載『パーフェクト グリッター』をのひなお先生インタビュー

リアルかつ生々しい描写で現代の若者の男女事情を描き、マンガ配信サービス『サイコミ』での連載時、社会現象を巻き起こした『明日、私は誰かのカノジョ』(以下、明日カノ)。最終話の配信から約1年。作者・をのひなお先生が新たに挑むのは渋谷が舞台のガールズサスペンス! そんな新連載『パーフェクト グリッター』のテーマやタイトルが決まるまで、そして気になる見どころについて、をの先生にお話を伺いました。

▼ CORECOLOR:コラム連載「あちらのお客さまからマンガです」20回目

2024年も残すところあと1ヶ月半。今年掲げた夢が叶った人、叶えられなかった人、あるいはそもそも夢がない人も。とにかく“夢”というキーワードに1ミリでも心が動いた大人にぜひ読んでほしい。そんな笠原真樹先生の『夢なし先生の進路指導』について書きました。

▼ コミックナタリー:「このマンガ、もう読んだ?」『GALAXIAS』レビュー

ネクストブレイク作品を徹底レビューするコミックナタリーさんの「このマンガ、もう読んだ?」にて、果坂青先生の『GALAXIAS』について書きました。試し読み付きなのでこの機会にぜひ。

その他執筆記事一覧はこちら

9月からずっとそうなのですが、今年と来年の話がごっちゃになりながら、進行する日々。今月もせかせかしていたのですが、宮本浩次氏のソロ活動5周年記念ツアー「今、俺の行きたい場所」@ぴあアリーナMMへ2日間通うなど、割と趣味も全力で楽しむ余裕があり。総じて良い感じの月でした。

自分史上最高席のアリーナ4列目でした。致死量の宮本浩次氏を浴びました。

明日から12月。12月24日が誕生日なので、また一つ歳を重ねます。暦と一緒に新しい扉を叩きにいく気持ちで、毎日、しっかり歩んでいこうと思います。

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