『三十路飯』自分に寄り添うグルメを探しに。
アラサーの独身女性が主人公のグルメマンガがある。その名も『三十路飯』。
周囲が一気にライフステージを変化させていく30歳。仕事もプライベートも何となく焦りが出たり悩むことが多い年だと思う。
本作の主人公もまさにそう。アラサー、独身。建築事務所に勤務し好きな仕事に精を出しているものの、自分の将来を考えてこのままで良いのか...と思い悩んでいる。
そんな彼女を支えるのは「美味しいご飯」たち。
仕事で失敗した日も、恋愛がうまくいかない日も、何もかも投げ出したい日も、美味しいご飯をエネルギーに彼女は前に進むのだ。
アラサーを主人公にしたグルメマンガは数多く存在するけれど、食べる食材が擬人化して彼女の相談に乗る...と言った食と妄想を掛け合わせた描写は唯一無二。そして、どこか悲哀を感じる主人公がしっぽりとグルメを堪能する姿に病みつきになる。また、本作では、実在する名店が登場するのでグルメガイドとしても活用できるところが嬉しいポイントだ。
自分が過去に行ったことがあるお店が登場した時には、読んでいて気持ちが高まってしまう。
浅草にある喫茶店「珈琲 天国」というお店のホットケーキだ。
飲み屋やお笑いライブの読み込みの声が飛び交い、人混みの多い浅草の五叉路。そんな一角の傍にあるのが「珈琲 天国」。
店内には、昭和のアイドル歌謡曲が流れ、どこか懐かしさを感じるクラシカルな喫茶店だ。コーヒーと昔ながらのホットケーキのセットで1,000円。(*2019年当時の情報です)
外の賑わいが嘘のように静かで時間がゆっくりと流れるこの場所はまさに「天国」そのもの。
当時の私は今思えば全く大したことないことで悩み思い詰めていた。そんな時に訪れた「珈琲 天国」は私にほっと一息つく時間を与えてくれた。
あれからまた時間が経ち、今は当時とはまた違う悩みを抱え心がざわつく夜が続いている。だけど『三十路飯』で久しぶりに見かけた「珈琲 天国」のホットケーキが「一息つけ」と私に言っているような気がした。
今は気軽に遠出できないから「珈琲 天国」には行けないけれど、近場で自分に寄り添ってくれるようなグルメを探しにいきたいと思った。